半分だけ引かれたカーテン
北海道・室蘭の古い病院で左手首を手術した夜、赤いパジャマの女の子が痛む腕を撫でてくれました。けれど、その病院の小児科は三年前になくなっています。四階の突き当たり…
北海道・室蘭の古い病院で左手首を手術した夜、赤いパジャマの女の子が痛む腕を撫でてくれました。けれど、その病院の小児科は三年前になくなっています。四階の突き当たり…
小学二年の九月、留守番の家で泣いていた私のもとへ、一度も来たことのない叔父が二人だけ訪ねてきました。その日、二人は町役場から一歩も出ていなかったといいます。福岡…
小学五年生の初冬、スクールバスの停留所で動かなくなった子犬を見つけました。校庭の土はどこも固く、掘れたのは体育館の脇だけでした。その日の夕方、同じ模様の子犬が畑…
深夜、部屋の隅に体育座りの男の子が現れた。頼まれたのは、病室に隠した絵日記帳を両親へ届けることと、自分の家の場所を教えること。小さな足音の主が最後に駆けていくま…
石川・七尾の一本杉通りの福引所には、パイプ椅子が一脚だけ開いたまま置いてあります。木の箱に手を入れた孫の耳元で「それだっ」と怒鳴った祖父の声と、六等の日本酒の裏…
川沿いの林の奥、有刺鉄線の向こう側に広がる竹林。小学五年の日曜に五人で柵をくぐった私は、枯れた広場のすり鉢の穴と御札だらけの廃車、茶色い着物の一つ目の男を見た。…
古書店のアルバイトで知り合った澄香さんは、霊が近くにいると髪が抜けると話す霊感の彼女だった。半年後の夜、福井へ向かう下道で、闇の中から続く人の行列が車の前を横切…
大晦日の深夜、街道筋の古い家の二階の壁に、白い衣の女がヤモリのように貼り付いていました。真下で聞こえたのは「お前で終わりだ」という声。玄関の柱の木札が一枚しかな…
柵も看板もない森に、白い紙の帯だけが渡してあります。不良も肝試しの連中も近づかないのに、その紙はいつも新しい。行き場をなくした中学生がそこをくぐった翌週、町の全…
高校の先生が初めて担任を持った年、窓の外ばかり見ている霊感のある生徒がいました。向かいのマンションに立つ焼け焦げた女性、文化祭の古い仏壇、修学旅行の壕で起きた三…
深川の薬種問屋に伝わる三つ折れ人形は、桃の節句の夜に倒れて右の袖と右の髪を焦がしました。昭和二十年三月十日の空襲の夜、人形は黙って座って待ち、それ以来、二度と座…
山あいの村で祟りの噂が立ち、寄り合いで生贄という言葉が出ました。その数日後、庄屋の娘が布団に温もりを残したまま消えます。雨戸は閉まり、山にしかない木の葉が一枚だ…
会社の先輩のIさんが大学一年の夜に体験した、廃病院の肝試し。三階の廊下に現れた警備員は何を探していたのか。年齢が逆行していくKさん、縮刷版に残る二十二時の巡回、…
心霊スポット巡りが好きだった兄弟は、父を驚かせようと車の後ろに赤い手形を描きました。ところが父は青ざめ、真夜中に号泣しながらそれを洗い落とします。ゆっちゃんと呼…
小学四年の夏、共働きの家で留守番をしていると、知らないお爺さんが居間に座って、勝手に麦茶を飲んでいました。帰ったあとに残るのは、卓袱台の水の輪がひとつだけです。…
十年近く前、深夜の幹線道路を歩いて帰った夜のことです。バス停ごとの電話ボックスで、受話器はいつも電話機の上に置かれていました。かすかな香水の匂いと、返却口に戻っ…
山を越える届け物の途中で姿を消した大伯父は、百年たった今も山に棲んでいる。迷子の私を助けた男の子と、去年の夏に息子を叱った男の子は、同じ人だった。杉の根元の苔む…
留学の朝、病室の母が枕の下から出した包みには、母がくれた腕時計と手紙が入っていた。八か月後、その腕時計は三時十二分で止まる。母は一昨日の夜中、同じ時刻に旅立って…
小学二年の俺が町外れの小さな公園で出会ったのは、木の棒でライオンを描く二つ上の友也君と、彼を透けた体で見守るおじいさんだった。親父のベルトで二人をくくって公園の…
母が勤めていた会計事務所では、窓の下の雪だけが毎朝きれいに踏み固められていました。誰がやっているのか、所員の誰も知りません。山へ入ったきり戻らなかったおじいさん…
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