タグ: 不思議な話

ITエリート

机の天板がすべて液晶になった、八千万円の教室。まばたきの減っていく子どもたち、誰も座っていないはずの一台、そして電源を落とした画面に残る白い像。養護教諭の目を通…

俺神様

家に伝わる決め役という役目。姪の病で実家が土地を手放そうとした夜、母は私に電話をかけたと言います。しかし私は、その電話を取っていません。発信元は、十六年前に解約…

六つ目の膳

昭和41年、伊那谷の旧家へ奉公に上がった私が最初に教わった決まりは、五人家族に膳を六つ出すことだった。湿った茶碗の縁、誰もいない部屋の青い畳、毎年育っていく誂え…

七枚目の見積書

甲府盆地の外れで借りた元養蚕農家の納屋から、昭和六年の手書きの見積書が七枚出てきました。家の傷む順番も、下三桁の金額も、六十年前の紙と静かに重なっていきます。順…

見ていない廊下

閉館の決まった科学館で夜警を始めた私は、モニターに映る人影に気づきます。それは私が見ている画面には決して現れず、目を離した場所にだけ立っていました。観測されるま…

フィラデルフィア消磁実験

昭和五十三年、内陸の町の磁気テープ工場。名札を外して消磁室に入れという古い規則の意味を、私は隣の寮に住む先輩が皆の記憶から消えた秋に知りました。フィラデルフィア…

名も知らぬ息子

雪深い町の古い図書館に勤める私のもとへ、痩せこけた見知らぬ男が毎朝「僕のお母さんですか」と問いかけてきます。不気味な日々の果て、大火事の夜に彼がとった行動と、六…

イタズラ好きな何か

子どもの頃、私のそばにはいつも、姿の見えない「いたずら好きな何か」がいました。肩を叩き、時計を狂わせ、ときに私を危険から守った、その正体とは——。やがて知ること…

三時のカメラ

深夜の商業ビルで警備員をしていた私は、午前三時、屋上を映す監視カメラに白い人影を見つけました。天使だと思おうとしたそれは、夜ごと一階ずつ階段を降り、私のいる警備…

写してはならぬ顔

民俗調査で山あいの集落を訪れた私は、当主『おもてさま』の写真を撮ることを固く禁じられました。写真はいけない、けれど絵ならと甘く考えた私が、犯してしまった過ち。仏…

禍鉾

持つ者に天下を与え、手放す者の命を取るという黒い穂先「禍鉾」。戦国、幕末、大正と、その持ち主はみな栄華の果てに、手放した刹那に命を落とした。京の古美術商が、みず…

凪待ちの日

凪いだ海へ出た漁船が、無人のまま漂って戻ってきた。船室には湯気の立つ膳が四つ、いや五つ。舳先で途切れる幼子の足跡と、日誌の最後の一行、過去帳に増えた名も知れぬ戒…

帳場の椅子

祖父から継いだ古い旅籠の帳場の隅に、白い布をかぶせた一脚の椅子があった。決して座ってはいけない――幕末の悪徳主が遺したその椅子に座った者は、一年と経たずに命を落…

53年後に帰還した爆撃機

終戦間際に消息を絶った一機を、祖父は五十三年間、旧滑走路の端で待ち続けました。霧の夜に響いた発動機の音と若いままの声、残された航空時計の針が指す時刻。整備員だっ…

知らない女の子

記録的な大雨の夜、神社へ逃げる私の横を、猫を腕いっぱいに抱えたおかっぱの女の子が、次々と大人を追い抜いて石段を駆け上がっていきました。けれどこの町に、知らない子…

33年間

火山の噴火で地中に沈んだ村の跡で、井戸を掘っていた私の祖先が、古い屋根の下から響く音を聞いた話です。三十三年ぶりに掘り出された二人の生き残り、記録と合わない人数…

失われた時間

高熱の地下鉄で記憶が途切れ、気づくと一年後の見知らぬ街に立っていました。染めた髪、知らない服、一文字だけの連絡先、そして見知らぬ鍵。失われた一年をめぐる、この不…

黒目

古い文化住宅の共同玄関に置かれた、一台の古い乳母車。眠る赤ん坊の目には、白目がありませんでした。数十年後、母の記憶とまるで食い違う、この不思議な話を、当時のまま…