白い大蛇の医者と戻ってきた未来
二十五歳で末期のがんを告げられたいとこが、白い大蛇の医者に治療される夢を見るようになった。腫瘍は縮み、手術は成功し、担当医は記録にない処置の痕に首をかしげた。結…
二十五歳で末期のがんを告げられたいとこが、白い大蛇の医者に治療される夢を見るようになった。腫瘍は縮み、手術は成功し、担当医は記録にない処置の痕に首をかしげた。結…
夜中に目を覚ますと、一人暮らしの部屋の押入れの前に、体育座りの男の子がいた。お兄ちゃん、と私を呼んだその子に頼まれて、私は病院に隠された二年三組の絵日記を探すこ…
一人暮らしの部屋で眠れない夜が続いていた。部屋を一周した姉が「なるほどね」とだけ言って帰り、数日後に枕元の人形が届いた。その日から私はよく眠れるようになる。けれ…
大学三年の夏、三人で灯した蝋燭と、鳥居の前の黒い水溜り。友人は順に事故に遭い、消して持ち帰った俺の蝋燭だけが、毎晩、消したはずの火を灯すようになった。神社の老婆…
鳴門の居酒屋で、高校からの友人Fが「いつ戦争、終わったんだっけ」と言い出しました。年表のずれは全部きっかり十一年。左利きだったはずのFが右手で箸を持ち、剣山の行…
頭蓋骨に穴を開けるトレパネーションとは何か。石器時代の遺物から1960年代オランダのプロボ運動、現代の実践者まで、その歴史と背景を静かに辿ります。…
二、三年前の真夏、改修中のビルの三階で、私は声のない街としか呼べない場所を窓から見ました。建物も道路もない空白に立つ男は、「どこから来た!?」と叫んだのです。そ…
2001年12月、グリーンランドの吹雪の夜。レーダーに現れた未確認機は、53年前に消えたはずの爆撃機でした。時を越えた爆撃機の謎を、静かな語りで辿ります。…
就職活動に疲れて横浜市営地下鉄で眠り込み、終点で目を覚ましたら、真昼のように明るいドーム型のホームでした。読めない字の駅名標と、ミカン色の空と、バス停で声をかけ…
帰りの終電で眠り込み、目を覚ますと午前2時1分、携帯は圏外でした。男の子が残した「ここに来ちゃダメ」という言葉、地図にない高九奈駅の看板、そして迎えに来たはずの…
沼津の港にある屋根だけの公衆電話から、かけてはいけない番号に電話をしました。名前は名乗っていません。それなのに翌年、横の電話台の数字に、私の年齢が書き足されてい…
家の裏手の松林の奥に、朝顔のプランターが並んだ平屋がありました。行くたびに、数がひとつずつ増えていきます。六つになった日、私は生ぬるいコップを手渡されました。二…
子どもの頃に暮らしたコの字の家は、元遊郭と噂される古い二階建てでした。夏休みの朝、中庭を挟んだ物置部屋の襖が揺れ、中から髪の乱れた女の人が現れます。向かいの祖母…
金属加工業を営む私の左手薬指から、円錐状の光沢金属が出てきました。硬度はHRC65、非磁性、鏡面仕上げ。レントゲンには何も写らず、知り合いに送ると梱包は完璧なの…
下関の実家の箪笥は、いちばん下の引き出しだけ、取っ手が片方ありませんでした。真夜中に階段を降りて何かを探していたのが誰だったのか、姉は二十年ものあいだ言い続けて…
新庄のビジネスホテルで、フロントの人は窓を閉めるようにとだけ言いました。五階の窓の外に、おかめの面が鼻から上だけ出ていたのは、その夜のことです。翌朝ロビーの壁に…
島根の地方紙で投書欄を担当していたころ、山あいの集落から一字一句まったく同じ本文の手紙が、毎回二通ずつ届きました。筆跡はわずかに違い、片方の消印は二十年も前に廃…
肺がんで旅立った父と、葬儀でも笑顔を絶やさなかった妹。父の着信音だった童謡お馬の親子と、妹が見た不思議な夢、その夢が確かめられた小さな出来事を綴る、やさしい心霊…
静岡・牧之原の茶の集落では、留守番の日に雨が降ると必ず呼び鈴が鳴り、苗字を呼ぶ声だけが聞こえました。二十年後にずぶ濡れのおばさんが姿を見せた理由と、郵便受けに挟…
小学六年の林間学校、二日目の午後。苔に覆われた沢の桟橋で待つと約束した友達は、俺に気づかないまま走り去った。担任は欠席だと言い、その夜、違う棟の暗がりから「ここ…
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