ナースコールは一分ずつ早まる
夜勤初日の午前2時42分、押しボタンのない壁でナースコールのランプが灯った。翌晩は2時41分、その次は2時40分。毎晩1分ずつ早まる呼び出しの先で、窓際の部屋の…
続きを読む:ナースコールは一分ずつ早まる夜勤初日の午前2時42分、押しボタンのない壁でナースコールのランプが灯った。翌晩は2時41分、その次は2時40分。毎晩1分ずつ早まる呼び出しの先で、窓際の部屋の…
続きを読む:ナースコールは一分ずつ早まる去年の秋、新人警備員だった私の夜勤中、誰も通っていない出庫ゲートが「ご利用ありがとうございました」と告げた。閉店後の駐車場の端、番号のわからない区画に停め続けた…
続きを読む:閉店後の駐車場で声を出したパラレルワールドを感じた体験談を十四本選びました。入れ替わる自分、書き換わった記憶、世界の継ぎ目の三つに分け、それぞれの読みどころを案内します。どれも結末には触…
続きを読む:パラレルワールドの話 14選取り壊し前の団地で理事長から預かった団地の合鍵は、全部で68本。昼休み、灰色のつなぎを着た見知らぬ男が私を「お嬢さん」と呼び、三時までに外へ出るよう告げた。その…
続きを読む:団地の合鍵が鞄に入っていた海沿いの式場の地下にある着付け室。黒い布が外れた姿見、誰もいない小部屋で鳴る絹の音、衣桁に残された緋色の帯揚げ。二人目の花嫁には話しかけてはいけないと先輩は言っ…
続きを読む:二人目の花嫁は鏡の奥で待っている毎年秋に、調律へ通う丘の上の古い平屋。ピアノの部屋は玄関から庭へ抜ける廊下の途中にあり、スリッパは必ず二組、うち一組は妙に小さい。床の白い筋、十二分遅れの柱時計…
続きを読む:ピアノの部屋は先に通される山あいの漬物工房の蔵で、連休明けの朝に番号のない十三番目の石が棚に載っていた。夕方五時を過ぎると十二回だけ石を置く音がし、七月には石が少しずつ戸口へ寄ってくる。…
続きを読む:十三番目の石が戸口へ寄ってくる湾岸の団地で検針の仕事を始めた春、前任者の名前を誰も思い出せなかった。回覧板で欠席の印が押された部屋は、翌月には空き室になっている。引き継ぎ書に残されていたのは…
続きを読む:欠席の印を押した覚えはない朝五時の北町ポートで、自転車の前輪だけがまだゆっくり回っていた。管理画面には、無人の乗車記録が毎晩一件ずつ並び、霜の上には手のひらの形が二つずつ付いていた。相棒…
続きを読む:北町ポートの無人の乗車記録異界の駅の話を十三本厳選。乗り過ごした先の無人駅、路線図にない地下鉄、時刻表にない二両の列車、雪夜に着いた木札の駅まで、三つの章で案内します。核心は伏せたまま、…
続きを読む:異界の駅の話 13選大雪で足止めされた夜、運転手の私が泊まったのは寝息を借りる宿だった。廊下を引きずる音と、私と同じ間隔の息が、壁の向こうから近づいてくる。翌朝、体はやけに軽かった…
続きを読む:峠の麓の寝息を借りる宿河川課の私が月に一度閉める水門の祠には、内向きの注連縄が張られていた。戸の裏には五本一組の筋が並び、閉めた二十分後に一本増えていた。先輩が言った「そのまま帰るこ…
続きを読む:水門の祠に張られた内向きの注連縄管理会社の私が開いた画面には、金曜の夜だけ空室の解錠ログが並んでいた。解錠は二十三時十四分、施錠は二十三時四十一分。誰も入れないはずの角部屋で、隣人は私に似た後…
続きを読む:金曜だけ残る空室の解錠ログ夜間警備のアルバイトを始めて9日目の深夜、俺の端末の巡回ログに、存在しないはずの15番目の記録が現れた。時刻は毎晩少しずつ早まり、担当者の欄だけが空白のまま。郊…
続きを読む:巡回ログの余った一行東京の西のはずれで理容室を継いだ私は、父の言いつけで月末の月曜だけ店を早く閉める。棚の桐箱の髪は、仕舞った量より毎月増えていた。夜通し響く櫛の音と、鏡の前で動か…
続きを読む:桐箱の髪が増える月曜引き継いだ取り壊し前の団地の伐採現場で、私は名札のクスノキに打たれた札を数えた。打診ハンマーに返る音、日付が先に来ている札、園児の不思議な一言、そして祖父の字。…
続きを読む:名札のクスノキが先に知る晴れた朝の7時10分、マンションの自動ドアを抜けてきた4階の三浦さんは、髪の先から雫を落とすずぶ濡れの住人だった。床は乾いていて、すれ違う誰も気に留めない。3日…
続きを読む:ずぶ濡れの住人は晴れた朝に帰るほんのり怖い話を十二本厳選。古いホテルの廊下、地下の小さな扉、谷に置かれた傘など、叫ばずに読める静かな不思議を三つの章で案内します。核心は伏せたまま、読む順番の…
続きを読む:ほんのり怖い話 12選国道沿いのコインランドリーで、巡回スタッフの私は台帳の「引取り待ち」の欄に赤い印を押すたび、壁際の丸椅子が1脚ずつ増えていることに気づいた。誰もいない深夜、乾燥…
続きを読む:引取り待ちの椅子が増えていく市役所の臨時職員として、港町の漁協で古い台帳を取り込んでいた。寄り物帳の赤い栞は毎朝ひとつ先へ進み、最後の鉛筆の行には、まだ失くしていない私の持ち物が書かれてい…
続きを読む:寄り物帳に増える鉛筆の行ミステリーを応援する
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