タグ: 不思議な話

インターホン

鍵をかけない田舎の家で、機械のように規則正しく鳴り続けるインターホン。祖母とそっと覗いた玄関の先に立っていたものとは何だったのか。招かれぬかぎり入れない来客の正…

娘の目

駅のホームで起きた出来事から、娘の目だけは守ったはずだった。なのに娘は言った——「上からだと、ぜんぶ見えたもん」。古い木の跨線橋に伝わる「振り返ってはいけない」…

無人マンション

解体を待つ無人の棟に、毎晩ひとつだけ灯りが点いていました。しかもその灯りは、取り壊しの進み具合に合わせて、一週間ごとに正確に一階ずつ下へ降りてくるのです。更地に…

無人島ビデオ

映像研究会の部室に、ラベルのないテープが一本だけ残されていました。瀬戸内の無人島で撮られた合宿の記録です。行きも帰りも六人、数はきちんと合っています。それなのに…

大学写真部の夏合宿で泊まった、外房の網元屋敷の古い民宿。深夜、寝落ちした部員の枕元に、濡れた髪の女が正座していた。誰も動けないまま夜が明け、東京に戻って集合写真…

弟の言葉

その夏だけ、弟が淡々と変なことを言い出しました。上半身だけ起き上がる姉、床から半分出ている人、服の下に座る軍人。房総の古い借家にあった、一畳だけ床の高さが違う窪…

ドッペルゲンガー

四つの秋と十七の秋、私は妹を別々の場所で同時に見ました。丹波の谷にある祖父の家の、母屋と土蔵。数の増える踏み石、電気の来ていない蔵に点いた灯り、日付だけが五十年…

ニワトリ

六月の夕暮れ、蛙の声が消えた道で、頭に包帯を巻いた子供が一輪車で坂を下ってきた。両手には、生きた白いニワトリ。影はあるのに、音がしない。坂の上は行き止まりで、そ…

ITエリート

机の天板がすべて液晶になった、八千万円の教室。まばたきの減っていく子どもたち、誰も座っていないはずの一台、そして電源を落とした画面に残る白い像。養護教諭の目を通…

俺神様

家に伝わる決め役という役目。姪の病で実家が土地を手放そうとした夜、母は私に電話をかけたと言います。しかし私は、その電話を取っていません。発信元は、十六年前に解約…

名も知らぬ息子

雪深い町の古い図書館に勤める私のもとへ、痩せこけた見知らぬ男が毎朝「僕のお母さんですか」と問いかけてきます。不気味な日々の果て、大火事の夜に彼がとった行動と、六…

イタズラ好きな何か

子どもの頃、私のそばにはいつも、姿の見えない「いたずら好きな何か」がいました。肩を叩き、時計を狂わせ、ときに私を危険から守った、その正体とは——。やがて知ること…

三時のカメラ

深夜の商業ビルで警備員をしていた私は、午前三時、屋上を映す監視カメラに白い人影を見つけました。天使だと思おうとしたそれは、夜ごと一階ずつ階段を降り、私のいる警備…

写してはならぬ顔

民俗調査で山あいの集落を訪れた私は、当主『おもてさま』の写真を撮ることを固く禁じられました。写真はいけない、けれど絵ならと甘く考えた私が、犯してしまった過ち。仏…

禍鉾

持つ者に天下を与え、手放す者の命を取るという黒い穂先「禍鉾」。戦国、幕末、大正と、その持ち主はみな栄華の果てに、手放した刹那に命を落とした。京の古美術商が、みず…

凪待ちの日

凪いだ海へ出た漁船が、無人のまま漂って戻ってきた。船室には湯気の立つ膳が四つ、いや五つ。舳先で途切れる幼子の足跡と、日誌の最後の一行、過去帳に増えた名も知れぬ戒…