夜の学校と三階のトイレ
小学六年生の夏休み直前、肝試しで夜の学校に忍び込んだ四人は、三階のトイレで四つの個室がすべて閉まっているのを目にする。バネで勝手に開くはずの扉、鍵のかかっていな…
小学六年生の夏休み直前、肝試しで夜の学校に忍び込んだ四人は、三階のトイレで四つの個室がすべて閉まっているのを目にする。バネで勝手に開くはずの扉、鍵のかかっていな…
戦後に住宅地となった山の麓には、かつて為松の竹林があった。盲目の楽師の屋敷の跡に生えた竹は、風を尺八の音に変えたという。小学生の姪の一言から、いま建つマンション…
冬の夕方の公園で、昔風の女の子に呼び止められた。魚へんに右と書いて何と読むのか、と。家に帰ると姉に塩を撒かれ、梅雨の頃から咳が止まらなくなった。白南天と霊視で一…
中学三年の秋、友人の家の離れには、ドアを挟んで内と外に二枚の札が貼られていました。風の強い晩が明けると、セロハンテープの形だけをきれいに残して、外側のお札が消え…
大学入学で上京した夏の夜、高田馬場の古いアパートで、サッカーボールを抱えた台所の男の子が「遊んで」と繰り返した。向かいの飲み屋の店長が語った交差点の事故と、引っ…
中学三年の冬、私は間違えた問題のページだけ、解答冊子の角の右上を爪で折る癖がありました。模範解答の誤りに赤ペンで斜線を入れて夕飯から戻ると、赤い線も折り目も消え…
一人暮らしを始めた部屋で、夜になると下からざわつき声が聞こえるようになりました。苦情に行った階下の住人は、同じ声が上から聞こえると言います。天井裏を調べる日の朝…
十条の斜面に建つ柊荘には、どの部屋にも床から三尺の高さに小さな穴がありました。覗くといつも真っ赤です。壁紙だと思っていたその赤の正体に気づく怖い話です。建物はも…
秋田・阿仁川の上流にある笛内という集落では、雪が降る前に、一軒につき一本だけ竹を立てるのだそうです。三十年前のテレビで、その場面だけ音が消えていた理由と、抜いた…
幽体離脱を試していた夜、絵の具をこぼしたような空間に迷い込みました。光の部屋で出会った宇宙人が語る、火星の生き物アクァッホの正体と人類の歴史、ナスカやマヤ、ピラ…
幽霊騒ぎの続く会社の寮で、視える俺と嗅げる人のZが一晩を明かした。胸の上に乗ったのは、頭が野球ボールほどの黄色い服の女。Zのニオイ分析が始まると、幽霊の方が先に…
実家の仏間の戸棚に、髪を納めた箱が一つあります。坊主だった曾祖父が、山を越えた先の村から持ち帰ったものです。村ぐるみで隠されていた業と、藪の中の盛り土から出てき…
真夜中のコンビニ帰り、ビルの隙間にハイヒールの女性が消えた。翌日の昼は、行き止まりの壁。次の夜は子どもが入っていき、暗闇から伸びた手が私の腕を掴む。地図アプリの…
夜道で細く開いた戸から手招きされ、お婆さんに差し出されたのは薄黄色の細い蝋燭でした。愛媛・内子の木蝋の町に残る、蝋燭を置いて次へ回すという作法。断ったはずの掌に…
昼のマンションで、俺は八階のおばさんと運送屋と三人でエレベーターに乗った。箱は一階へ向かわず、七階の赤い空へ扉を開いた。降りた二人は戻らず、管理人は言った。この…
夕方の有線放送で「どう、わかったかな」と問われ、五歳の私はつい返事をしてしまいました。鹿児島・大隅の茶の集落に伝わる、放送に返事をしてはいけないという決まり。そ…
平成六年、千葉・佐原の川沿いの借家。宛名のないビデオテープに映っていたのは、暗い部屋で誰かと話す女と、押入れへ入っていく後ろ姿でした。明かりが点いた瞬間、そこは…
敦賀の中学の二年一組には、四月から机が一つ多く並んでいました。苗字のない同級生キミアキは、班にも体育祭のアンカーにもいたのに、記録用紙の欄だけが空いています。卒…
奈良の五條では、猫がいなくなった家は薪をひと山だけ崩さずに置いておくのだそうです。二十年前の夏に母の枕元へ座った猫と、集落の人たちが一月のあいだ黙って守っていた…
アイルランド西部のコネマラ。祖母の家には、寝る前に暖炉脇の泥炭を一度すべて崩してから積み直すという古い決まりがありました。雨が三日続いた晩に階段へ立った人影の忠…
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