図書館のL-108の本と窓際の席
市立図書館の夜間バイトで、毎朝床に落ちている古い文庫に気づいた。L-108の本が開いたまま示す一文と、貸出履歴に残る名前を辿るうち、閉館後の窓際の席で起きた小さ…
市立図書館の夜間バイトで、毎朝床に落ちている古い文庫に気づいた。L-108の本が開いたまま示す一文と、貸出履歴に残る名前を辿るうち、閉館後の窓際の席で起きた小さ…
残業帰りに通ったアーケード商店街で、私は灯りのついた古い文具店に入り、十円の鉛筆を一本買いました。翌日、その場所には壁があるだけ。紙帯のロゴと老婦人の話、財布に…
帰省した実家で、一人暮らしの母が誰かと話しているのを見た。声の主を確かめようとするうちに気づいた、不思議で少し怖い体験談。…
出張先のビジネスホテルで泊まった307号室。翌朝フロントで言われた「3階はございません」という言葉の意味とは——実話風の不思議な体験談。…
出張帰りに終電を逃した俺の前に、時刻表にない二両の列車が滑り込んだ。駅名のかわりに日付を告げる放送、ホームに立つ見覚えのある人々、止まったままの零時四十七分。降…
二十五歳で末期のがんを告げられたいとこが、白い大蛇の医者に治療される夢を見るようになった。腫瘍は縮み、手術は成功し、担当医は記録にない処置の痕に首をかしげた。結…
一人暮らしの部屋で眠れない夜が続いていた。部屋を一周した姉が「なるほどね」とだけ言って帰り、数日後に枕元の人形が届いた。その日から私はよく眠れるようになる。けれ…
鳴門の居酒屋で、高校からの友人Fが「いつ戦争、終わったんだっけ」と言い出しました。年表のずれは全部きっかり十一年。左利きだったはずのFが右手で箸を持ち、剣山の行…
就職活動に疲れて横浜市営地下鉄で眠り込み、終点で目を覚ましたら、真昼のように明るいドーム型のホームでした。読めない字の駅名標と、ミカン色の空と、バス停で声をかけ…
沼津の港にある屋根だけの公衆電話から、かけてはいけない番号に電話をしました。名前は名乗っていません。それなのに翌年、横の電話台の数字に、私の年齢が書き足されてい…
家の裏手の松林の奥に、朝顔のプランターが並んだ平屋がありました。行くたびに、数がひとつずつ増えていきます。六つになった日、私は生ぬるいコップを手渡されました。二…
金属加工業を営む私の左手薬指から、円錐状の光沢金属が出てきました。硬度はHRC65、非磁性、鏡面仕上げ。レントゲンには何も写らず、知り合いに送ると梱包は完璧なの…
産婆だった祖母が、半世紀前のお産の夜に抱えた祖母の違和感。二時間ごとの交代番、二度叩かれる肩、そして夜明けに告げられた「目が無い」という声。孫の私が母から聞いた…
小学五年生の初冬、スクールバスの停留所で動かなくなった子犬を見つけました。校庭の土はどこも固く、掘れたのは体育館の脇だけでした。その日の夕方、同じ模様の子犬が畑…
石川・七尾の一本杉通りの福引所には、パイプ椅子が一脚だけ開いたまま置いてあります。木の箱に手を入れた孫の耳元で「それだっ」と怒鳴った祖父の声と、六等の日本酒の裏…
岐阜の古いトンネルへ、五人が一台の軽自動車で向かいました。抜けたのは三十秒後です。後部座席は三人だったはずが、二人になっていました。坑口の祠の台座にびっしりと並…
柵も看板もない森に、白い紙の帯だけが渡してあります。不良も肝試しの連中も近づかないのに、その紙はいつも新しい。行き場をなくした中学生がそこをくぐった翌週、町の全…
高校の先生が初めて担任を持った年、窓の外ばかり見ている霊感のある生徒がいました。向かいのマンションに立つ焼け焦げた女性、文化祭の古い仏壇、修学旅行の壕で起きた三…
山あいの村で祟りの噂が立ち、寄り合いで生贄という言葉が出ました。その数日後、庄屋の娘が布団に温もりを残したまま消えます。雨戸は閉まり、山にしかない木の葉が一枚だ…
温泉街から離れた古い宿に泊まった晩の話になる。着いてすぐ襖を開けると、押入れの上の段は空で、布団は下の段にあった。炬燵での金縛り、ぬるい湯、低くなっていく窓の音…
ミステリーを応援する
読んでいただけるだけで、十分に励みになります。
当サイトは個人で運営しており、いただいたご支援はサーバー代やドメインの維持費に大切に使わせていただきます。
¥240 の一度きりのお支払いで応援いただけます。
お礼として、以後ずっと広告を非表示にいたします(継続課金はありません)。
ブラウザを変えた・Cookieを削除した場合は、登録のメールアドレスを入力してください。