
多分信じてもらえることはないだろうから、そういう創作物として見てくれれば幸い。
これは、アクァッホと呼ばれる生き物について、ある宇宙人から聞いた話だ。
始まりは、チャネリングだった。
日本でいうところの、口寄せの術にあたる。
ネットを漁っていたら出てきた言葉で、面白そうなので始めてみた。
ただ、調べれば調べるほど胡散臭く感じて、俺はあまり好きになれなかった。
だから独自のやり方を作って、宇宙人と交信できないか試すことにした。
そのまま七ヶ月ほど続けたと思う。
幽体離脱スレでいうところの、ローリング抜けに近いやり方だ。
七ヶ月目のある晩だった。
薄目のまま、ほぼ寝落ちしそうになっていた。
そのとき、尻から胸にかけて、ふわりと浮く感覚が来た。
俺はこれで幽体離脱に成功したと思っていた。
この頃にはチャネリングに飽きて、幽体離脱のほうに興味が移っていた。
ただ、よく聞く幽体離脱とは、何かが違った。
浮遊感は全身に回った。
それなのに、体から抜け出した感覚はない。
いくらローリングしても変わらなかった。
そのかわり、部屋の景色のほうが少しずつ変わっていった。
電車の窓から外を見たときのように、部屋の壁がビュンビュン後ろへ飛んでいく。
最初は明晰夢だと思っていた。
やがて壁が無くなった。
周りは、絵の具をごちゃまぜにしたような色だけの空間になった。
そのとき、何故か一気に恐怖が湧き出てきた。
「やだよー、もう起きたいよぉ。」
めちゃめちゃ泣きながら、そう叫んでいた。
すると、身体が引っ張られる感覚が来た。
前後左右上下、どこへ引っ張られているのかが分からない。
もう本当に怖くて、手足をバタバタさせた。
ドラゴンアッシュのファンタジスタのサビを歌って、なんとか誤魔化そうとした。
グングン何かに引き寄せられていく。
ふと気づくと、周りが真っ白な、光に包まれた空間に出ていた。
引き寄せられる感覚も、浮遊感もなかった。
そこには、泡のようなものが大量にあった。
なんだこれ、と思って触ろうとした。
「だめだよ、触っちゃ。」
日本語で止められた。
ビックリして振り向くと、おっさんが怒りながらこっちに近づいてくる。
アロハにビーサン、短パン姿の、マイケルムーア似の白人だった。
ただ、人と話せたことが、救いのように思えた。
「ああふぅ。」みたいな声を出しながら、その場に座り込んで泣きまくった。
おっさんは横に座って、「どうやってここきたの。」と聞いてきた。
「幽体離脱っていう遊びをやってたら、おかしいことになりました。」
そう答えて、やり方や仕組みも織り交ぜて説明した。
すると、おっさんは急に焦ったような顔になった。
「これを夢だと思ってるのかよ?危ないことするなよ!」
そう捲し立てられた。
「いや、明晰夢なのはわかってるんすけど、起き方がわからないんです。」
「夢じゃないって言ってるでしょ!」
怒りながら返された。
そのうち、気持ちが落ち着いてきた。
こうなったら明晰夢を楽しまなきゃ、と俺は思い始めた。
おちょくるつもりで言ってみた。
「じゃあ、夢じゃない証明、なにかやってよ。」
おっさんは少し悩んで、「それは難しい。」と言った。
「何か証明の方法はないの?」
そう捲し立てると、「じゃあちょっと地球の近くまで行くぞ。」と言われた。
地球の近くまで
腕を掴まれた。
直後、絵の具をごちゃまぜにした空間を、おっさんに引っ張られて進んでいた。
気持ち悪くて、目を瞑っていた。
「着いたぞ。」
その声で目を開けると、まだ絵の具空間のままだった。
おっさんの指差す先に、バレーボールくらいの地球儀が浮いていた。
「模型じゃん。」
そう言うと、おっさんは言った。
「お前の家はどこだ。もうそこ行くから、頭の中にイメージしろ。」
自分の部屋をイメージした。
すると、地球儀がどんどん大きくなって、近づいてきた。
「ンヒィッ。」と奇声を上げて、逃げようとした。
けれど、おっさんに捕まえられて、とうとう地球儀に飲み込まれた。
気が付くと、部屋だった。
窓から空を見上げると、空は絵の具空間のままだった。
「最近無くしたものとかないか。」
そう聞かれて、ヘッドホンを無くしていたことを思い出した。
そう伝えると、「んじゃ、それ頭の中にイメージしろ。」と言われた。
イメージした途端、グッと引き寄せられた。
気がつくと、友人Aの部屋にいた。
部屋には、俺とおっさんしかいなかった。
テレビスタンドの下が、ぼんやり光っていた。
「もうお前のこと帰すから。帰ったら、この人の家の光っているところにヘッドホンあるから取りに行け。」
「それと、二度とアセンションするな。」
「できたらこのことは忘れてしまえ。難しいと思うが、あまり思い出すな。」
次々にそう言われた。
おっさんが、俺を帰そうと何かをしかけた。
最後に、どうしても聞きたくなった。
「あなたはどういった人なんですか?」
おっさんは、息を漏らすように笑った。
「住んでる次元こそ違うけど、俺は宇宙人。」
尻から胸にかけて、浮遊感が来た。
直後に、目が覚めた。
後日、Aの部屋のテレビスタンドの下を探させてもらった。
俺のヘッドホンが、そこから出てきた。
そのこともあって、一連の出来事は現実なんじゃないかと感じ始めた。
もう一度あそこに行きたい。
そう思って、毎晩試すようになった。
一週間ほど試した頃に、ふと気づくと、俺はまた絵の具空間を浮遊していた。
前回のような恐怖心も、引き寄せられる感覚も無い。
俺は適当に、絵の具空間を彷徨っていた。
よく目を凝らすと、すぐ後ろに地球があった。
同じくバレーボールほどの大きさの、火星や金星らしきものも見つけた。
他にも、同じ大きさの天体がそこら中に浮いている。
ただ、実際の宇宙の天体の位置は、再現されていないんだなと思った。
おもしれーと思いながらふらふらしていたら、おっさんの三人組を見つけた。
ある天体を囲んで、談笑している。
全員、マイケルムーアだった。
「こんにちは!」と声をかけた。
おっさん三人は、すげえビックリした顔になった。
「マジかよ。」
「なんでアクァッホ(みたいな発音だった)がいるの。」
「やばいんじゃないか。」
口々に、焦ったことを言っている。
「僕って、居たらマズイんですか?ww」
「そりゃまぁ、お互い得はないんじゃ…。」
そんなやりとりをして、とりあえず感じていた疑問をぶつけてみた。
アクァッホじゃないんだ
まず、マイケルムーアは何者なのかを聞いた。
お前こそ誰だ、と言われたので、「地球人です。」と答えた。
ピンと来なかったらしい。
地球儀まで案内して、指で差してみせた。
「アクァッホじゃないんだ。」
そう言われた。
「なんすかそれ。」と聞くと、おっさんは火星を指差した。
「ここに生きてた生き物。」
火星に生命体が居たという驚きを抑えて、改めて何者かを聞いた。
「君たちと俺達は、距離とか大小とか時間とか、そういった世の中のルールが違っている。」
「けど、お互い同じ宇宙の宇宙人。」
そう言って、三人が談笑していた天体を指差した。
「地球ではまだ見つけられてないね、残念。」
なんで言葉が通じるのか、と聞いてみた。
お互いにとって馴染み深いコミュニケーションの取り方に、見えるようになっている仕組みらしい。
容姿も同じ仕組みだった。
俺はマイケルムーアに馴染み深さを感じているから、彼らがマイケルムーアに見えるのだという。
この空間は何か、とも聞いた。
距離や時間のルールの上にある宇宙で、君たちで言うところのワープ装置だと説明された。
彼らの星を地球から見つけるのは難しいのか、と聞いてみた。
「どういう方法で君たちは天体を観測してる?」
そう聞き返された。
望遠鏡の仕組みを話そうと、頭の中に望遠鏡を思い浮かべた。
「ああ、なるほどね、わかったよ。」
おっさんはそう言った。
レンズなどで拡大して見ている限り、お互いに見つけられないだろう、とのことだった。
「昔の地球人は、それとは別の方法で天体を観測してたのに、どうして今はその方法を使っているの?」
そう聞かれた。
なんの事か、その時にはピンとこなかった。
「解りません。」とだけ答えておいた。
次に、火星について聞いてみた。
三人のおっさんを、便宜上abcに分ける。
答えてくれたのは、bのおっさんだった。
マイケルムーアにスーツを着せたような姿をしている。
cのおっさんは、何故かジンベエを着ていた。
「あまりそういう話はしない方がいいんじゃないか。」と、しきりに言っている。
簡潔にまとめると、こうなる。
火星には、地球と同じ次元、同じルールの生命体が間違いなく存在していた。
しかも、かなり様々な種類がいたらしい。
地球でいう知的生命体も、もちろんいた。
その頃、太陽系で生命体がいたのは、火星と太陽と地球だけだという。
太陽には今も生命体がいる。
おっさんたちに、太陽まで連れて行ってもらった。
バレーボールほどの大きさの、緑の球を指差された。
さっきは太陽だと思わなかった。
それは、地球の周辺に浮かんでいた。
「燃えてないんだ。」
そう言うと、「燃えてるのは表面だけ。君たちの感覚でいうところの、表面だけ。」と返された。
太陽は特殊な星で、複数の次元とルールが合わさった星らしい。
しばらく眺めていると、太陽の中から、こちらに向かって人が出てきた。
俳優の唐沢寿明に、よく似た男だった。
すげえフランクに、「おっす。」と言われた。
ムーア達は、「太陽の生き物もアセンション移動できる。」と説明してくれた。
一切、意味が解らなかった。
俳優顔の男は、ムーア達としばらくやりとりをしていた。
それから俺に向かって言った。
「地球でしょ?君の住んでるところ、珍しいね。」
その後、ムーア達と「アクァッホじゃないんだ。」と言い合って、盛り上がっていた。
「アクァッホってなんすか?」
そう聞くと、俳優顔の男が答えた。
「火星で一番進んでた生き物。」
凄く興味があったので、詳しく聞いてみた。
月が見当たらない
まず、地球にも生命体はいた。
ただ、火星が栄えていた頃は、まだ微細なものしかいなかったという。
その頃の地球は、液体で覆われていた。
火星の人達は、地球の生命体の探索をしょっちゅうやっていた。
見つかるのは、微細な生命体と、虫の前身になる生命体だけだったらしい。
俺は進化論について話してみた。
信じられないくらいの大声で、爆笑された。
しばらく経つと、地球にも様々な生命体が現れた。
カンブリア紀のことだと思った。
俳優顔の男によると、それはアクァッホ達の介入が、一番激しかった時期らしい。
進化論なんていう、地球の中だけで完結させる考え方はやめろ、と言われた。
するとムーア達が、俳優顔の男に言った。
「お前達も、太陽に集まる次元の中だけで生きるのをやめたらどうだ。」
アクァッホは、地球的な言い方をすれば、哺乳類に一番近い生命だという。
と言うより、後に哺乳類や爬虫類になる生物の起源を、地球に発生させたらしい。
火星とある程度同じ進化の過程を、追わせようとしていたとのことだった。
それなら火星の生命体は、どうやって生まれたのか。
俳優顔の男に聞いてみた。
少し笑いながら、「俺達が分かれて住み着いた。」と言っていた。
そういえば、月が見当たらない。
そう思って探していたら、bのムーアに言われた。
「そういう、異物はここには反映されない。」
詳しく聞いてみた。
月は、地球的な言い方をすれば人工物らしい。
アクァッホが地球をフォーマットする際に使ったものだという。
しばらくすると、火星の中で、一部のアクァッホ同士が戦争のようなことを始めた。
多くのアクァッホが、地球に一時的に逃げた。
その頃の地球は、大気もウィルスも、もうオリジナルなものになっていた。
アクァッホには、あまり住みやすくなかったらしい。
火星のほうでは、核兵器をバンバン使って、表面を焼き続けた。
ただし、地球の核兵器とは仕組みが違う。
太陽の技術なのだそうだ。
火星がダメになったので、一時的に停戦して、再生させる方法を考えることになった。
すると、地球に逃げていたアクァッホが言い出した。
「俺らに似てる生命の過程を踏んだ生命体が、地球にいるぜ。」
猿の祖先のネズミみたいなやつ、恐竜、水棲生物。
それらのDNAを、解析し始めたらしい。
四種類の人類
アクァッホは、それらのDNAと自分たちのDNAを掛け合わせた。
そうして生き物の種を作り、ひとまず地球で発生させることにした。
アクァッホのDNAを引いているので、頭脳も発達するだろう。
火星への帰属意識も、芽生えるだろう。
彼らを労働力にして、火星のテラフォーミングをしよう。
そう考えたらしい。
ここまで話したところで、俳優顔の男とムーアが、口論のようなことを始めた。
「最初っから戦争目的だ。」とか、「偶発的に作られたものだ。」とか。
そんなことを話していたと思う。
しばらくして、人類が誕生した。
人類は、四種類ほどいたという。
一つ目は、身長がやたらデカい人類だ。
二メートル半以上あるトカゲ顔で、アクァッホに一応一番近いらしい。
二つ目と三つ目は、猿の祖先の特性が強く出た人類だった。
このタイプが、二種類いる。
四つ目は、まんま二足歩行する猿みたいなタイプだ。
上野の博物館に、人類の祖先として紹介されているルーシーがいる。
あれをイメージするといい、と言われた。
四種類は、それぞれ別のアクァッホの勢力が作ったとのことだった。
巨人は、アクァッホ達にすぐ保護された。
火星の再生のサポーターにするため、アクァッホ達と火星に向かった。
ところが、そのアクァッホ達の気が変わったのか、別の星に行ってしまったという。
二足歩行するだけの猿みたいな奴は、あまり知的な進化をしなかった。
そのまま猿として繁栄したらしい。
チンパンジーが一番似ているが、チンパンジーではない。
滅んでしまったとのことだった。
「その二足歩行する猿が、俺たち地球人の祖先じゃないの?」
そう言ってみた。
スーツを着た、茶色のムーアaが笑った。
「そう教わって生きてきたから仕方ないだろうけど、ちょっと無理があるとは思わなかったの?」
「猿に人間が似ているからそう思った。」と答えた。
「俺から見たら、猿も人間もアクァッホの亜種にしか見えない。」
そう言われた。
結局、地球には、猿の祖先の特性が強く出た二種類の人類が残った。
しばらくすると、この二つの人類は、ある程度の文明を持てるまでに発達した。
この頃までアクァッホは、空に住み続けていた。
この頃から、よく地上に降りるようになった。
紀元前8000年くらいに、アクァッホは地上に住むようになった。
場所は、今の中東地域だという。
二つの人類は、それぞれ独自の発展をしていった。
ただ、あまり友好的ではなかった。
次第に、勢力どうしで戦争をするようになった。
アクァッホは、どうやって統率を取るかで頭を悩ませていた。
それまでアクァッホが乗っていた母船は、地上に降ろされていた。
でかすぎて、山か何かに見えるくらいだったという。
紀元前7000年頃になっても、争いは終わらなかった。
そこで、アクァッホが介入するようになった。
元々は、争いをやめさせて、早く火星の再生作業をやりたかったかららしい。
けれど、介入していくうちに、アクァッホ自体も二つの勢力に分かれてしまった。
アクァッホを後ろ盾に、二種類の人類が戦争する状態になっていった。
それが、紀元前6000年頃だ。
この頃の二つの人類は、地球の全体地図を描けた。
化学反応を理解できるほどに、実は発展していたらしい。
ここまで聞いて、凄く混乱してきた。
疲れも感じていた。
ムーアが言った。
「そろそろ帰って眠っておけ。」
俳優顔の男も言った。
「ここまで話してこう言うのもなんだけど、あんまりここに来るのは良くない。」
「地球人でここに来たのは、俺が初めてなんすか?」
そう聞いてみた。
「地球からは、前からちょくちょく来てる。」
そう返ってきた。
その日は、ムーア達に部屋まで連れて行ってもらって、一度帰った。
半年ぶりの絵の具空間
目覚めてすぐ、ネットで痕跡を調べてみた。
それらしい話はあったが、どれも胡散臭かった。
それでも、また行くために質問をいくつか作った。
気になっていたのは、ナスカの地上絵とマヤ文明、ピラミッドだ。
ところが、それから半年くらい、絵の具空間には行けなかった。
やっぱり、もうあそこには行けないのか。
そう思い出していたある日、普通に眠っていたら、突然絵の具空間にいた。
久しぶりだったので、少し恐怖心が戻っていた。
前に見た場所とは、感じが違った。
頭の中で地球をイメージすると、そこに引き寄せられていった。
すると、人がいた。
今まで会ったことのない、本当に知らない顔のおばさんが、彷徨っていた。
恐る恐る声をかけてみた。
向こうも少しビックリした様子で、「地球人ですよね?」と言ってきた。
地球人どうしだと、実際の容姿になるのだろう。
そう思っていると、おばさんは笑いながら言った。
「私はこれから、もう一つの地球に行ってきます。」
そう言って、突然どこかへ消えてしまった。
しばらくゆらゆらしていたら、「おい!」と呼ばれた。
そちらを見ると、アロハのマイケルムーアのおっさんがいた。
「久しぶりです。」と言った。
「また来たのか!」と、怒られた。
「三回目っす!」と答えると、呆れた様子で言われた。
「ここのこと、実生活で話したりしたら浮くぞ。」
「他にもお仲間さんに会いましたよ。」
そう言うと、おっさんは少し間をおいて、「そうみたいだな。」と言った。
「お友達ですか?」
そう聞いてみた。
「君たちは個人の概念が強いから、理解できないかもしれないけど。」
「俺たちは、全体の自分と個人の自分がいる。全体の自分に聞いてみた。」
「色々質問あるんですよー。」と言った。
それよりもまず、前に話した続きを伝える。
それから答える、と言われた。
アクァッホの介入後の戦争は、一気に近代化した。
今の人類の技術すら凌駕する、凄まじい兵器が、次々に投入されたという。
更に、全球戦争と呼ばれる、地球全体での戦争になった。
それまで戦争に関わらなかったアクァッホや人類まで、参加させられた。
この頃のアクァッホは、二つに分かれていた。
今のイスラエルやイラク、インドあたりを拠点にした勢力。
アフリカあたりを拠点にした勢力。
戦争は、だんだん中東側が有利になっていった。
彼らがもともと乗っていた母船が、今のイスラエルあたりにあったからだ。
技術の革新が、やりやすかったらしい。
中東側は、そのうち人類に核兵器を与えてしまった。
これも太陽の技術だという。
バンバン使い始めたので、アフリカ側も、さすがにまずいと考えた。
核を使うのは良くない、ということになった。
それで、災害兵器を使い出した。
ところが、この災害兵器が、使っていくうちにコントロールを利かせられなくなった。
そうなるうちに、戦い方が変わっていった。
人類に兵器を与えて戦わせるのではなく、アクァッホ自身が戦争に向かうのが主流になった。
後で調べて俺も知ったが、インドの古い話に、そういう事を描いた話があるらしい。
とにかく、この戦いで、核も災害兵器も使い放題だった。
その結果、アフリカ側は押しに押されて、ほぼ全滅に近い状態になった。
ひどい状態になったアフリカ側は、最後の災害兵器を使った。
水を爆発的に増やせる、太陽の技術で作ったものだ。
仕組みも話してくれたが、頭が良くない俺は、アヘ顔で聞き流してしまった。
中東側のアクァッホは、地球に存在する唯一のアクァッホになった。
彼らが付いていた人類も、もう一つの人類を淘汰するため、世界中で残党刈りを始めた。
けれど、この中東側は、アフリカ側が洪水兵器を起動していたことに気付いていなかった。
ノアの方舟の話
紀元前5000年くらいになって、ようやく兵器の存在に気づいた。
その頃には、もう地上がヤバい状態になっていた。
マジで津波ヤヴァイ、という状態だ。
人類どころか、地上の生命体が住めるエリアが、極端に無くなってしまった。
にも関わらず、アクァッホ達は、自分たちの母船で一旦空に行ってしまったらしい。
俺は、まさかと思って、ノアの方舟の話をしてみた。
おっさんは、笑いながら言った。
「確かに少ないが、地上の生き物も乗せてただろう。」
「でも地球は水が多いから、過去何回も大洪水は起きてる。そういった事は特別なことじゃない。」
アクァッホ達が空でどうしようか考えていたとき、別のアクァッホ達が地球に来た。
巨人を連れて行った、あの勢力だ。
昔の火星の技術より高度な技術で、洪水兵器を回収した。
こうして、洪水は止められたらしい。
巨人を連れて行った側は、その後すぐに地球をグチャグチャにした。
アクァッホ達は「その責任をとれ。」と言って、地球のアクァッホだけを残して帰ってしまった。
その後、紀元前4000年頃まで、アクァッホは地上に降りなかった。
ただ、母船に乗せていた地球人の教育は続けていた。
アクァッホにとっては、やたら寿命が短い人類の教育は、大変だったらしい。
生命のサイクルを繰り返して、時折増え過ぎながらも、船の中ですら種を存続させる。
子孫に知識を伝えている人類を見て、アクァッホは言ったという。
「コイツラ地上に下ろして技術伝えさせれば、人類一気に発展するし、火星再生計画早まるんじゃね。」
そうして、この人類を地上に下ろすことになった。
その頃、世紀末を耐え抜いた地上の人類は、技術の再興をしようとしていた。
洪水や災害兵器の名残で、ほとんど失われていたからだ。
極端に高い技術だったので、見様見真似のところもあった。
それでも農耕や建築の技術を培っていった。
アロハのおっさんが言うには、アクァッホのDNAのおかげらしい。
紀元前4000年、母船にいた人類が地上に降りてきた。
アクァッホは、自分たちの知識は与えた。
けれど、道具はほとんど与えなかった。
昔、人類に核を使わせて大変なことになったから、そういうのはやめたのだという。
地上に降りた人類は、地上で生き残っていた人類に、技術や知識を伝えていった。
後から調べて思ったが、この降りてきた人類が、シュメール人なのかなと思う。
そこに、メソポタミア文明ができあがるのだそうだ。
ところが、地上に居続けた人類の中に、ある伝承を知る奴らがいた。
洪水でやべえとなっているとき、アクァッホが空に逃げてしまったという伝承だ。
そいつらが、後々シュメール人を一旦征服してしまう。
多分これは、アッカド人だ。
おっさんから、これで話は終わりだ、と言われた。
そこで、思いついたネアンデルタール人が出てこなかったことを聞いてみた。
返ってきた答えは、なかなか面白かった。
要約すると、こうだ。
「君たちと同じ種族だよ。君たちが所謂ダウン症の人も、同じ種族だと思うならね。」
つまり、ネアンデルタール人は別の人種ではなく、DNA異常があっただけの同種、ということなのかな。
ピラミッドとナスカ
ここからは、用意してきた質問をしてみた。
アロハのムーアが、全部答えてくれた。
起きたときにすぐメモを取っていたから、ここまでより正確に書けると思う。
まず、エジプトのピラミッドについて。
これは、アクァッホも驚いていた。
ちょっと警戒していた、と言ってもいい。
紀元前2500年くらいにはできていたようだが、アクァッホでも人類でもない、別の異星人の入れ知恵なんじゃないか、とのことだった。
ピラミッドは、完成形に意味があるというより、建築の過程に意味がある。
その建築を通して、色々なことを学ばせるのが目的なんだとか。
アクァッホに手伝われたマヤのものも、同じ目的らしい。
次に、ナスカの地上絵について。
これは、シュメール人の直系が、製図や相似の考え方を学ばせるために作ったものだ。
この時に、遊び歌というか、線をなぞりながら数学の考え方を言っていく遊びのようなものができた。
それが、この地に残る子孫たちに、儀式として伝わったらしい。
地上絵を確認するため、手作りの気球まで作った。
今はロストテクノロジーになっているが、半端じゃなく高い技術だったという。
空から地上絵を見て、手元に描いた絵と同じものを見せる。
そうして、相似とはどういうものかを学ばせた。
アクァッホは、ほぼ関係ないとのことだった。
次に、マヤ文明について。
マヤ人は、やたら誇り高い人達だったらしい。
シュメール系が放牧や金属器、車輪の技術を持って行っても、享受してなお使わなかった。
人力至上主義だったようだ。
ただ、頭はやたら良かった。
建築方法などは、自分たちで編み出していた。
アクァッホは、マヤ人にはアクァッホのDNAの色が強く出ているのではないか、と考えた。
数学を教えてみたら、ゼロを発見する。
天体の動きを完全に演算する。
とんでもないことになっていったらしい。
アクァッホもマヤ人を気に入って、今は人類に伝わっていない天体の観測方法を共有した。
そして、もう宇宙に行こうぜ、ということになった。
マヤ人の中で宇宙に行きたい者を、第二のシュメール人にするため、連れて行ったという。
結構な人数を母船に乗せてしまったらしいww
だけど、優秀なマヤ人がほとんどいなくなったマヤ文明は、その後滅んでしまう。
飢餓や、経済的な破綻。
挙句の果てには、侵略戦争に巻き込まれた。
その後アクァッホはどうしたのか、と聞いてみた。
シュメール人を地上に下ろした後も、ちょくちょく地球にちょっかいを出していたらしい。
ただ、宇宙開発が始まって、宇宙への関心が高まると同時に、人類に接触してこなくなった。
ここ最近も、地球から一旦離れている。
巨人などを連れて行った奴らと合流して、色々準備をしているんだそうだ。
とりあえず、その日はそれだけ聞いて、帰してもらった。
数学の先生の姿
次の日くらいに、また絵の具空間へ行ってみた。
本当にすぐだった。
いつものようにブラブラしていたら、俺の高校の数学の先生がいた。
本物なのか、ムーア的な認識なのか。
どっちだこいつは、と思って見ていた。
向こうがこっちに気付いて、話しかけてきた。
太陽系とは、次元もルールも全く違うところの、先生だった。
色々話すうちに、この人の種族は、星に住むということすらしないと分かった。
宇宙に漂うガスのような生命体らしい。
個体の概念もないので、地球の生命体と話すと、違和感マッハなのだそうだ。
しばらくして、アロハムーアが来た。
「あなた達は、やっぱり地球の生命体がここ来ると、すぐ判るんすか?」
そう聞いてみた。
「意識したらいるかどうか判るかもしれないが、たまたま。」
そう返ってきた。
先生は、アロハムーアとしばらく話した後、何処かへ消えた。
この二人は、生きている次元が一緒なのかもしれない。
俺はまた質問をした。
そもそも、この絵の具空間は何なのか。
アロハムーアによると、こうだ。
実生活を送っている世界の、宇宙の大小や距離、時間のルール。
それとは違うルールが当てられている、同じ宇宙らしい。
よく解らなかった。
それなら、もう違うものなんじゃないのか、と聞いた。
a1、a2、a3…と、たくさんの派生はあるが、全てaという同じ宇宙なのだという。
絵の具空間は、俺が普段見ている宇宙の、別のルールの宇宙だと言われた。
なんで俺は、こっちのルールの宇宙に来られるのか。
こっちのルールに適したお前は、こっちにいるはずだ。
それを無視して、お前の次元の視点で来ているのは、おかしいことだと言われた。
無理やり三次元的に見た結果が、絵の具空間になっているのだろうと思った。
最初に行ってしまった、光の空間は何なのか。
地球の次元の生命体には説明が難しいらしく、おっさんは少し困っていた。
簡単にいうと、こうだ。
a1、a2、a3…と、たくさんある同じ宇宙。
そのどのルールにも属さないが、同じ宇宙の一部である空間、とのことだった。
次に、311の時の日本や、いつものメキシコあたり、911の時のニューヨークで、やたらUFOが見られることを聞いた。
あれは、アクァッホとは違うのか。
大まかに分けて、三つの可能性があるらしい。
異星人。
別の次元の、同じ星に住む人。
その星の、秘密の乗り物。
一つ目は、地球のようにアクァッホ達の管理の下で発展した星では、少ない事例だという。
その場合は、次元を超えてくる宇宙人の可能性がある。
二つ目は、平行世界の移動か、あるいはタイムトリップか。
とにかく、そういったことを人工的にやるための装置らしい。
太陽は、この技術を持っている。
これを応用して、多次元に重なる太陽での活動ができるのだという。
他の次元の像が、たまたま反映されているだけの可能性もあるとのことだった。
地球の場合、最も現実的なのは三つ目だという。
シュメールの知識、つまりアクァッホの知識を受け継いだ人類が、それを再現しようとして作ったものではないか。
「災害時にUFOが現れるのではなく、UFOが現れてから災害が起きてないか調べてみろ。」
そう言われた。
面倒で、未だに調べていない。
他にもたくさん聞いてきたが、結構忘れている。
思い出せないや。
この後、もう一回だけ絵の具空間に行った。
そのとき、別の銀河の異星人が、好きな声優の姿で出てきた。
マジで興奮してしまった。
その異星人が一生懸命、自分の銀河のことを話してくれている。
それなのに、俺はずっと話を聞かず、ムーアにやべえやべえと言い続けていた。
これが、多分もうそろそろ半年前。
それ以来、絵の具空間にはしばらく行けていない。