白い大蛇の医者と戻ってきた未来
二十五歳で末期のがんを告げられたいとこが、白い大蛇の医者に治療される夢を見るようになった。腫瘍は縮み、手術は成功し、担当医は記録にない処置の痕に首をかしげた。結…
二十五歳で末期のがんを告げられたいとこが、白い大蛇の医者に治療される夢を見るようになった。腫瘍は縮み、手術は成功し、担当医は記録にない処置の痕に首をかしげた。結…
一人暮らしの部屋で眠れない夜が続いていた。部屋を一周した姉が「なるほどね」とだけ言って帰り、数日後に枕元の人形が届いた。その日から私はよく眠れるようになる。けれ…
鳴門の居酒屋で、高校からの友人Fが「いつ戦争、終わったんだっけ」と言い出しました。年表のずれは全部きっかり十一年。左利きだったはずのFが右手で箸を持ち、剣山の行…
就職活動に疲れて横浜市営地下鉄で眠り込み、終点で目を覚ましたら、真昼のように明るいドーム型のホームでした。読めない字の駅名標と、ミカン色の空と、バス停で声をかけ…
沼津の港にある屋根だけの公衆電話から、かけてはいけない番号に電話をしました。名前は名乗っていません。それなのに翌年、横の電話台の数字に、私の年齢が書き足されてい…
家の裏手の松林の奥に、朝顔のプランターが並んだ平屋がありました。行くたびに、数がひとつずつ増えていきます。六つになった日、私は生ぬるいコップを手渡されました。二…
金属加工業を営む私の左手薬指から、円錐状の光沢金属が出てきました。硬度はHRC65、非磁性、鏡面仕上げ。レントゲンには何も写らず、知り合いに送ると梱包は完璧なの…
小学五年生の初冬、スクールバスの停留所で動かなくなった子犬を見つけました。校庭の土はどこも固く、掘れたのは体育館の脇だけでした。その日の夕方、同じ模様の子犬が畑…
石川・七尾の一本杉通りの福引所には、パイプ椅子が一脚だけ開いたまま置いてあります。木の箱に手を入れた孫の耳元で「それだっ」と怒鳴った祖父の声と、六等の日本酒の裏…
岐阜の古いトンネルへ、五人が一台の軽自動車で向かいました。抜けたのは三十秒後です。後部座席は三人だったはずが、二人になっていました。坑口の祠の台座にびっしりと並…
柵も看板もない森に、白い紙の帯だけが渡してあります。不良も肝試しの連中も近づかないのに、その紙はいつも新しい。行き場をなくした中学生がそこをくぐった翌週、町の全…
高校の先生が初めて担任を持った年、窓の外ばかり見ている霊感のある生徒がいました。向かいのマンションに立つ焼け焦げた女性、文化祭の古い仏壇、修学旅行の壕で起きた三…
山あいの村で祟りの噂が立ち、寄り合いで生贄という言葉が出ました。その数日後、庄屋の娘が布団に温もりを残したまま消えます。雨戸は閉まり、山にしかない木の葉が一枚だ…
温泉街から離れた古い宿に泊まった晩の話になる。着いてすぐ襖を開けると、押入れの上の段は空で、布団は下の段にあった。炬燵での金縛り、ぬるい湯、低くなっていく窓の音…
小学四年の夏、共働きの家で留守番をしていると、知らないお爺さんが居間に座って、勝手に麦茶を飲んでいました。帰ったあとに残るのは、卓袱台の水の輪がひとつだけです。…
四年前の夏、山奥の河原でキャンプをした友人Nと俺は、深夜に廃ホテルへ向かった。非常階段をのぼる女の人影、黄色い白衣の誰か、そして途切れた記憶。廃ホテルで消えた記…
宮上荘では、清掃のカートを廊下の曲がり角の内側に停める決まりでした。理由は誰も言いません。深夜の三階で角が一つ足りなくなり、異世界に迷い込んだのかと思った私に、…
幽霊はいない、とAは言いました。光を反射する物体がなければ何も見えないからです。その理屈を確かめに、廃業した山あいの診療所へ入り、ポラロイドで三枚だけ撮りました…
魚沼の柄沢という谷にあった無人駅の便所は、戸の下が五寸だけ空けてありました。除雪の帰りに立ち寄った晩、その隙間から横に並んだ二つの目にじっと見られた男が、三十年…
教会の息子だった頃、ホームヘルパーの田中さんに頼まれて訪ねた古い県営マンション。501号室の老人が、突然、五十代の男の声で話し出しました。エレベーターの異変、駐…
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