人見知りをしない双子の弟は、人の顔ではなく頭ひとつ上を見て笑う子でした。二十年ぶりに訪ねてきた同級生を見て、姉が初めて泣き叫んだ雨の日。三和土に残された素足の跡…
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自分の体験した少し現実味のない話です。 自分自身、この事は今まで誰にもしたことがないし、これからも話すつもりはありません。 それにこの書き込み以降、僕が他人と話…
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四国山地の集落に残る農村舞台に、支柱も鉄の釘も使わない十三段の箱階段がありました。材木の記録も大工の名も帳面にありません。手間賃を受け取らなかった職人に名を訊い…
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熊野灘に面した集落の蔵に、夕方だけ湿る白い球が置かれていました。表面に浮かぶ入り江は日ごとに増え、地籍の控えには消えたはずの字名が一行だけ残っています。決して濡…
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丹波の谷の朝は、鳴るはずのない六時の鐘で始まった。鐘楼の鐘は昭和19年に供出されたのに、先代住職が空を撞くと谷いっぱいに音が響く。霜の丸い融け跡、受領印のない台…
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帝政ロシア末期の祈祷僧。シベリア、チュメニ州ポクロフスコエ村出身。 奇怪な逸話に彩られた生涯、怪異な容貌から怪僧・怪物などと形容される。ロシア帝国崩壊の一因をつ…
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十七で入った山陰の温泉宿には、十九年も離れに逗留する客がいました。障子は開けない、開いていたら閉めずに下がる、顔を見たらその日のうちに宿を出る。この三つの決まり…
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昭和四十年、山あいの製材の町の終点のバス停に、素性の知れない色白の若者が現れました。暗がりで目が利き、どの階段でも必ず十三段目で止まる人でした。カスパー・ハウザ…
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県境の低い山にあるという工事中の寺を、後輩と二人で探しに行きました。霧の参道で墨染めの行列に出会い、袖から腕が覗いた瞬間、そのうちの一体が参道の先へ声を張り上げ…
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エジプトのホルス 紀元前3000年 処女懐妊、12月25日生まれ。 厩で誕生、誕生を知らせる東方の星。救世主の誕生として3人の王がかけつけて祝った。 12歳で天…
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祖父の四十九日を終え、私は開けてはならぬと言われた蔵を片づけに戻りました。奥にあった古い帳面には、村に起きた出来事が、なぜか先に書かれていたのです。開いた者が次…
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認知症の父が、施設から何度も送ってきた意味不明のメール。「いわ」「いら」とだけ繰り返す文面を、私は苛立ちだと思い込み、返信もしませんでした。父の最後のメールが届…
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駅のホームで起きた出来事から、娘の目だけは守ったはずだった。なのに娘は言った——「上からだと、ぜんぶ見えたもん」。古い木の跨線橋に伝わる「振り返ってはいけない」…
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峠の一軒だけの洋食店。名物は三日火を入れるコンソメ。ある晩、湯気の消えた店で、見知らぬウェイターが告げた——「シェフは、煮詰まっております」。四日後の新聞記事で…
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解体を待つ無人の棟に、毎晩ひとつだけ灯りが点いていました。しかもその灯りは、取り壊しの進み具合に合わせて、一週間ごとに正確に一階ずつ下へ降りてくるのです。更地に…
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映像研究会の部室に、ラベルのないテープが一本だけ残されていました。瀬戸内の無人島で撮られた合宿の記録です。行きも帰りも六人、数はきちんと合っています。それなのに…
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ゲーム好きだった祖母を亡くした春、孫だけで集まってテトリスを遊びました。選んだ覚えのないレベルから始まり、一度もクリアできたことのない私の指が止まらなくなります…
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家賃が相場の半分だった、元仕立物屋の古い借家。北側の四畳半で眠る私の壁の中から、毎晩、何かを数える声がした。慣れてはいけないと祖母に言われた矢先、枕の中から現れ…
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大学写真部の夏合宿で泊まった、外房の網元屋敷の古い民宿。深夜、寝落ちした部員の枕元に、濡れた髪の女が正座していた。誰も動けないまま夜が明け、東京に戻って集合写真…
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高校時代、五人組だった私たちは、いつも「もう一人いる」気がしていました。修学旅行の夜、各自が持ち寄ったお菓子を広げると、なぜかビスコが六つ。五人しかいない部屋で…
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