2タッチ入力

公開日: 意味がわかると怖い話

cdae2a2dc3af32197e7f44b0a040610b59f367651381590042

私の父が施設にいたころ、父が散歩にでも出てそのまま連絡が取れなくなっても困るので、携帯電話をもたせていた。

父はボケており、携帯を買い与えアドレスを交換したころは「これでいつでもお前と連絡が取れるなあ」なんて言っていたが、 どんどんボケが進行する父には結局、メールはおろか電話さえも使うことができなかったのだ。

ところがある日、私の携帯に父からメールが来た。

件名はない。

本文にただ『いわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわ』と打たれている。

意味がわからない。と言ってもボケた父のことだ、意味などないのだろう。

そう思っていると、また父からメールが来た。

今度も件名はない。

本文に『いらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいらいら』と打たれている。

何のことやら。

結局、ボケた父が訳も分からず携帯を操作しているうちに、私にメールを送信してしまったのだろうと思って放っておいたのだが、 まさかこれが、父からの最後のメールになるとは…。

その日、父は施設で大暴れをし、階段から転落して亡くなったそうだ。

もしや二件目のメールの『いらいら』とは、何かいらいらすることでもあって、私に伝えたかったのだろうか?

あの時、私がしっかりとメールを返していれば、父も暴れたりすることはなかったのかもしれない。

編集者補足

携帯の数字キー入力に変換すると『いわ』は『110』番で『いら』は『119』番になる。

関連記事

ドアノブ(フリー写真)

テンキー

学生時代に住んでいたアパートの鍵はテンキーだったのだが、夜中の3時頃に部屋で漫画を読んでいたら、突然ドアノブをガチャガチャする音が聞こえた。 ビビったけど鍵を掛けているし大丈夫だ…

若返り

老人「本当にこれで若返れるのか?」 男「ええ。我社の開発したこの機械はあなたの細胞から全盛期だった若い体を生成し、あなたの今の記憶を入れることで記憶はそのままに体だけは若返ること…

美術室(フリー背景素材)

眠りに落ちた美女

ある日、僕は学校の美術室の掃除当番だった。 早く終わらせて帰ろうと急いでいたら、一枚の絵が大事そうに飾られているのを見つけた。 その絵はとても綺麗な女の人の肖像画だったのだ…

天国からの放送

そのカセットテープは、ある日、突然郵便や宅配便で送られて来るそうだ。 もちろん、差出人の名前なんかない。 テープ自体はどこででも手に入る安物なのだが、小さなカードが同封され…

廃墟

ロアニの家

子供の頃、近くに廃墟があった。 その家は川沿いにあって、庭には井戸もある。 しかも田舎だから灯りも少ないしで、夜になるととても不気味。 必然的にその家は、幽霊が出る家…

年齢当て

あと10分ほどで真夜中になるという時間帯に、私は特急電車に乗っていた。やがて、途中の駅で一人の男が乗り込んできた。 その男は、電車のドアが閉まると、突然我に返ったように乗客の顔を…

空き家

子供の頃に住んでいた家は、現在住んでいるところから自転車でわずか5分程度。 近所に幼馴染みも沢山いたし、自分とはもう関係ない家だという認識があまりなかった。 自分たちが引っ…

目が赤い人

ある地方の女子高生が東京の大学に進学が決まり、東京で一人暮らしをする事になりました。 とあるマンションで生活を始めているうちに、ある日部屋に小さな穴が空いているのに気付きました。…

能力

ニューヨークの地下鉄を私はよく利用する。 毎朝通勤の度に地下鉄構内で何やらぶつぶつ言ってる一人のホームレスの男がいた。 男の近くの壁に寄り掛かり、内容を盗み聞きした。 …

ひとつ作り話をするよ

今日はエイプリルフールだ。特にすることもなかった僕らは、いつものように僕の部屋に集まると適当にビールを飲み始めた。 今日はエイプリルフールだったので、退屈な僕らはひとつのゲームを…