タグ: 不思議な体験

祖母は米粒を七十年見なかった

日本のものを家に一つも置かなかった祖母の遺品から、色の抜けた日本のお守りが出てきました。中には皺だらけの紙が一枚と、米粒がひとつだけ。七十年のあいだ誰も触らなか…

存在しない駅

会津の谷を走る夜の列車で目を覚ますと、駅名標のない板だけのホームに停まっていました。翌朝、定期券には、この線のどこにも存在しない形の鋏の痕がもう一つだけ増えてい…

未来から来た男

煙が上がっとる三日のあいだは、はざまで人と口をきくな——父の言い付けを、小学生だった俺は何も知らずに破りました。昭和五十七年の常滑で五回だけ会った男と、母のカレ…

番号の飛んだフィルム

那須野が原の写真館を継いだ年、疏水の改修を撮ったフィルムのコマ番号がひとつだけ飛んでいました。景色がつながるように並べ直した晩、庭の外にあったのは石積みの水路と…

変わった妹

谷で拾った字は声に出して読むな——祖母の言い付けを、俺は面倒くさがって妹に押し付けました。その晩から妹は声を失い、三十七日目に姿を消します。徳島の山あいの集落で…

降りなければ

紀伊の山奥の集落へ向かう昼のバス。子どもがぐずったので途中の停留所で降り、定食屋に入った十分後、テレビはそのバスの事故を報じました。妻がこぼした一言の本当の意味…

世界一怖いお化け屋敷

昭和六十年の夏、川原に建つ見世物小屋で木戸番をしました。祖父に言われたのは、釣りを先に渡せという一言だけです。幕の内から響く拍手、濡れる地面、減っていく矢印、十…

2才児の直感

人見知りをしない双子の弟は、人の顔ではなく頭ひとつ上を見て笑う子でした。二十年ぶりに訪ねてきた同級生を見て、姉が初めて泣き叫んだ雨の日。三和土に残された素足の跡…

置いていった音

丹波の谷の朝は、鳴るはずのない六時の鐘で始まった。鐘楼の鐘は昭和19年に供出されたのに、先代住職が空を撞くと谷いっぱいに音が響く。霜の丸い融け跡、受領印のない台…

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