赤い誘導棒は右を指す
深夜の物流団地で、ナビは同じ案内を五回繰り返した。分岐に立つ人影が振る赤い誘導棒は、いつも暗い側道を右へ指している。前任の先輩が残した付箋の三行目の意味を、私は…
深夜の物流団地で、ナビは同じ案内を五回繰り返した。分岐に立つ人影が振る赤い誘導棒は、いつも暗い側道を右へ指している。前任の先輩が残した付箋の三行目の意味を、私は…
去年の六月、雨が上がった晩に入った注文の住所は、地図にない六丁目だった。更地の先に細い道が伸びていて、下りきったところに坂の下の灯りが並んでいた。受け取った人は…
乗り過ごした夜の駅、人の気配だけが抜けた町並み、帰ってからの違和感。当サイトの異世界に行った話から二十七本を選び、核心には触れずに読みどころだけを短く添えました…
六月の第三金曜だけ、給食のトレーに献立表にない緑の団子がのります。この土地ではあそび団子と呼ばれ、奥の小部屋で二人だけが作り、職員には一つも配られません。翌日、…
能登半島の先端近くにある無人の入江で海底調査を行った潜水士が、深度計も時計も狂う海域で人の手による石段を発見する。石段を十段上った先に広がっていたのは、潮の止ま…
山あいの時計店では霧の朝の四時十九分、二十の柱時計の音がぴたりと揃った。恩師の手帳に残る耳澄ましの手順どおり音を数えた私は、墨流しの渦巻く異世界に迷い込み、恩師…
恩師の生まれ育った谷へ、やり残した測量の杭を打ちに向かった技師。凪の刻に迷い込んだのは、言葉も文字も通じない、少しだけずれた土地だった。毎日打たれる薄青い注射、…
ダムに沈む谷の底、朽ちた坑道の奥に、赤茶けた巨大な鉄の輪が縦に据えられていた。霧のいちばん濃い晩、肝だめしにその輪をくぐった先で、私は名前も、顔も、生まれた国さ…
昭和の遠洋漁船で夜の見張りに立っていた俺は、凪の霧の晩、気づくと異世界の浜辺にいた。潮を力に栄えた並行世界の日本が黙した理由、意識から切り離されて勝手に動く身体…
昭和の城下町で区画整理の測量をしていた私は、公図にだけ残る十三番目の区画に気づく。日が暮れる境の時刻に北のはずれの角を曲がると、表とそっくりの裏の町が広がってい…
異世界の駅で出会ったのは、もういないはずの親方だった。昭和の終わりの冬、雪深い山あいの無人駅で最終の汽車を逃した若き建築職人が、時刻表にない真夜中の一両汽車に乗…
山あいの谷で代々の田を継ぐ私は、水の止まった真夏の朝、祖父の遺した時空の隧道をくぐった。抜けた先に広がっていたのは、もう山に還ったはずの段々の田と、水車の回る古…
昭和の初め、峠の脇道に立ちこめる紫の靄に誘われ、私は地図にない盆地の村へ迷い込んだ。松明を掲げ入り者を探す村人、季節外れに穂を垂れる棚田、止まった懐中時計。異世…
霧の濃い早朝、一人で防波堤に釣りに出た私が会った時空のおっさんの不思議な体験談です。数分おきの汽笛も海鳥の声も消えた港に、いつもの赤い灯台はなく、見たことのない…
神保町の裏通りで古書店を営む七十代の女性店主のもとに、亡き旧友の遺品が届いた。革表紙のアルバムを開くと、立っているはずの自分の位置に、見知らぬ少女が立っていた。…
夜勤明けに毎朝寄っていたコンビニで、私と全く同じ服装の人が、いつも十分前に同じ缶を二本買って消えていた。異世界に住むもう一人の私と、同じ街で生きていた当時の不思…
県立図書館の閉架書庫で本の差し替えをしていた午後、空気の匂いが急に消えました。天窓の光は灰色から夜の青に変わり、館内から人の気配が消えました。異世界に迷い込んだ…
千葉県湾岸の工業地帯を夜に歩いていた女性が遭遇した、時空のおっさんと十二分の不思議な話。音が消え、信号が固定され、知らない道を歩いていた体験談。…
高知県の峠で長距離ドライバーが体験した不思議な出来事。使われていない公衆電話が鳴り出し、声が告げた「三十分後」が現実になった実話体験談。タイムスリップのような時…
山梨県の廃集落跡を一人でハイキング中に発見した古い鳥居と低い石扉。開口部の奥から人声のような音に引き寄せられそうになった怖い話。帰宅後に撮影した写真に子供のよう…
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