沈んだ村の渡し場
六年前の秋、記録的な渇水でダム湖の水位が二十メートル下がり、沈んだ村の旧道と渡し場の三十七段の石段が湖底から現れました。渇いた年を彫り継ぐ石の標柱、欄干に固結び…
予知夢、テレパシー、霊的な感知——科学では説明できない超常現象の体験談を集めました。実際に起きたかのように語られる不思議な話の世界へ。
六年前の秋、記録的な渇水でダム湖の水位が二十メートル下がり、沈んだ村の旧道と渡し場の三十七段の石段が湖底から現れました。渇いた年を彫り継ぐ石の標柱、欄干に固結び…
昭和五十一年、城下町の電話局で度数計の数字を読み写す仕事に就いた。誰も加入していない空き番号の計器だけが、毎月七ずつ増えていく。更衣室のロッカーは一つ減り、記念…
昭和の遠洋漁船で夜の見張りに立っていた俺は、凪の霧の晩、気づくと異世界の浜辺にいた。潮を力に栄えた並行世界の日本が黙した理由、意識から切り離されて勝手に動く身体…
山あいの谷で代々の田を継ぐ私は、水の止まった真夏の朝、祖父の遺した時空の隧道をくぐった。抜けた先に広がっていたのは、もう山に還ったはずの段々の田と、水車の回る古…
霧の濃い早朝、一人で防波堤に釣りに出た私が会った時空のおっさんの不思議な体験談です。数分おきの汽笛も海鳥の声も消えた港に、いつもの赤い灯台はなく、見たことのない…
取り壊しの決まった大学の旧標本室で、番号のない瓶の整理を任された五十代の私。札もなく台帳にも載らないその瓶の底には、膝を抱えた白い影が静かに沈んでいた。夜ごと観…
夏の休暇に、亡き叔母の海辺の家を訪ねた。干潟の人影が、毎夕ひとりずつ沖へ増えていく。土地の者は誰も潟に降りないと言う。淡々と綴る、説明のつかない実話怪談。最後の…
余白の傍注がびっしり詰まった書名なき古書を、亡き学者の蔵書から手元に置いた古書店主。夜ごと読むうち、見覚えのない一行が内心に返事をし始め、その筆跡はやがて自分自…
夜の古井戸から、誰かが釣瓶で水を汲む音が響く。ダムに沈んだ村跡に建つ道の駅で深夜清掃をする七十代の私が、固く蓋をされた井戸の底に見たのは、嫁いだ頃の若い自分の姿…
神保町の裏通りで古書店を営む七十代の女性店主のもとに、亡き旧友の遺品が届いた。革表紙のアルバムを開くと、立っているはずの自分の位置に、見知らぬ少女が立っていた。…
梅雨入り前の北陸へ一人旅に出た若い看護師が、霧に包まれた古道で出会った、もう何十年も前に火事で焼け落ちたはずの茶店と着物姿の老婆。一夜のタイムスリップとも思える…
能登の小さな漁港で出会った時空のおっさんと、後日漁協で見つけた古い写真にまつわる不思議な話。真夏の早朝に起きた、説明のつかない実話体験談。…
高知県の峠で長距離ドライバーが体験した不思議な出来事。使われていない公衆電話が鳴り出し、声が告げた「三十分後」が現実になった実話体験談。タイムスリップのような時…
杉並区の古いアパートに引越した私は、押入れの奥に隠れた引き戸を見つけた。開けると昭和40年代の商店街が広がっていた。昭和42年の新聞の日付、駄菓子屋のおばさんの…
解体予定の古い吊り橋を取材した日のこと。同行のカメラマンが車に戻ってから様子がおかしくなり、彼は私に足元を見てくれと言った。…
県北の閉じた商店街で、唯一灯りが点いていた古い時計店。すべての振り子が同じ時刻で止まっていた。仕事を終えて知らされた事実は、その店は十年前にもう存在しないという…
母の入院見舞いで帰省した北陸の町。シャッター街になった商店街の奥に、子供の頃に通った手芸店の灯りがまだ残っていた。そこにいたのは、五年前に亡くなったはずのおばあ…
卒業旅行中に山中の霧で道に迷い、夏祭りの集落に迷い込んだ。誰も汗をかかず、全員が同じ笑顔。気がつくと十二日間の記憶が丸ごと消えていた。…
離島の調査で訪れた禁足地の入り江。島民が「ウミナリ」と呼ぶその場所で、研究者は二時間半の記憶を失う。手に残った青い痣と、百キロ先でも聞こえる海鳴りの音。…
ある日から音が三秒だけ早く聞こえるようになった塾講師。電話、チャイム、やがて人の声まで。ずれは日に日に広がり、やがて聞こえてはいけないものまで届き始める。…