生き人形

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呪いの生き人形。

稲川淳二氏が、テレビ等の心霊特集に欠かせない存在になった切っ掛けの心霊体験談がこれです。

この話は稲川淳二氏自身は勿論、テレビ、雑誌、漫画等も未だに敬遠しています。

祟りがあると噂されているからです。

いや、正しく言えば、未だに関係した者達に祟りが起こっているからです。

はっきり言って私もここに書くのは怖いです。

皆さんも心して読んでください。

※

生き人形の呪いは、昭和53年6月から始まりました。

その日、稲川氏は日本放送の深夜のラジオ番組の仕事をしていました。

今日は前半を先に録音し、後半を生で撮るという方法で、番組は作られる事になっていました。

録音が始まるまでソファーに座っていた稲川氏は、大声で泣いている男の声を聞きます。

「いったい何が起こっているのだ」

廊下に出てみると、二人の男性がかなり離れた場所にいました。

その一人、うずくまっている男が声をあげて泣いているのです。

泣いている男性は、『南こうせつ』さんでした。

その南氏をなだめているのが、稲川氏の知り合いのデレクターでした。

皆さんは『わたしにも聞かせて』を御存知ですか?

『かぐやひめ』のレコードに入っていた、謎の少女の台詞です。

霊の声が録音された心霊現象として、伝説になっている事件でした。

南さんはその声を聞いて泣いておられたのです。

スタッフが南氏にその不思議な声を聞かせたところ、彼は泣きだしたそうです。

…その声の主、それは南氏がラジオの放送で知り合った少女の声らしいのです。

彼女は楽しみにしていた南さんのコンサートの前に、病気で亡くなったのです。

その声の主が誰か気付いた南氏は、悲しくなり泣いていたのでした。

※

真夜中。稲川氏のラジオ番組は終了しました。

南氏の事があったからでしょう。あのデレクターが一人で帰るのは恐いからと、稲川氏を待っていました。

稲川氏はそのデレクターと、タクシーで帰宅する事になりました。

帰宅中、後ろの席に座る彼は、高速道路で不思議なモノを見てしまうです。

それは奇妙な標識。…いや、標識にその時は見えたのですが。

「高速道路に標識?」

再び前方に同じモノが現れました。

…それが標識では無い事にすぐに気付き恐怖しました。

着物を着た女の子が、高速道路の壁の上に立っていたのです。小さな女の子が。

稲川氏がソレが子供であると気付くと同時に、その女の子は「ぶぁ~」と膨らみ、物凄い勢いで車の中を突き抜けて行きました。

稲川氏は突然の出来事に、声ひとつあげる事ができませんでした。

しかし不思議な事に、それを見たのは、いや、気付いたのは彼だけだったのです。

※

そして次の日の朝、彼の奥さんが不思議な事を言いだしました。

「昨日泊られた方はどうしたの?」

昨夜タクシーから降りたのは、もちろん彼だけです。

当然部屋に入ったのも彼ひとりです。

彼女は、彼の後を付いて入ってきた人の足音を絶対聞いたと言い張るのでした。

そして、ソレが一晩中歩き回って五月蝿かったと…。

次の日、一緒に帰ったデレクターから首をかしげながら、彼にこんな事を聞いてきました。

「そんなわけないんだけど…誰かと一緒に降りたっけ?」

その日の午後、稲川氏に仕事の依頼が入りました。

人形芝居『呪女十夜(じゆめじゅうや)』。

不幸な女たちの十夜が、オムニバスで構成される幻想芝居。

その不幸な女達を人形が演じ、その他の登場人物は人間が演じるというものでした。

稲川氏は座長として、今回の芝居に関る事になっていました。

打ち合わせ中、その世界では有名な人形使いの『前野』氏から、いま作られている人形の絵を見せられて驚きます。

そこに描かれている絵は、あの高速で見た女の子そっくりだったのです。

台本がもう少しで出来上がる頃、前野さんの家に完成した人形が届きました。

稲川氏は台本の打ち合わせをかねて、前野さん宅にその人形を見に行くのでした。

※

芝居で使う人形は二体。

ひとつが男の子の人形で、もう一体が女の子人形でした。

その女の子の人形があの高速で見た人形であり、その後に数々の怪奇現象を起こす人形なのです。

ちなみにその二体の人形は、有名な人形作家『橋本三郎』氏が作られました。

前野さんは数百体の人形達と暮らしていました。

稲川氏は前野さん宅で出来上がった人形を見て、不思議な事を発見します。

女の子の人形の、右手と右足がねじれていたのです。

…どうして直さないのかと前野さんに訊ねると、「直したくても直せない」と。

この人形を作られた橋本氏が、人形を完成させてすぐに行方不明になっていたからなのです。

そして次の日、台本を書いていた作家の方の家が全焼してしまいます。

舞台稽古初日までに、台本は間に合わなくなってしまうのでした。

稲川氏達は、壊れた人形と台本無しで舞台稽古を始めるのでした。

人形使いの前野さんの従兄弟の方が変死して、それを知らせる電話がかかってきた日から、舞台稽古中の彼等に次々と怪奇現象が襲いかかってきました。

舞台衣装の入れたカバンやタンスに水が溜っていたり、突然カツラが燃えたり、右手右足を怪我をする人が続出したりしたのです。

『呪女十夜』の公演の初日を迎えました。

が…公演開始数時間前に、出演者が次々に倒れてしまったのです。

喋る事はできるのですが、金縛りのようになって身体が動かないのです。

初日は昼と夜の2回公演だったのですが、昼の公演はやむなく中止。

初日で関係者の方が多かったので、昼と夜の部を一緒にしてもらう事にしました。

「とにかくお札を集めよう」

彼等は近くの神社やお寺を回り、あらゆる種類のお札を持ってきて、控え室に貼ってみました。

効果があったのでしょうか? なんとか夜の部の舞台を始める事ができました。

※

やはり、公演中にも次々に怪奇現象が起こりました。

人形が涙を流し、居るはずない黒子がもう一人居たり、そして突然人形の右手が「ビシッ!」と吹き飛んだのです。

パニックになりそうになりながらも、出演者達は演技を続けました。

人形を棺桶に入れるラストシーンをなんとか迎える事ができました。

が…棺桶に人形を入れた途端に底が抜け、人形の首、腕、足が千切れてしまったのです。

ドライアイスを焚いたような謎の冷気をもった白い煙が舞台一面に広がり、夏だと言うのに信じられない冷気に開場が包まれました。

幽霊が怖いからって、途中で舞台を投げ出すわけにはいかない。

稲川氏達は恐怖におののきながらも、決められた最終日までなんとか舞台公演を続けるのでした。

なんとか無事に全ての公演日数を終了できました。

もう二度とこの劇はしたくないなあ…全ての劇団員達はそう思っていました。

当然稲川氏も同じ気持ちでした。

しかし、最終公演を終え打ち上げをしている稲川氏達に、劇場からとんでもない依頼が入ります。

…追加公演をしてくれ。

次にここでやる事になっていた舞台が、突然中止になったのです。

…だから、今やっている舞台を追加公演してもらえないかと。

スタッフ・出演者達は大反対!

しかし、人形使い前野さんの異常なほど強い希望により、追加公演をする事になるのでした。

…前野さんのお父さんが急死されたのが、その次の日でした。

※

舞台がなんとか無事に終了した数ヶ月後、この話をTBSの番組『3時にあいましょう』が聞きつけて、怪奇シリーズで放送する事になりました。

人形使いの前野さんがあの人形を保管していました。

番組撮影のために人形を持って現れた前野さんは、少しおかしくなっていそうです。

その人形を、まるで生きているかのように話し掛けていたり…。

やはり怪奇現象が起こりました。

まずは、番組リハーサル中に照明用のライトが落ちてきた。

そして生放送の番組中には、人形の上にバックに吊っていたカーテンが突然切れて被さり…女性スタッフ達は恐怖で泣き出して、まともな番組にはなりませんでした。

その後、その番組のスタッフ達に怪我をする人が続出し、この番組の関係者達はバラバラとテレビ局を辞めていったそうです。

今度はその話を聞いたテレビ東京のスタッフがその話を番組にしようと、行方不明になっていた人形制作者の橋本三郎氏を見つけだします。

稲川氏は本当はこの番組に、前回の事があったので協力したくなかったのです。

もうあの人形とは関りたくなかった。

しかし、行方不明になっていた橋本三郎氏が見つかったと言うことで、しぶしぶ了解したのでした。

橋本三郎氏は、なんと京都の山奥で仏像を彫っていました。

スタッフ達は橋本氏に会ってインタビューをとろうと京都に向かうのですが、インタビュアーの小松方正さんと手違いで京都で会えなくなるわ、スタッフもバラバラになるわで、結局インタビューは撮れなくなってしまうのです。

日を改めて、今度はスタッフだけでインタビューを撮りに行くのですが、今度はディレクターの奥さんが原因不明の病気で顔が腫れあがったり、切符を手配した人の子供さんが交通事故にあったり、不幸な事が続出。

スタッフ達もいい加減気味悪がったのですが、とにかく番組を完成させるために稲川氏をスタジオに呼んで、インタビュー撮影をする事になりました。

しかし、稲川氏のインタビューを撮影しようとすると、ビデオカメラが次々に壊れたそうです。

3台目が壊れたので、仕方がないから16ミリフィルムのカメラで撮影しようということになり…。

「これは、ある人形にまつわる話で…」

と稲川氏が語りだすと、本番中なのにスタジオのドアを思い切り叩き続ける音が。

ドアを開けるが、そこには誰もいませんでした。

京都での取材やらなんやらで、かなり制作費を使っていたのですが、これはほんとにヤバそうだからと、結局その番組制作は中止になりました。

今でもこの時の影像は、テレビ東京倉庫に眠っているようです。

※

流石に稲川氏も恐くなり、人形を持って知り合いの霊能者に相談に行きます。

「…なんかいやな予感がするよ。…見たくないね」

と言う霊能者に、布に包んだままでいいからと、無理に頼み込み霊視してもらうのですが、布に包まれた人形を持った途端に顔色が青くなる霊能者。

「この人形は生きているよ。それもたくさんの女の怨霊が憑いている…

取り憑いている中でも強いのが女の子の霊で、戦前に赤坂にあった青柳って料亭の七歳の女の子…。

この子、空襲で右手と右足が飛んでますよ。

…これにはお対の人形がいますね?

このまま放っておくと、その人形にも憑きますよ。早くお寺に納めたほうがいい。

これは下手に拝むと襲われる…。

いいですね。お対の人形と一緒に、お寺に納めるのですよ」

…しかし、その後すぐに、その霊能者は謎の死を遂げるのです。

怖い話・不思議な体験・都市伝説まとめ|ミステリー

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