時代を越えて

体育館

俺が小学生だった頃、早朝一番乗りで体育館でシュートの練習をしていたら、いつも体育館のステージの袖に見知らぬハゲのおっさんがいることに気が付いた。

近眼でよく見えないし、その時は先生だろうと思い特に気にしていなかった。

それから暫く経ったある日、体育館の靴箱のところで眩暈がして座っていたら、おっさんが目の前に居た。

俺パニック。おっさんはハゲじゃなかったし、先生でもなかった。寧ろヤバい人だと思った。

暴れん坊将軍を貧相にしたような、着物でチョンマゲのおっさんがそこに居た。

おっさんの言葉は聞き取れなかったけど、『朝からがんばってるなー、感心感心』みたいな感じがしたから、俺は取り敢えずニコニコしてこくこく頷いていた。

でも、内心『こんなところに上様がいるはずがない、であえであえー』と思っていた。

おっさんはこの上なく面白そうに笑い、一瞬で消えた。

俺はその日、色々な友達に「体育館にチョンマゲのおっさんが出る!」という話をした。

みんな「見たことねえぞ」とか「なにそれ!」と言って、昼休みくらいにはかなり話題になっていた。

ちなみに自分の通っていた小学校は創立100年越えで、戦時中には避難所や死体安置所にもなっており、怖い話や不思議な話は腐るほどある学校だった。

先生も噂話を聞いたらしく、午後の授業で学校の歴史について調べることになった。

すると、おっさんに出会った体育館は、元々すぐ南にある某天満宮の敷地だったことが判明。

天満宮=菅原道真だし、菅原道真がうちの県に赴任していた記録もあったので、あのおっさんは菅原道真だったんじゃないか説が浮上した。

しかしクラスで一番賢いAさんが、「菅原道真の時代にチョンマゲあったんすか?」と言う。

チョンマゲと言えば江戸時代ということで当時の記録を調べると、うちの藩の初代藩主がその天満宮がいたくお気に入りで、自ら社殿や社地を広げたりと藩学の拠り所として何かと世話していたようだ。

それで藩主の肖像を探して見てみると…あのおっさんに激似。

「これや!これおっさんやで!!!」

藩主は時代を越えて後進の育成ぶりを気に掛けていたらしい。

ちなみに藩主は徳川家康の孫で、弟は黄門様。上様もあながち間違いじゃなかった。

こんな感じで一大歴史スペクタクルを味わった小学生時代の思い出。

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