鏡の中の話

kagami5

鏡の中の話だ。

小さい頃、俺はいつも鏡に向かって話し掛けていたという。

もちろん、俺自身にはハッキリとした記憶は無いが、親戚が集まるような場面になると、決まって誰かがその話を始める。

近所には同じ年くらいの子供が居なかったので、寂しくて鏡の中の自分に語りかけていた。

そういう事になっている。

事実は違っているが親や親戚に話せるはずも無い。

だから、ここに書いてみようと思う。

頭がおかしい奴と思われるかもしれないが、俺はただ誰かに話したかっただけで、相談に乗って欲しいわけじゃないし、暇つぶしに読む人も居るかもしれない。どうせ誰にも解決できない。

小さい頃の記憶は曖昧なので書きようが無い。

はっきり鏡に人影らしきものが映るようになったのは、中学の頃だった。

昼も夜も無い。鏡を見ていると、俺の後ろに誰かが横切ったり、誰かが覗き込んでいるような顔が映るようになった。

そうなると人の視線を感じたり、気配を感じるようになる。

落ち着けないし、深い眠りにつくことも出来なくなった。

気のせいかもしれないが、俺は自分の部屋から鏡を無くした。

それは1ヶ月程で消えた。すっかり見ることも無くなって忘れていた。

10年経って、俺は一人暮らしを始めた。

先週の事だ。夜中に車を運転していてルームミラーに目をやると、そこに人の顔があった。急ブレーキで停車し、後部シートを振り返ったが誰もいない。だが、ミラーの中の顔は消えずに俺を見ていた。

不思議なことに、前髪がミラーから生えてユラユラ揺れている。

やっと気がついた。

鏡に映っている訳じゃない。鏡の中から俺を見ていたんだと。

車をそこに置き、1時間かけて歩いて帰った。

今、テレビから這い出してくる貞子の映画を思い出している。

正直言って正気でいる自信が無い。

踏切(フリー素材)

留守電に残された声

偶にニュースで取り上げられる、『携帯電話に夢中で、踏切を気付かずに越えて電車に轢かれてしまう』という事故があるじゃないですか。 巻き込まれた本人もさる事ながら、電話の相手も大変で…

人形の夢

前月に学校を辞めたゼミの先輩が残して行った荷物がある、という話は久保から聞いた。 殆ど使われていない埃っぽい実験準備室の隅っこに置かれた更衣ロッカーの中。 汚れたつなぎや新…

天使(フリー素材)

お告げ

私は全く覚えていないのだが、時々お告げじみた事をするらしい。 最初は学生の頃。 提出するレポートが完成間近の時にワープロがクラッシュ。 残り三日程でもう一度書き上げな…

四国の夜空

四国八十八箇所逆打ちの旅

四国八十八箇所を逆に回る「逆打ち」をやると死者が蘇る。 映画「死国」の影響で、逆打ちをそういう禁忌的なものと捉えている人も多いのではなかろうか? 観光化が進み、今はもう殆ど…

雨(フリー素材)

天候を操る力

小学生の頃だったか。 梅雨の時期のある日、親友の友人という微妙な関係の子の家に遊びに行った。その親友と一緒に。 そこで三人でゲームなどをして遊んでいたら、あっという間に帰る…

食卓(フリー写真)

一つ足りない

何年か前に両親が仕事の関係で出張に行っていて、叔父さんの家に預けられた事がある。 叔母さんと中学3年生の従兄弟も歓迎してくれたし、家も広くて一緒にゲームしたりと楽しく過ごしてい…

禁忌の人喰い儀式

俺の親父の田舎は、60年代初頭まで人喰いの風習があったという土地だ。 とは言っても、生贄だとか飢饉で仕方なくとかそういうものではなく、ある種の供養だったらしい。 鳥葬ならぬ…

祭祀(長編)

近所に家族ぐるみで懇意にしてもらってる神職の一家がある。 その一家は、ある神社の神職一家の分家にあたり、本家とは別の神社を代々受け継いでいる。 うちも住んでいる辺りではかな…

校舎(フリー写真)

消えたヤンキー

現在就活中で、大阪と兵庫の辺りをうろうろしている。 昨日ホテルに帰る途中のタクシーの中で、一緒に居た友人が何故か怖い話を始めた。 その時に運転手さんから聞いた話。 …

ポコさん

私の住んでいた家の近くの公園には、いつもポコさんという大道芸人みたいなおじさんが週に3回来ていた。 顔は白粉か何かで白く塗り、眉毛は太く塗り、ピエロの様な格好でいつもニコニコして…