悪夢を見せる子守唄

公開日: 洒落にならない怖い話

wallpaper102_640_1136

もう時効だと思うから、結婚前に告白する。

うちには代々伝わる「相手に悪夢を見せる子守唄」っていうのがある。
何語か分からないけど、詩吟とかに近い感じで、ラジオ体操の歌ぐらいの短さの歌。

文字で書くと「あ~しぃ~ふっひ~~ったはぁがーーーっ」(ハ行は息を吐く音、「がーっ」はタンを吐く時の音)みたいな感じで、とにかく独特な歌。

先祖代々一族中が知っている歌で、「戦国時代、自分の一族が仕えた殿様を殺した武将の家に入りこみ、乳母になって跡取りを殺した」とか、そんな微妙なエピソードまでついてる。正直眉つばものだけど、子ども心には怖かったし「子守唄歌うよ!」と親に脅されると泣くほど怖かった。

大学から25歳ぐらいまで4年間つきあった彼氏に、プロポーズされて親の紹介までした上で、浮気されてた。しかもそれがバレた時、彼がギャク切れした。その時は半同棲のようなものだったから、ギャク切れして酒飲んでふて寝した彼氏に対して、怒りがおさまらずに、はじめてこの子守唄を歌った。

3回ぐらい繰り返したと思う。

そうしたら、いきなり彼がカッと目を見開いて、その場で吐き出した。ウゲッと思ったけど、吐くだけ吐いたらまた、ゲロだらけの布団でウトウトしだしたので、そのまま放置して帰った。子守唄のせいか、酒のせいかはその時点では分かってなかった。

その後、相手の親御さんから慰謝料もらって、きっぱり別れた後に、彼の友人から「悪夢を毎日見ている」と教えられた。内容は教えてもらったけど、とにかく自分が死んで腐っていくような夢ばっかり見てるらしい。ごはんも食べられないとかでみるみる痩せてる。

さらに1年ぐらいした後、会社辞めて入院するレベルで病んだことを聞いた。
それからは、転職して地元に戻ったから、どうなったか知らない。

あれが子守唄のせいなのか、本人のせいなのか知らないけど、またいつかこの歌を歌ってしまわないか考えると、ちょっと怖い。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

自殺志願

年月が経つにつれ自信がなくなっていく思い出です。 俺が19歳の頃の話です。高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、気が向いたら日雇いのバイトなどをしてブラブラしてい…

沖縄

奄美大島の伝説

この話は私の大学時代の友人から聞いたもので、彼は奄美大島出身です。ある夜、ゼミ合宿での宴の席で、私たちは怪談話に花を咲かせていました。その中で、奄美大島に伝わる「いまじょ」という怪談…

版画(フリー素材)

ウヅガアさん

うちは田舎の農家で、母屋と倉、便所に囲まれるように庭がある。 その庭の隅の方に30センチくらいの高さの丸っこい石が置いてあり、正月に餅を供えたりする。父親はその石をウヅガアさんと…

日本人形(フリー画像)

ばあちゃんの人形

母から聞いた本当にあった話。肉親の話だから嘘ではないと思う。 母の昔の記憶だから、多少曖昧なところはあるかもしれないけど。 ※ 母がまだ子供の頃、遊んで家に帰って来たら居間の…

彼氏からのメール

若い女性があるマンションに一人で住んでいた。 彼女には、交際して2年の彼氏がおり、いつかは結婚もあり得るくらい交際は順調だった。 ある日の晩、彼氏からのメールを受信した。 …

ゲーム機

閉店間際のゲーム店にて

約10年前、私はあるゲーム店でアルバイトをしていました。 閉店時間が迫るある日、60歳前後と見える一人の女性が、突如大きなダンボール箱を抱えて店内に駆け込んできました。 …

神秘的な山道

おまつり

俺の生まれ育った村は、田舎の中でも超田舎。もう随分前に市町村統合でただの一地区に成り下がってしまった。 これは、まだその故郷が○○村だった時の話。俺が小学6年生の夏のことだった。…

長袖の下に

小学校の時に転校してきた奴で、少し変わった奴がいた。 家はやや貧乏そうで、親父さんがいないみたいだった。 お袋さんは2、3回見たことがあるけど優しそうで普通に明るい人だった…

パンドラ(長編)

私の故郷に伝わっていた「禁后」というものにまつわる話です。 どう読むのかは最後まで分かりませんでしたが、私たちの間では「パンドラ」と呼ばれていました。 私が生まれ育った町は…

紫の抽象的模様(フリー画像)

塊紫水晶奥

私には年の離れた兄が居る。普段何をしているか判らない飄々とした自由人。 偶に家に遊びに来ては、変な物を置き土産として置いて行く。 半年ほど前、玄関に磨かれていない紫色をした…