入口のない離れの鏡台
文化財調査で訪れた北陸の半島の港町。解体間近の網元の旧家の裏庭には、窓やガラス戸はあるのに人の出入りする入口だけがない離れが建っていた。母から娘へ受け継がれた隠…
文化財調査で訪れた北陸の半島の港町。解体間近の網元の旧家の裏庭には、窓やガラス戸はあるのに人の出入りする入口だけがない離れが建っていた。母から娘へ受け継がれた隠…
祖父の四十九日を終え、私は開けてはならぬと言われた蔵を片づけに戻りました。奥にあった古い帳面には、村に起きた出来事が、なぜか先に書かれていたのです。開いた者が次…
昭和41年、伊那谷の旧家へ奉公に上がった私が最初に教わった決まりは、五人家族に膳を六つ出すことだった。湿った茶碗の縁、誰もいない部屋の青い畳、毎年育っていく誂え…
祖父の通夜の晩、築百五十年の庄屋屋敷で一人、ガラス張りの奥座敷に通された私。長い廊下を引きずる足音、波打つ襖、共振するガラス。家族はイタチの仕業だと言うが――山…
わたしの実家には、相手に悪夢を見せる歌が代々伝わっている。開かずの仏間の隅には戒名のない黒い木札があり、母はその前にだけ塩を供えた。婚約者にこの話をできずにいる…