刑ドロ

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小さい頃から柔道をやっていたのだが、そこで起きた話。

その道場では毎年12月の初め頃に「鏡開き」をやっていた。

夕方18時から夜の22時くらいまで、道場がぜんざいやおせちを振舞うのだ。

もっとも、今では「鏡開き」と称した大人たちの飲み会だったのではないかと思っているが…。

大人達が飲み食いしている間、子供たちは外を駆け回ったり、持ち寄ったゲームやカードで遊ぶのが常だった。

ある年のこと、僕ら悪ガキは年下の連中を脅かそうと暗闇での刑ドロを企画した。

その中でも仕切りたがりのAが提案し、自ら仕掛けをすると言う。

親分肌とは到底言えない彼だったが、「イタズラ」という響きに負けた全員(僕を含め6人)がそれに賛同した。

当日、完全に暗くなる夜20時頃を待って僕らは刑ドロを決行した。

暗い中での刑ドロは難航した。

お互いに相手の顔が見えず、警察かドロボウかの判断がつかないのだ。

「とりあえず、会うなり捕まえられることになるはず。隠れる必要はないし、適当に逃げ回ったら解放(警察の本拠地に踏み込み仲間を逃がすこと)するふりをして捕まっとって」

これがAからの指示だった。

彼は成績も良く、運動もそこそこ出来た。

まさにその状態になって初めて彼の状況推測を侮っていたと思い知った。

下級生達はすぐに終わったことに僕たちを馬鹿にしたが、これからが本番だなどとは言えないのでグッと堪えた。

この隙を突いてAが皆を解放した。

「裏の記念館に段差があるじゃん?」

逃げている間にAは作戦の内容を続けた。

「俺は近所だから知っとるけど、その下藪になっとる。あとは田んぼで、今日確認したら段差に竹の柵みたいなものがあって囲いがしてあったけん、その外から足を掴んですぐ隠れればバレん」

意外と考えているらしいAに感心しながらも、思っていたより子供じみていることに僕はゲンナリした。

だが、下級生に馬鹿にされたこともあり、諦めることはプライドが許さなかった。

あみだで隠れる場所を決め、僕たちはそれぞれの持ち場についた。

僕の担当は墓の真横だったが、家のそばに墓がある身としては怖くもなかった。

僕の持ち場は比較的本拠地から近い位置にあるため来る人数が多く、危うく見つかりそうになったが、なんとか見つからずに済んだ。

Aが「秘密の仕掛けもした」と言うので期待してもいた(それが何なのかはその時明かされていなかった)。

隠れている間、柵の向こう側の木に掴まって様子を伺っていたのだが、ふと手に何か絡みつく感覚があり、ポケットからペンライトを取り出して手を照らした。

手には長い髪が数束絡まっており、途端にゾクリとした。

今にして思えば、掴まっていた場所は下の方なのでどう考えてもおかしいのだが、天然だった僕はこれが仕掛けだと思ってしまった。

結果は大成功だった。

もっとも、藪の枯れ草に引っかかれたことを除けば、だが…。

下級生たちの甲高い悲鳴と、なぜか渇いた破裂音があちこちから聞こえてきた。

そして、事の顛末が明かされる。

「なぁ!大成功だったろ!?」

皆がそれぞれ肯定の意を示すと、

「あのクラッカーボール、数が数だし高かったんだよ」

「え?」

途端に寒気が蘇ってきた。

「他に仕掛けあったの?」

「いや、そこまで気が回らんかった」

ズンと腹に重いものが落ちた気がした。

じゃあ、さっきの髪は…。

この後、僕は沈んだ気持ちを隠し、明るく振る舞った。

だが、その後もここでガラスに映る四肢がバラバラの女や、閉じた鏡の隙間から伸びる土気色の腕を見ることがあった。

それで僕の隠れた霊感が目覚めてしまったのか、他の場所でも色々なモノを見るはめになる。

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