昭和のような町並みの異世界

10df56873e74573d1f9df83efbda1294_l

田舎の高校に通っていた高1の夏休みの時の話をします。

部活が20時に終わり、その後23時くらいまで部室で怖い話をしていた。

さすがに遅くなったから帰るかという事になり、家が近いAといつも通り帰る事に。

しかし、怪談話で怖くなって帰れなくなったJを家まで送って行く事になった。

Jの家は自分の家の反対方向のド田舎なのに。

今思うと何故自分たちが送って行くことになったのか謎。

3人で自転車を走らせていると、空は晴れ渡っているのに道が異様に暗いことに気付いた。

並んで走っている隣の奴の顔も確認できるか判らないくらい。

あと時折、何も無い所でいきなり顔に霧吹きで水をかけられたように、顔がいきなり濡れるという事が何度もあった。

天気雨とかじゃなく局所的に一瞬だけ。

最初は3人で

「こえぇぇ!」

と半分ふざけながらいたので何とか平気だったんだけど、段々空気全体がおかしいことに気付き始めて、とにかく急ぐ事だけを考えていたと思う。

Jの家に着くと、もう午前0時半になっていた。

自転車で30分の道のりなのに…とJは不思議がっていた。

とにかく怖いのと、夜も遅いのでAと一緒に家路を急ぐことに。

来た道を戻っていたはずなのに、いつの間にか全く知らない場所に。

「いつ道を間違えたんだろう」

などと思い、電柱にある住所を見てみるとJの家があるI町の隣の隣のK市に来ていた。

時計は午前0時45分。

A「K市にいるってことは、いつの間にか俺らの家を通り過ぎちゃったみたいだな」

俺「だな。とにかく急ぐか。西にひたすら行けば新幹線の線路にでるはず。そしたらもう少しで家だ」

しかし、なぜか道にあった看板や地図を参考にしながら西を目指しても新幹線の線路なんて無い。

昭和っぽい町並みやシャッターの閉まった商店の前をひたすら走り続けた。

2時間程走ってやっと遠くに線路が確認できた。

線路の近くにある、小さい頃に通い慣れた市民プールも発見できて、Aと一緒に安心していた。

プールの裏は田んぼばかりで、用水路が張り巡らされていた。

用水路を渡る時、いつも使う橋があったからその橋を通ろうとしたのだが、橋が無くなっている。

というか橋に続く道が無くなっていた。プールから一本道なのに…。

仕方なく住宅地を縫うように走り、見知らぬ橋で用水路を渡る事に。

そして橋を渡ろうとした途端、急に息苦しくなり、音も明かりも無くなり、空気が更に重くなり異様な雰囲気になった。

Aを見ると涙目で目をキョロキョロさせながら口をパクパクしている。

多分俺もそうなっていた。

「ここはヤバイ…!」

と感じ急いで橋を引き返した。

橋から離れてやっと呼吸が落ち着いた時は、二人とも冷や汗でびっしょり。

その後はどうやって水路を渡り帰ったかは覚えてない。家に着いたら午前4時になっていた。

後日Aと昼間にプールに行ったついでに橋を念入り探して見たけど、結局見つからなかった。

いつも使う橋も元に戻っていた。あと昭和な町並みや商店はK市やその周りの街には無い事が判った。

一体自分とAはどこを彷徨っていたのか、橋を渡っていたらどうなっていたのかと考えると今も怖い。

Aもその時の話はよく覚えている。

ちなみに自分は方向感覚だけは優れていて、道に迷ったのはこの時以外経験してない。

部活の仲間にAと話したら、「お前が道に迷うなんて珍しい」と笑われた。

関連記事

見えない壁

数年前の話。 当時中学生だった俺は雑誌の懸賞ハガキを出すために駅近くの郵便局に行く最中だった。 俺の住んでる地域は神奈川のほぼ辺境。最寄り駅からまっすぐ出ているような大通り…

夜の海(フリー写真)

夜の闇と黒い海面

かなり昔のことになります。 当時、小学低学年だった弟は、父に連れられて夜釣りに行きました。 切り立つような崖の先端近くに父と並んで座り、暗い海面に釣り糸を垂れていた弟は、…

地下鉄

時空を彷徨う路線

数年前の出来事です。ある日、私は東京の地下鉄に乗りました。どの路線かは明かしませんが、通常は2~3分ごとに駅で停車するものです。 しかし、ある駅を過ぎた後、電車は異様に長く走り…

裏世界

不思議な記憶というか、今でも鮮明に覚えている記憶。 小学5年生の夏休み、家の裏手にある大きなグラウンドで、夏休みの自由研究である「身近にいる昆虫リスト」を作っていた。 する…

廃屋の窓(フリー写真)

半分の家

じいちゃんから聞いた話。 従軍中、幾つか怪談を聞いたそうだ。その中の一つの話で、真偽は不明。 ※ 大陸でのこと。 ある部隊が野営することになった。 宿営地から少し…

お葬式

数年前、深夜の0時頃に、その頃付き合ってたSから電話が掛かってきた。 切羽詰まったような声と口調で、話の内容がいまいち理解出来ない。 外にいるみたいなので、取り敢えず家まで…

犬(フリー素材)

犬の気持ち

俺が生まれる前に親父が体験した話。 親父がまだ若かった頃、家では犬を飼っていた。 散歩は親父の仕事で、毎日決まった時間に決まったルートを通っていたそうだ。 犬は決まっ…

夜の駅(フリー素材)

地図に無い駅

その日、彼は疲れていました。 遅くまで残業をし、電車で帰る途中でした。 既にいつも使っている快速は無く、普通電車で帰るしかありませんでした。 その為いつもよりも電車で…

女性のシルエット(フリー素材)

イトウ

高校から現在にかけて、俺の周りをウロチョロする謎の同級生がいる。 高一の時に言われたのが一番最初。夏休み明け直後の日だったのだが、いきなりクラスの奴に 「イトウって知ってる…

竹下通り

竹下通りの時間の谷間

5年前、当時の彼女と一緒に竹下通りでの買い物を楽しんでいました。 祭日の快晴の日で、若者で賑わう街中を歩いていた時、突然トイレに行きたくなりました。 しかし、店内にトイレ…