山の神社と巫女の幽霊

山

これは5年前の話です。当時の私は浮浪者で、東京の中央公園での縄張り争いに敗れ、各地を転々とした後、近畿地方の山中の神社の廃墟に住むようになりました。

麓へ下り、何でも屋として里の人々の手伝いをして生計を立てていました。しかし、その生活で最も恐ろしかったのは人間そのものでした。いきなり猟銃を向けられたこともあり、大金を口止め料として渡されたことも。また、暴走族に追い回され、足を折られたこともありました。

そんな中で、一軒の農家の方に多大な恩を受けました。その方からは、作物を育てることを勧められ、苗や種を分けていただきました。荒れた境内に農園を作りましたが、ある時、廃墟探検者に除草剤を撒かれ、作物を全滅させられました。

生活を続ける中で、心が澄んできました。人間の悪徳と、優しい人々に憧れるようになりました。そうなると、幽霊を見ても怖くなくなります。

この神社には本当に幽霊が出ました。髪がぼさぼさで白着物に朱袴を着た女性の幽霊です。当初は恐れていましたが、慣れてくると彼女との付き合い方を学びました。静かに挨拶を交わし、社務所の修理を始めました。最初は怖がられましたが、徐々に彼女も穏やかな表情を見せるようになりました。

ある夜、暴走族に再び襲われ、死を覚悟しましたが、危険猟銃持ちのおじさんが駆けつけてくれました。彼も幽霊に脅かされていたそうです。

後日、神社の所有者である元神主の一族の方が訪れ、神社と麓の農地を私に譲ってくれました。私は今、東京で出稼ぎをしていますが、いつか神社を修繕し、再び神社として神主を迎えられるようにするために貯金をしています。

関連記事

薔薇の咲く庭(フリー写真)

母が伝えたかったこと

母が二月に亡くなったんだよね。 でもなかなか俺の夢には出て来てくれないんだ。こんなに逢いたいのに…。 ※ 母が病気になってさ、本当は近くに居てやらないといけないのに、自分で希…

顔半分の笑顔

僕がまだ子供だったとき、ある晩早くに眠りに就いたことがあった。 リビングルームにいる家族の声を聞きながら、僕はベッドの中から廊下の灯りをボンヤリ見つめていたんだ。 すると突…

コツコツ

つい先日の事なんだけど、俺は出張で松江にある某有名チェーンのビジネスホテルに泊まったんだ。 その日は取引先との接待でスナックを3件ハシゴして、へべれけ状態でホテルに入ったんだわ。…

ポン菓子(フリー写真)

ポン菓子

今から十年以上前に体験した不思議な話です。 母が10歳の頃に両親(私の祖父母)は離婚していて、母を含む4人の子供達は父親の元で育ったそうです。 「凄く貧乏だったけど、楽しか…

夕日(フリー写真)

ドウドウ

小学校低学年の頃、友人Kと何回か『ドウドウ』という遊びをした。 どのような遊びかと言うと、夕方17時~18時くらい、家に帰るくらいの時間になると、俺かKのどちらかが 「ドー…

体育館

時代を越えて

俺が小学生だった頃、早朝一番乗りで体育館でシュートの練習をしていたら、いつも体育館のステージの袖に見知らぬハゲのおっさんがいることに気が付いた。 近眼でよく見えないし、その時は先…

雪景色(フリー素材)

もどり雪

一月の終わり、山守りのハルさんは、山の見廻りを終えて山を下っていた。 左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。 ちょっとした吹雪のような、『もどり雪』だ…

神奈川県某駅の駅ビル

小学校入るくらいまでの体験。 神奈川県某駅の駅ビルで、階段やエスカレータなど使わずに、3Fから4Fにワープした。駅との連絡口が3Fで、決まったルートを歩くと4Fに着いてる。 …

山(フリー写真)

山に棲む大伯父

もう100年は前の事。父方の祖母には2歳離れた兄(俺の大伯父)が居た。 その大伯父が山一つ越えた集落に居る親戚の家に、両親に頼まれ届け物をしに行った。 山一つと言っても、子…

切り株(フリー写真)

植物の気持ち

先日、次男坊と二人で、河原に蕗の薹を摘みに行きました。 まだ少し時期が早かった事もあり、思うように収穫が無いまま、結構な距離を歩く羽目になってしまいました。 視線を常に地べ…