友子が二人

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一人で繁華街を歩いていると、ガラス張りのカフェ店内の窓際席に一人でいる友子を見つけた。

友子の携帯に電話して驚かせようとしたが、友子は電話に気付かない。

じっと座り、目を左右にキョロキョロと動かして人の流れを見ている。

窓をノックしようと電話をかけた状態でウィンドウに近付くと、友子が電話に出た。

「今○○にいる。友子を見かけたから電話した」と言うと、友子は「今家でテレビみてる」との事。

喫茶店の中にいる友子を見ると電話なんてしていない。

人違いかと思ったが、喫茶店の友子は私が誕生日にプレゼントしたカバンと手作りのストラップを持っている。服も友子がよく着ているもの。

電話でそれを告げると、『今からその服を着てカバンを持って行くから待ってて!』とはしゃいでいた。

段々と電話の方が身内のイタズラのような気がして、通話したまま喫茶店のウィンドウを軽くノックして手を振ってみた。

喫茶店の友子はにこっと顔をこちらへ向けてきた。やっぱり友子だった。

喫茶店の友子が本物で、電話の友子は偽物なんだと思った。

「イタズラやめて。誰よ?(笑)」

『え? 友子だよ!』

「もういいから(笑)」

『ほんとに家にいるの!!』

電話からの声は友子そのものだった。

混乱していたら喫茶店にいる友子が立ち上がり、こちらを指差し、急に顔を真っ赤にしてかなりの剣幕で怒りだした。

そしてカバンを掴み、出入口に向かってに全力で駆け出した。

その剣幕に私も思わず全速力で逃げた。

後ろから金切り声で、「○子ぉ!!うああ~!○子ぉ!」と聞こえたが、振り返れなかった。

ただの他人のそら似かもしれないけど、そしたら私の名前を知っている事とストラップを持っている事の説明がつかず、未だに謎。

あの勢いのまま半泣きで友子の家まで行くと普通にいました。

偽友子と私はその後も何度か遭遇しています。

ちなみに電話を切らずに逃げたため、「○子ぉ!」という声は彼女に聞こえていました。

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