太いお姉ちゃん

公開日: 心霊ちょっと良い話

体温計(フリー写真)

去年の話なのだが、5歳の娘が急に高熱を出し、慌てて近くの病院へ連れて行った。

そして風邪と診断され、処方された薬を3日間飲ませていたが、症状は一向に良くならず。

『ひょっとして医者の誤診では? 何か別の重い病気かも…』と思い、大学病院まで行ったが、特に悪い所も見つからない。

それなのに下がらない娘の熱。

どうしたものか…と妻と一緒に頭を悩ませていた。

そして5日目の朝、妻が言い難そうに俺にこう言った。

「アンタには言ずらかってんけど、○○がな、怖がってんねん…」

「何を?」

「部屋に怖いオバちゃんがおるって…ベットの横に立ってて怖いって」

「はぁ? 何それ?」

俺は昔からあまり霊現象など信じない性質だったので、妻は黙っていたらしいが…。

俺が仕事に行っている間に娘の看病をしていた妻は、娘に何度かそう言われ困っていたらしい。

しかし、その朝は熱のせいで見える幻覚の類だと思い、妻にもそう言って俺は仕事に行った。

それでもやはり気掛かりで仕事が捗らず、そして5日も苦しんでいる娘を救ってやりたくて、俺は顔見知りの自称霊能者に連絡を取った。

彼はその日の夜に来てくれて、娘の部屋を見るなり

「厄介な霊の気配がする」

と言い出し、やれ盛塩だ、やれ読経だと言い残し帰って行った。

そして、それから2日間。

俺は半信半疑ながらも妻と一緒に言われた事を全てやっていたが、効果は見られず、娘の熱は下がらないまま。

遂に精密検査を兼ねた入院措置を取る事となった。

しかし悪い所は見つからない。

そして、病院に来ても娘は

「怖いオバちゃんがいる」

と言い続け、俺も妻も精神的に参っていた。

病室で情けなくも頭を抱えながら、

『誰か何とかしてくれ…』

と心の中で泣きそうになりながら叫ぶ。

このまま娘は死んでしまうのかと不安で一杯だった。

しかしその2日後、娘の熱が嘘のように下がった。

そして娘は言った。

「昨日、太いお姉ちゃんが来て、オバちゃん連れて行った」

俺と妻は疑問に思いながらも娘の話をよく聞くと…。

何でも昨日の夕方頃、急に太った女が病室に現れ、横に居た怖いオバサンにボソボソ呟くと、半ば強引に連れて行ったらしい。

そしてすぐにもう一度現れて、

「もう大丈夫やで。辛かったな」

と娘の頬を撫で、病室を出て行った…という事だった。

それを聞いて、妻は

「どなたか分かりませんが、ありがとう」

と呟き、手を合わせ涙を流していた。

俺にはその太った女に心当たりがあった。

それは10年前、俺が19歳の時、23歳にして交通事故で亡くなった姉。

太った女と聞いて、もしかしたらと思い、娘に姉の特徴を言ってみたところ、大凡のところ姉に間違いなし。

物凄く気が強かった人だったため『半ば強引に連れて行った』というのも、何だか解る気がした。

俺はその後すぐに姉の眠る墓へ行き、姉に礼を言い、そして霊の存在を信じるようになった。

「しね!」が口癖の姉、知らない男と殴り合いの喧嘩をする姉、老人と動物以外には容赦ない姉、そして子供が死ぬほど嫌いな姉…。

そんな恐ろしい姉でも、姪は可愛かったんだな…。

姉ちゃん、マジでありがとう。

娘を苦しめていたオバサンはその後、姉にどうされたのだろうか…(((;゚Д゚)))

関連記事

不思議なお姉さん

小学2年生のころの話。小さいときに母ちゃんが死んで、親父に育てられてた。父子家庭が原因か内向的な性格で、小学校でもひどいいじめにあってた。1年生のころからずっといじめ続…

タヌキの神様

俺の姉貴は運が良い人間だ。宝くじを買えば、ほぼ当たる。当たると言っても、3億円なんて夢のような当たり方ではないのが残念なところだ。大抵 3,000円が当たる。何回当たっ…

古い箪笥(フリー写真)

鈴の音

小学生の頃、大好きだったばあちゃんが死んだ。不思議と涙は出なかったのだけど、ばあちゃんが居ない部屋は何故か妙に広く感じ、静かだった。火葬が済んだ後、俺は変な気配を感じる…

夜の海(フリー素材)

ばあちゃんのまじない

部活の合宿で、他の学校の奴も相部屋で寝ていた時の事。ある奴が急に魘され、布団の上でのた打ち回り始めた。起こそうとしても全然起きない。そのまま魘され続ける。起きている奴等…

携帯電話を持つ女性(フリー写真)

家族からの電話

これはある一人暮らしの女の子が、うつ病になった時に体験した不思議な話です。その女の子は人間関係が原因で仕事を辞め、殆ど引き篭もり状態になり、毎日死にたいと思うようになっていたそ…

住宅(フリー写真)

苦労かけるな

夜に2階の自室で、一人で本を読んでいた時のこと。実家は建てた場所が悪かったのか、ラップ現象が絶えなかった。自分は単に家鳴りだと思っていたのだが、その日はポスターから音が…

戦闘機(フリー写真)

白いマフラー

俺のじいちゃんは昔、パイロットだった。若い頃のじいちゃんの写真は、白のマフラーを巻いて格好つけていて、でも本当に格好良かった。俺もじいちゃんみたいな戦闘機乗りになりた…

手を繋ぐ親子(フリー写真)

おとうさん、こっち!

お隣に、両者とも全盲のご夫婦が住んでいらっしゃいます。この話は、ご主人から茶飲み話に伺ったものです。 ※ ご主人は16歳の時に、自転車事故で失明されたそうです。当然…

ひよこ(フリー写真)

変り種の相棒

12年前、近所の社の祭でヒヨコを釣ったんだわ。体が歪んでいて、少し変わった形をしていた。それでも懸命に俺の後を付いて来る姿がいじらしくて、散々甘やかし、可愛がって育てた。 …

空(フリー写真)

爺さんの教え

学生の時、爺さんが末期癌でこの世を去った。悲しかった。ただ、葬式では泣かなかった。泣けなかった。「人前で泣くな」が爺さんの教えだったから。 ※ 数日後、母か…