優しさを大切に

道①

俺が小学校1年生ぐらいの時の話。

その頃、俺はおとなしくて気の弱い方で、遊ぶのも大体おとなしい気の合う子達とばっかり遊んでいた。

でも何がきっかけだか忘れたけど、ある時に番長と言うか気の強い子供ばっかりいるグループとも遊ぶようになった。

それである日、工事用の穴か農業用の穴かよく分からないけど、地面に直径10メートル深さも3メートルぐらいあるような円錐形の穴がある所があって、子供だったらなんとか這いつくばって登れるような傾斜だったので、そこを上がったり下りたりして泥だらけになりながら遊んでいた。

そしたら、どこから見つけてきたのか、グループの一人が小さい捨て犬を見つけてきて穴の中に投げ込んだ。

子犬はもちろん上がってこようとするんだけど、悪ガキ共は笑いながら土の塊を投げたり、上がりきりそうになるとまた下まで落としたりして喜んでいた。

俺も最初は我慢して見てたけど、俺はそういうのが耐えられない性格なので、気付いたら無我夢中で穴の中に下りて子犬を庇った。

そしたら、解ると思うけど、俺に対して罵声と共に土の塊が大量に投げつけられた。

でも、俺も子犬を抱えたまま泣きながら耐え続けてたら、いつの間にか悪ガキ共はどこかへ行った。

泥だらけになりながら子犬と一緒に穴から這い上がったら、目の前に足がある。

そのまま視線を上に上げていくと、修道院のシスターみたいな格好をした女の人が佇んでいて、自分に一言「その優しさを大切にして下さい」と言われたまでは覚えてるんだけど、その後の記憶が全くない。

もちろんだけど、その辺は殆ど畑とまばらに農家があるばかりで修道院のかけらもないようなところ。

関連記事

ヒサルキで思い出した体験談

あれは私が小学校4年生くらいの頃だった。 私が通っていた小学校は全校生徒40人弱と過疎化が進んでいる田舎の学校で、とにかく周りは山や段々畑ばかりで、コンビニなんて学校から10キロ…

繋ぎ目

中学生の頃の夏の話。 そろそろ夏休みという時期の朝、食事を終えてやっとこ登校しようと、玄関に向かったんだ。 スニーカーのつま先を土間でとんとんと調整しながら引き戸の玄関をガ…

ダム

迷い込んだ農家

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話。 「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら教えてくれた。 俺が聞き伝えでこ…

階段(フリー写真)

ソマコ

学生の時に体験した話。 授業後にサークル仲間4人とクラブハウスでダベっていたのだが、夏だったせいかいつの間にか怪談話になっていた。 ただどれもこれも有り触れた持ちネタばかり…

柿の木(フリー写真)

招かれざる客

いきなりだが、俺には全く霊感が無い。 その俺が先日仕事で、地元では結構有名らしい幽霊屋敷へ行くことになった。 俺はその地域には疎いので全く知らなかったのだが、 『以前…

公衆電話

公衆電話が呼ぶ

突然だが、僕は電話が苦手だ。 それは電話が面倒だとか、メールの方が楽だとかそういうことではない。 電話が掛かってくる度にギュウッと心臓が掴まれたようになる。 ※ とある…

抽象画(フリー素材)

同じ夢を見る

小学校3年生の頃、夢の中でこれは夢だと気が付いた。 何度か経験していたので、自分の場合は首に力を入れるイメージをすると夢から覚められると知っていた。 しかしその時は何となく…

木造校舎

青い手首

ネタではありません。実際の体験談です。 世田谷区立某小学校での出来事。 ※ 入学して1年間は、戦前からある古い木造校舎で過ごしました。 2年生になった頃に木造校舎の建て…

地下のまる穴(長編)

これは17年前、高校3年の時の冬の出来事です。 あまりに多くの記憶が失われている中で、この17年間、僅かに残った記憶を頼りに残し続けてきたメモを読みながら書いたので、細かい部分や…

桜の木の神様

今は暑いからご無沙汰しているけど、土日になるとよく近所の公園に行く。 住宅地のど真ん中にある、鉄棒とブランコと砂場しかない小さな公園。 子供が遊んでいることは滅多にない。と…