優しさを大切に

道①

俺が小学校1年生ぐらいの時の話。

その頃、俺はおとなしくて気の弱い方で、遊ぶのも大体おとなしい気の合う子達とばっかり遊んでいた。

でも何がきっかけだか忘れたけど、ある時に番長と言うか気の強い子供ばっかりいるグループとも遊ぶようになった。

それである日、工事用の穴か農業用の穴かよく分からないけど、地面に直径10メートル深さも3メートルぐらいあるような円錐形の穴がある所があって、子供だったらなんとか這いつくばって登れるような傾斜だったので、そこを上がったり下りたりして泥だらけになりながら遊んでいた。

そしたら、どこから見つけてきたのか、グループの一人が小さい捨て犬を見つけてきて穴の中に投げ込んだ。

子犬はもちろん上がってこようとするんだけど、悪ガキ共は笑いながら土の塊を投げたり、上がりきりそうになるとまた下まで落としたりして喜んでいた。

俺も最初は我慢して見てたけど、俺はそういうのが耐えられない性格なので、気付いたら無我夢中で穴の中に下りて子犬を庇った。

そしたら、解ると思うけど、俺に対して罵声と共に土の塊が大量に投げつけられた。

でも、俺も子犬を抱えたまま泣きながら耐え続けてたら、いつの間にか悪ガキ共はどこかへ行った。

泥だらけになりながら子犬と一緒に穴から這い上がったら、目の前に足がある。

そのまま視線を上に上げていくと、修道院のシスターみたいな格好をした女の人が佇んでいて、自分に一言「その優しさを大切にして下さい」と言われたまでは覚えてるんだけど、その後の記憶が全くない。

もちろんだけど、その辺は殆ど畑とまばらに農家があるばかりで修道院のかけらもないようなところ。

関連記事

義理堅い稲荷様(宮大工9)

晩秋の頃。 山奥の村の畑の畦に建つ社の建替えを請け負った。 親方は他の大きな現場で忙しく、他の弟子も親方の手伝いで手が離せない。 結局、俺はその仕事を一人で行うように…

付喪神

私の家は昔、質屋だった。 と言っても爺ちゃんが17歳の頃までだから、私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞くことができた。 ※ その日の喜一(爺ちゃん)は店番をしてい…

新聞(フリー素材)

リアル恐怖新聞

私は46歳の鎌倉富士夫似の男性です。菓子工場で副工場長をしております。 趣味はドライブです。好きなタイプは長谷川京子ですが、妻は天地真理似(現在の)です まあ、それは良いと…

夜の繁華街

赤い服の男

かつて私が所属していたサークルの公演が終わったある夜、私たちは近くの居酒屋で打ち上げをしていました。 公演の開始時間が遅かったため、打ち上げが終わる頃には時計の針は既に午前一時…

鮒おじさん

小学校4年生の夏休みの事で、今でもよく覚えている。 川と古墳の堀を繋いでいる細い用水路があって、そこで一人で鮒釣りをしてたんだ。 15時頃から始めたんだけど、いつになく沢山…

山神様

これは、俺の曽祖父が体験した話です。大正時代の話ですので大分昔ですね。 曾じいちゃんを、仮に『正夫』としておきますね。 正夫は狩りが趣味だったそうで、暇さえあれば良く山狩り…

男の子のシルエット(フリー素材)

消えて行く同級生

小学校から仲の良かったAとBと自分。 高校からは学校が分かれたのだが、お互い実家は近所だったので偶に町中で会ったりしていた。 ※ しかし私が県外の専門学校へ入学し、Bが市内の…

集合住宅(フリー素材)

知らない部屋

私が小学校に上がる前の話。 当時、私は同じ外観の小さな棟が幾つも立ち並ぶ集合団地に住んでいました。 ※ ある日、遊び疲れて家に帰ろうと「ただいまー」と言いながら自分の部屋の戸…

お寺

綺麗な飾りの下

父が友人の家に遊びに行くと言うので、私は一緒に付いて行きました。 私は小学二年生でした。父の友人というのはお寺の住職さんでした。 父達が話している間、退屈になった私は、人…

林(フリー写真)

お姉ちゃんと鬼ごっこ

神隠しみたいなものに遭ったことがある。小学一年生の夏休みのことだ。 実家はいわゆる過疎地にあり、地域には同い年の子が数人しか居なかった。 その日は遊べる友達が居なかったので…