瀬泊まり

20090706213201c27

小学校の頃、キャンプで夜の肝試しの前に先生がしてくれた怪談。

先生は釣りが好きで、土日などよく暗い内に瀬渡しの船に乗り、瀬に降り立って明るくなり始める早朝から釣りをしていたそうな。

しかし、よく釣れそうな瀬にはいつも先客がおり、船の上からその瀬にライトの明かりが見えていて、「あそこにもいる。あっちにもいる」と何回来てもなかなか良い瀬には降りられなかったそうだ。

そこで、一度瀬泊まりをする事にし、前夜の内に釣れる瀬に案内してもらい、やはり釣り好きな同僚の先生と二人で一晩そこに泊まる事にした。

夜の海、しかも瀬の上。聞こえるのはすぐそこの岩に波が打ち付ける音のみ。

非常に心細い中、横になって夜明けを待っていたそうだ。

すると「バシャ」っと海面を叩く大きな音が聞こえてきた。

その時は大きな魚が跳ねただけだろうと特に気にしなかったが、やがて「バシャバシャバシャバシャ」と激しい音に変わった。

先生は何事かと音のする方向にライトを照らしてみた。

そこには『お前たち(俺は当時小6)』くらいの男の子が10メートルほど先の海面で、後ろ向きになって手をバタつかせて暴れていたらしい。

「おい、何やってんだ!?」

気付いたら先生はそう叫んでいたそうな。

その声と共に男の子は暴れるのをやめ、ゆっくりと振り返った。

『それまでもビビってたが、顔を見た瞬間血の気が引いた』と先生の談。

その顔は、目はくぼみの様に真っ黒で、所々肉は削げ落ち、アゴが外れているんじゃないかと思えるくらいに大きく口を開いていたそうだ。

「あ゙ああぁぁぁぁぁ、あ゙あああぁぁぁぁ」

男の子は絶叫のような声を上げ、先生の方に海面から手をバタつかせながらゆっくり近付いて来たそうだ。ここは瀬、上って来られたら逃げ場が無い。

先生は隣で爆睡中の同僚を起こす。

「○○先生、起きてください!お化けです!!!」

「ん~。どうしたんですか? まだ真っ暗ですよ?」

「あそこ!あそこにお化けが!!」

その方向にライトを照らした時には、もう男の子は消えていたそうだ。

その後、同僚に説明し、同僚も半信半疑のまま何とか納得してもらい、瀬渡しの船に電話して夜明けと共に迎えに来てもらった。

『水の音がするたび、また出るんじゃないかって生きた心地がしなかった』

先生はそんな事を言っていた。

それで迎えの船が来て、船に乗り込む時に体験した事を船頭に話してみたそうだ。

「やっぱりあいつか、また出たのか」

船頭は溜息交じりにそう言ったそうだ。

何でも十年くらい前から先生の見た霊の目撃談が出てくるようになったらしく、こんな噂が広がると仕事に支障が出るので黙っていてくれと口止めされたらしい。

『船上でさ、最後に俺達の居た瀬を見たんだ。そしたらさ、アイツが立ってたよ。

ちょうど俺達が寝ていた辺りの所に立って、俺らの船を見てたんだ』

その晩の海岸沿いの肝試しは不参加者が続出した。

関連記事

機関車(フリー写真)

電車の幽霊

埼玉の三郷に操車場跡という所があります。地図にも載っています。心霊スポットとしては途中のお化けトンネル(化けトン)が有名ですが、体験したのはその近くの建物です。操車場は…

日本人形(フリー素材)

闇バイト

以前のバイト現場に、音楽の専門学校に通っている同僚のYさんが居ました。男性の年上の方で、生活費を稼ぐためにバイトを掛け持ちしていたそうです。 ※ ある日、Yさんが通っている…

海(フリー写真)

海に棲む霊

これは私の友人に起きた実際の体験談です。お盆には海に入ってはいけないと、古くから伝えられていますよね。それは、イラ(クラゲ)が出てしまうからという物理的な事だけではない…

アパート(フリー素材)

事故物件アパートの恐怖体験

これは私の友人Aが大学に通うため、世田谷区のアパートに住んでいた時の話です。そのアパートはいわゆる事故物件で、手首を切っての自殺があったらしいのですが、幽霊なんて信じない彼は家…

死亡事故の多い交差点

実体験を書きます。小学2年生の頃、交差点で車に撥ねられました。場所は小学校の通学路で、小学生の死亡事故が何度かあった交差点です。私は歩行者信号が赤だったので下を…

ホテル

生け贄

この間、親父が物置の整理をしていて、夕方居間にガラクタの山を積み上げて昔を懐かしんでいた。ガラクタの中には古着やレコードや陶人形などがあった。ふと一枚の写真が目についた…

案山子の神様

田舎住まいなので、通学時にはいつも田んぼの脇道を通っていた。その日も家に帰るため、いつものように田んぼの脇道を、カエルの鳴声を聞きながら歩いていた。すると田んぼの中に、…

呪われた土地

俺の親友の話をしたいと思う。小4の頃にそいつ(以下H)の親が二階建ての大きな家を建てた。建設業を営むHの父親が建てた立派な外観のその家は、当時団地住まいだった俺にとって…

親子のシルエット(フリー素材)

お母さんが居る

俺には年の離れた弟が居て、弟がまだ3歳の時に母親が亡くなった。それからは父親と自分と弟と祖母の四人で一軒屋に暮らしていたのだけれど、二回忌を迎えた頃に弟が「家の中にお母…

ここにいたあ

13日に田舎の墓参りに行ってきた。毎年恒例で、俺は東京で一人暮らしして初めての里帰りだった寺には一族郎党が集まり、仲の良い従兄弟のDも来ていた。お経も終わり墓参りも終わ…