山の上の廃病院

公開日: 心霊体験 | 本当にあった怖い話

1210346450_100813

高校生の時の実話。

地元の中学校時代の友達2人と、近くの山に肝試しをやりに行こうという話になった。

その山はそれほど高くなく、頂上が広場になっている。そばに病院が建っており、現在は使われていないその病院の旧館跡が廃墟の状態で残っている。

その病院の旧館を探索してから、山を登る道に出て頂上で缶ビールで乾杯し、反対側のふもとに下りる道から山を下る、というプランを深夜1時過ぎに3人で考え、まず病院裏の旧館跡に進入。

本当に荒れ放題で、マットレスのない鉄パイプのベット、倒れたイス、医療機具の入っていたと思われるガラス戸棚、部屋の隅に丸めて放置してあるシーツ、積み重なった段ボールなどが、割れっぱなしの窓からの月明かりに照らされている。

その時、異常な音がするとか、何か奇妙なものが見えたということはないのだが、俺の気分がなんかおかしい。

肝試しをやっているのだから恐いという気持ちはあるのだが、恐怖とは違った何か、体の中から寒気がして胸が押さえつけられるような、風邪や高熱の時に感じる具体的な悪寒がするようになってきた。

臆病だと馬鹿にされるのが嫌だったので友人にも言い出せず、そのまま病院から出ると山への道を進んだ。

狭い一本道である山道をダンゴ状に3人並んで進んでいった。俺は最後尾、月が明るい夜だったので、道も周りの木々もよく見ることができる。

しばらく進んでいくうちに、気分の悪さが徐々に増していく。そしてもう一つ奇妙なことが起こり始めた。

道の両側に設置された木の策の向こうから、何やらボソボソって感じで話し声のようなものが聞こえてくる。誰か人がいるのかと思ったがそれはない。

木の策の向こうは腰の高さくらいの植物が群生していて、策から2メートルくらいで崖になっている。そんなところに人がいるはずもない。

その声は明らかに人の声に聞こえ、何事かをボソボソと言っているようなのだが、言葉がはっきりと聞き取れない。左右どっち側から聞こえてくるのかもよく分からない。上からだと言われればそうだったかもしれない。

しかもその声は、俺たちが道を進んで行っても、ずっとついてくるように依然として聞こえつづける。さらに奇妙なことに、俺がその声のことを話そうとしても声が出てこない。

金縛りに遭った時のように力を込めても体全体が固まった感じで、声が出ない感じとは違い、喉に喋ろうという意思が伝わらない。足はしっかりと歩き続けているのだが、口がなぜか開かない。

自分自身もなぜかどうしても話さなきゃという意思が湧いてこないのだ。気づいてみれば、他の2人も山道に入ってからはずっと無口。ひょっとして前の2人にもこの声は聞こえているのか。

そしてついに頂上の広場に出た。その頃にはいつのまにかボソボソという声は聞こえなくなったいた。頂上広場でようやく口を開くことが出来た。

本来は真っ先に、ずっと聞こえていた声のことが話として出てくるはずなのだが、その時はなぜか「…頂上かな」「…ああ」「…だな」っていうような会話にしかならない。

3人とも殆ど黙り込み、沈黙がつづく。月明かりで周囲もお互いの顔も良く見ることができる。

特に異常なことは見られないが、感じる悪寒は相変わらずだ。

そして一人が、ようやく「…じゃあビール飲むか」と言い、俺ともう一人の友人は 「…うん」とだけ答える。

その時、いきなり「バンッ」という大きな爆発音みたいな音が近くから聞こえたその瞬間、急に体が軽くなった。

誰からともなく俺達は山の反対側に下だる道を一目散で走り下って行った。

みんな一言の叫び声もあげない。夜道の細い山道を走って下るのは危険なのだが、その時は不思議と誰かが転んだりすることもなく、10分くらいでふもとに辿り着いた。

3人とも息を切らしていたが、ようやく口を開くことが自由になった。体の気分の悪さもいつのまにか治っている。

みんなの話では、山道での声、病院からの悪寒とも俺以外の2人ともが感じていたとのこと。

口を開くことも、奇妙なことを告げるべく言葉もなぜか出てこなかったというのも一緒だった。

そして頂上広場で聞こえた音は一体何だったのかという話になった時、俺は友人が背中に背負ったリュックからなにやらポタポタと液体が垂れていることに気づいた。

そのことを告げて急いでリュックを開けると、なんと中では頂上で飲むはずだった缶ビールが、缶の中から何かが破裂したかのように真ん中がバックリと裂けていた。

更に俺のカバンの中のビール、もう一人の友人のビールも同じように避けて、カバンの中がグショグショに濡れていた。恐らく頂上で聞いた音はこの破裂音だったのだろう。

後に高校の教師にも話したが、高山地区ならまったくありえなくもないが、普通の町にあるような山でそんな風に缶が破裂するなんて絶対にありえないとのこと。

もちろん恐くてあれ以来、その病院にも山にも近づいていない。

関連記事

古いアパート

天井裏の秘密

昔、私の住んでいたアパートでの話。 ある夜、酔っ払って家に帰ると、狭い玄関に女性のサンダルが置かれていた。 なぜここに?私には思い出せない。 サンダルを手にとってよ…

硫黄島の星条旗(フリー写真)

硫黄島の心霊体験

私が二年前、自衛隊基地の施設建設の為、硫黄島へ半年赴いた時の話。 数ヶ月も島に閉じ込められると、自然と顔見知りの隊員さんが出来る。 色々と話すうちに、よく硫黄島にまつわる…

古民家

不吉な予兆

熊本県に根を持つ我が母の実家について語ります。この家は、長年母の姉が住む家でしたが、彼女が先日訪れた際の出来事があります。 我々が家族で集まり、映画『ターミネーター2』の壮絶な…

フィルムノイズ(フリー素材)

白い影の正体

私は親族に、主に妻の家族に隠し事をしている。 なぜ私だけが知り、なぜあの時、お義父さんが私だけに話したのか。 それは10年以上経過した現在でも判らない。 ※ 妻の母親、…

窓(フリー写真)

霊道

私は山奥の田舎に住んでいるのですが、子供の頃に体験した話をしたいと思います。 小学生も低学年の頃は親と一緒に寝るのが当たり前ですが、高学年になってくると、やはり自分の部屋が欲しく…

クレーマーの家系

うちの店によく来るクレーマーの家系が洒落怖だった。 ・学生時代のある日、父親が何の前触れもなく発狂し母親を刺し殺す ・その後、父親はムショ入り前に「自分の車で」頭を轢き潰し…

小学校の廊下(フリー写真)

パソコン室の幽霊

これは俺が当時通っていた小学校の話だ。 俺はその日、パソコン室に筆箱を忘れた。それに気付いたのは六時間目が始まってから(その時間は隣の女子に鉛筆を貸してもらっていた)。 仕…

海(フリー写真)

海に棲む霊

これは私の友人に起きた実際の体験談です。 お盆には海に入ってはいけないと、古くから伝えられていますよね。 それは、イラ(クラゲ)が出てしまうからという物理的な事だけではない…

山の小道

廃道の先に

20年程前に俺が体験した、今だに信じられない話を書こうと思います。 と言うのも、俺の周りには超常現象的なものに詳しい人物が全くいないので、今から書く実際に体験した出来事を一体どう…

子供にしか見えない

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。 友人の仕事の関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に4歳になる息子と毎日遊んであげてい…