赤い服の男

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

夜の繁華街

かつて私が所属していたサークルの公演が終わったある夜、私たちは近くの居酒屋で打ち上げをしていました。

公演の開始時間が遅かったため、打ち上げが終わる頃には時計の針は既に午前一時を回っていました。

店の外に出ると、酔っ払った人々が楽しそうにふざけ合っていました。

しかし、特に目を引いたのは、道路の真ん中でプロレスのような遊びをしている二人の男たちでした。

車の通りは少なく、そのため彼らは思いっきり楽しんでいるように見えました。

特に印象的だったのは、真っ赤な服を着た男で、彼は相手の男を繰り返し引き寄せ、体を密着させて遊んでいるように見えました。

その時、遠くから車が接近してくる音が聞こえました。

車は急速に二人に近づき、大きなクラクションを鳴らしながら進行してきました。

しかし、遊びに夢中の二人は全く気にせず、ただ絡み合うだけでした。

道端にいた、彼らの仲間らしき人々が大声で危険を知らせるが、二人は全く反応しない。

車は止まる気配も見せず、ひたすら直進してきました。

突如、一人の男が飛び出して、遊んでいた二人に体当たりをしました。

三人は一塊のように転がり、僅かに車を避けることができました。

その車は一度も速度を落とすことなく、そのまま走り去って行きました。

ほっとした私たちは、遊んでいた男たちの方に目を向けました。

男たちの一人が叱責されていましたが、真っ赤な服の男はどこにも見当たりませんでした。

「何を考えているんだ!聞こえてなかったのか?」

「いや、聞こえていたけど、足が絡まって動けなくなったんだ」と男は答えました。

しかし赤い服の男は、その場にはいませんでした。

関連記事

女の誘い(宮大工8)

お伊勢参りの翌年、梅が開き始める頃。 山の奥にあるお稲荷様の神主さんから、お社の修繕依頼が入った。 そう、弟弟子の一人が憑かれたあのお稲荷様の社だ。 親方に呼ばれ、 …

バンザイ

何年か前、仕事の関係でマレー方面へ行った時の話だ。 その日、仕事も一段落したので近くにある大きな公園で一休みをしていた。 公園と言っても遊具は無く、ただ異常に広い原っぱが広…

瀬戸内海

送り船

二年前の夏休みの話。 友達の田舎が四国のど田舎なんだけど、部活のメンバー四人で旅行がてら泊めてもらうことになった。 瀬戸内海に面する岬の先端にある家で、当然家の真横はもう、…

田舎の古民家(フリー写真)

4歳年下の妹

私が中学生の時のことです。 夏休みの終わり頃、白い服を着た女の子が頻繁に家の中に現れるようになったのです。 それも昼夜問わず、私が一人の時にばかり現れるのです。 怖…

霧の立ち込める山(フリー写真)

鷹ノ巣山の霧

大学2年の6月に不思議な体験をしました。 当時、私は大学の野生生物研究会に入っていました。 研究会のフィールドは奥多摩の鷹ノ巣山で、山頂付近の避難小屋を拠点にデータの収集を…

山道

途切れさせてはいけない

俺の嫁が学生の頃の話。 オカルト研究サークルに入っていた嫁の友達K子が、心霊スポットについての噂を仕入れて来た。 東北地方某県の山中に、周囲を注連縄で囲われている廃神社があ…

夜の峠(フリー写真)

標識

9年前の12月23日に、東京から沼津までバイクで出掛けた。 夜の帰り道、1号から熱海方面に適当に下りようとする。 夜中の2時頃に前のブルーバードが曲がった南方向に行く細い…

インターホン

俺が5才の頃の出来事。 実家が田舎で鍵をかける習慣がないので、玄関に入って「○○さーん!」と呼ぶのが来客の常識なんだが、インターホン鳴らしまくって「どうぞー」って言っても入ってこ…

三回転

私の体験です。 まだ私が3歳ぐらいの頃、父と2人で遊園地に行ったときです。 父と乗り物にのるために順番待ちをしてた時、私は退屈からかその場で目をつぶったまま三回転ほどくるく…

樹木(フリー写真)

根付

これは私が小学3年生の時に体験した話です。 当時の私の家族構成は、母方の祖父母、父母、姉、でした。 祖父の生家を建て直す事になり、壊す前に家族全員でご挨拶に伺いに行きました…