深夜のコンビニ

公開日: 心霊体験 | 怖い話

a0016960_121553

この話は、ある男がコンビニで深夜のアルバイトをしていた頃に起きた体験談である。

そのコンビニは、深夜になるとほとんど客が来なくなる。

俺は共にバイトをしていた大学の先輩と、バックルームでのんびり過ごしていた。

ある日のこと、いつもと同じように暇な深夜で、仕事といえばたまにモニターをチェックするくらい。

俺はバックルームでお菓子を食べながら先輩とおしゃべりしていた。

モニターは画面が4分割されていて、レジ2箇所、食料品棚、本棚を映している。

ふとモニターを見ると、本棚の前に女性が立っていた。腰まで髪が伸びており、異様な雰囲気がした。

「いつ入ったんだろう、チャイム鳴らなかったよな」

と先輩は首をかしげたが、以前にもチャイムが鳴らなかったことがあるので、特に深く考えず俺らはまたのんびり過ごした。

15分ほど時間が過ぎたとき、どうも様子がおかしいことに気づいた。その女性は全く動いていないのである。

本を読んでいるのかと思ったが、手に本を持っていない。ただひたすら、じっと本棚を見つめているだけだった。

「こいつ、万引きするのかもしれないぞ」

モニターをじっと見ていた先輩が言った。

俺も同じ事を考えていたので、思わず頷いた。

万引き犯なら2人で捕まえよう。そう決意して挟み撃ちをしようと考え、バックルームを出た。

先輩はレジ側から、俺はバックルームへの出入り口から本棚へ向かった。

いざ本棚へ到着してみると、俺らは驚きのあまり顔を見合わせた。どこにも女性の姿は見当たらなかったのだ。

すると、トイレの方から水を流す音が聞こえてきた。

何だ、トイレに入っていたのか。何だかホッとして、とりあえずバックルームへ戻った。

しかし、モニターを見た途端に思わず目を疑った。そこには、先ほどと全く同じ立ち位置で、本棚を見つめている女性が映っていたのだ。

トイレからすぐに出たとしても、早過ぎる。

しかも、さっきと全く同じ立ち位置ってどう考えてもおかしい。

モニターが故障しているのか?

俺らは顔を見合わせ、もう一度バックルームから挟み撃ちしようと本棚へと足を急いだ。

冷や汗がにじむのを感じた。そこにはまた誰もいないのである。

仕方なくバックルームへと戻り、無言で真っ先にモニターを確認した。

「大丈夫、いないよ。たぶん帰ったのかも」

先輩が言った通り、モニターから女性の姿が消えていた。

一瞬ホッとして、再度モニターを確認しようとして先輩が顔を乗り出したその時…。

「待て、動くな」

先輩が突然、押し殺した声を出した。俺らはモニターを覗き込んだ姿のまま、固まった。

「絶対に振り向くなよ」

先輩がまた押し殺した声を出した。俺ははじめ不思議に思ったが、目の前にあるモニターをじっと見たとき、先輩の言葉の意味を理解した。

画面が反射して、自分の顔と先輩の顔が映っている。

しかし、その真ん中には…。

例の女性の顔が覗き込んでいたのだ。

悲鳴をこらえて、俺らは身動きできずにいた。

この上ない恐怖を感じながら、じっと耐えること数分、

「…………」

その女が何か呟き、すっと離れた。

どうにか気持ちを落ち着けて、ゆっくりと振り向いた。そこに女の姿はない。

どくどく脈打つ心臓を押さえ、モニターから離れた。

「俺たち、見ちゃったなぁ……」

先輩は感慨深げに呟いた。

俺は「そうですね」と言いながら、再び心臓が止まりそうになった。

先輩も俺の様子に気づいてモニターの方へ向き直った。

画面の中には、さっきの女がいた。

しかも、今度は大口を開けてカメラの方を向いて笑っていたのだ。

関連記事

キャンプ(フリー写真)

百人浜に現れた男

北海道の百人浜(襟裳岬近くの百人浜キャンプ場)で聞いた話。 一昨年に北海道へ行った際、途中一緒になった京都のセロー乗りの方に、今夜は百人浜へ泊まろうと思っている事を話すと、彼は真…

動物霊

動物霊をご存知だろうか。 その名の通り動物の霊なのだが、民間伝承でもよく知られているものは狐狸の類であろう。 これらに限らず、特に畜産や水産に関わる動物への信仰は強く、墓や…

蔵(フリー写真)

漬物石

去年の7月のことだ。 俺の祖父と祖母は老人ホームで既に他界していて、実家を管理する人がいなかったから、荒れ放題になってしまっていた。 本来ならば、相続の関係で俺の母親の姉(…

ゆかりちゃん

ゆかりちゃんという女の子がいた。ゆかりちゃんは、お父さん、お母さんと3人で幸せに暮らしていた。 しかし、ゆかりちゃんが小学校5年生の時に、お父さんが事故で亡くなってしまった。 …

廃墟

廃屋の歯の謎

高校生の頃の話です。実家で犬を飼っていました。弟が拾ってきた雑種犬です。 その犬を2年ほど飼っていると、家族の一員のように感じるようになり、私も時々散歩に連れていました。 …

車に乗った白い霊

私が学生の時に、実際に体験した話です。 その当時付き合っていたある女友達は、ちょっと不思議な人でした。 弟さんが亡くなっているんですが、彼女の家に遊びに行くと、どこからかマ…

厨房(フリーイラスト)

後天性の霊感

大学時代に横浜の◯内駅前のファミレスで、夜勤調理のバイトをしていました。 一緒に働いているバイトに二名、いわゆる見える人が居ました。 その二人(AとBにします)曰く、そのフ…

『さかな』と『みぎ』

その日、友達と近所の公園で待ち合わせをしていた。CDを何枚か借りる約束だった。 季節は今くらいの冬の時期。夕方16時過ぎで、もう薄暗くなりかけだったのを覚えている。 約束の…

折詰め

近所の中華屋でラーメンを食ったんだが、金を払おうとしたら店主がいらないと言うんだ。 「今日でお店終わり。あなたが最後のお客さん。ひいきにしてくれてありがとう。これ、おみやげ」と、…

エリーゼのために

研修医時代、しかも働き始めの4月です。 おりしも世間はお花見・新歓シーズン真っただ中。浮かれすぎてべろんべろんになって、救急車でご来院いただく酔っ払いで、深夜も大忙しでした。 …