ため池の底に沈んだ団地
山あいの古い団地は、埋め立てられたため池の底に建っていた。深夜二時、誰も乗せず最上階へ昇る無人のエレベーター。雨上がりの晩、住人が一人また一人と姿を消す——設備…
山あいの古い団地は、埋め立てられたため池の底に建っていた。深夜二時、誰も乗せず最上階へ昇る無人のエレベーター。雨上がりの晩、住人が一人また一人と姿を消す——設備…
家の裏手の松林の奥に、朝顔のプランターが並んだ平屋がありました。行くたびに、数がひとつずつ増えていきます。六つになった日、私は生ぬるいコップを手渡されました。二…
岐阜の古いトンネルへ、五人が一台の軽自動車で向かいました。抜けたのは三十秒後です。後部座席は三人だったはずが、二人になっていました。坑口の祠の台座にびっしりと並…
山あいの村で祟りの噂が立ち、寄り合いで生贄という言葉が出ました。その数日後、庄屋の娘が布団に温もりを残したまま消えます。雨戸は閉まり、山にしかない木の葉が一枚だ…
田んぼの真ん中にある水神様の祠は、子どもが近づいてはいけない場所でした。夏の晩に幼馴染と入り込むと、空の色が変わり、生い茂っていたはずの草が一本もなくなっていた…
島根の山あいの奥垣内では、神社の鳥居の前だけは遊んではいけないと決まっていました。だるまさんがころんだの三回目、振り返ると列のいちばん後ろにいた子が消えている。…
夏の夜、峠を越える車の中で、幼なじみの一人だけが『光る虫がいる』と言い出しました。走る車から笑いながら飛び降り、暗い山へ消えた彼。壊された峠の祠と、『山で名を呼…
子どもの頃、炭焼きだった祖父と山へきのこを採りに入った夏。帰り道は正しいのに同じ景色を繰り返し、谷川の音も消え、いつまでも家に着かない。慌てぬ祖父が一本の煙草に…
仕事帰り、行きつけの深夜の古書店へ向かいエレベーターを六階で降りると、視界一面が真っ白だった。匂いも音も消えた空間、灰色の服の男、トオリヌケという言葉、そして消…
いじめから逃れ、海辺の古い漁村に預けられた、ある夏のことです。磯で出会った優しいお姉さんと毎日遊ぶうち、私の体は少しずつ蝕まれていきました。村の誰ひとり知らない…
目をつぶって三回まわると、私は知らない場所に立っていました。三歳で水族館、五歳で人のいない入り江、中学でひとりきりの四時間目の教室。あの入り江から持ち帰ったジャ…
学生だった夏に住み込んだ、山あいの湯治宿。毎年訪れる老人の腕には、皮を引き毟ったような痕が数えきれぬほどありました。奥山の眠り窪で眠れば病が消えるといいます。た…
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