妖怪カラコロ

4e20e03915e585728b2a22ace8cd9197_l

専門学生の頃に深夜専門でコンビニのアルバイトをしていた時の話。

ある日の午前1時頃に駐車場の掃除をしていると、道路を挟んだ向こう側の方から何か乾いた物を引き摺るような、

「カラカラカラ」

という音が聞こえてきたんだよ。

最初は『こんな時間に酔っ払いが木の枝でも引き摺って歩いてんのかな?』と軽い感じで捉えていたんだが、通り過ぎて行ったと思ったらまた戻って来てという風に、往復を繰り返している事に気付いたんだよ。

しかも移動スピードが徐々に加速していて、明らかに有り得ない速度で移動している。

流石に気持ち悪いなと思ったんだが、勤務時間はその日は午前3時までだったから、駐車場掃除はそこそこにして店内に戻ってバイトを続けていた。

それで、勤務時間も終わって午前3時に店を出たんだけど、その時には音も止んでいたので、気のせいだと思い自転車に乗って帰ることにしたんだ。

でも、少し店を離れた辺りからまた、

「カラカラカラ」

という音が聞こえて来た。俺の後ろから。

びびって少し早目に自転車を漕ぐが、音は明らかに俺に付いて来ている。

俺の家はバイト先の店から10分程しか離れていないから、ここは寧ろ焦って行動した方が危険だと思い、慎重に自転車を漕いで行く。

音は俺から10メートル以上は離れているが、ぴったりと付いて来る。

家の近くの所まで来て、あと角を三つ曲がったらすぐに家に着くという距離まで来た時、一つ目の角を曲がった途端、音は急に俺の真後ろまで接近した。

「カラカラカラ」という音が「ガラガラガラ」と大きく背後で鳴り響いた時は、流石に全身から鳥肌が立った。

緊張はピークにまで達していたけど、もう家まであと少しという所まで迫っていたから、振り返りたい気持ちを必死で堪え、とにかく自転車を漕ぎ続けた。

家の門が見えた時には、すぐさま飛び込んだ。

家まで着いたという安心感か、びびりながら振り向いた先には、拍子抜けだろうが何も居なかった。

その次の朝には家族に深夜にあった事を話して笑われた。

しかし、その日の内に俺は自転車でこけて左ひざの靭帯が切れる怪我を負ってしまった。

幸い切れたのは後十字靭帯で、滅茶苦茶痛かったが歩けたので、家族とその日の内に御祓いに行ったよ。

母からは「妖怪カラコロ」と変な名前を付けられたそれは、家族の間で暫く茶の間を賑わす話題になっていた(俺が怪我したのに)。

それから4年程経った去年の事なんだが、兄(長男)から唐突にこんな話をされた。

「あの当時さ、お前には言えなかった事があるんだけど、実はその音は俺も聞いてるんだよね。

大分昔なんだけど次男(これも兄)にさ、『何か気持ち悪い音が聞こえるから一緒に聞いてくんない?』って言われて、一緒に部屋で外の音を聞いていたら、確かにお前が言っていたような音が聞こえて、二人して気持ち悪いなって話してたんだわ」

「ちょ、言えよ!」

「だって、うちの周りで聞こえてたんだぞ。そんなこと言ったら余計びびらすだけだと思って言えなかった」

随分前からうちを狙ってたみたいです。

ちなみに今でも一年に一回くらいは聞こえます。

関連記事

病院(フリー写真)

毬突きをしている女の子

ある病院での話。 病理実習でレポートを提出する役になった実習生のAは、助手から標本室の鍵をもらう時にこんな話を聞かされました。 「地階の廊下で、おかっぱ頭の女の子がマリつき…

郵便受け

『Y』

ある日、私の一人暮らしのアパートの郵便受けに『Y』という名前が汚く鉛筆で書かれていた。 私の苗字のイニシャルは『Y』ではない。 不思議に思ったが、いちいち私の部屋の3階か…

わかったかな?

多分、幼稚園の頃だと思う。 NHK教育テレビで、人形とおじさんが出てくる番組を見ていた。 おじさんが 「どう?わかったかな?」 と言ったので、TVの前で …

ばりばり

先日酷く怖い夢を見た。 私は学校にいた。中学校だ。もう随分前に卒業した。これが夢だとすぐに気づいたのは、あまりにも校内がしーんと静まり返っていたからだ。 何より今の自分に中…

森(フリー写真)

不思議な子供とおじいさん

20歳の頃だったか、まだ実家でプータローをやっていた時の話。 うちは物凄い田舎で、家のすぐ傍が森や山みたいな所だったのよ。 それで何もやる事がないし、家に居たら親がグチグチ…

死臭

人間って、死が近づくと死臭がするよね。 介護の仕事をしていた時、亡くなるお年寄りは3、4日前から死臭を漂わせてた。 それも、その人の部屋の外まで臭うような、かなりハッキリした臭い…

満月(フリー写真)

姉の夢遊病

大叔母はその昔、夢遊病だったらしい。 もしくは狐憑きなのかも知れないが、取り敢えず夢遊病ということにして話を進める。 目が覚めると何故か川原に立っていたり、山の中にいたりと…

幼稚園児(フリー写真)

死期を悟る子

小学校に上がる前の小さな男の子の話です。 その子が通っていた幼稚園で乗り物をテーマに絵を描くことがあり、子供達はそれぞれ船や飛行機、車などの絵を描きました。 小さな子供の…

無限ループするトンネルと祭り

休日の夕方に友人連れ3人で、温泉宿に向かう山道を車で走っていた。 車の持主が運転、もう一人は後部座席、俺が地図を見ていた。 地図上では一本道で、トンネルを3つ通らないといけ…

黒い物体

黒い物体

半年程前、海外旅行の帰りの飛行機で体験した話。 機内が消灯された後も、俺は時差があるので起きていようと思い、座席に備え付けのディスプレイで映画を観ていた。 ※ 3時間くらい経…