目に見えない存在の加護

地下鉄(フリー写真)

その日はいつも通りに電車に乗って会社へ向かった。

そしていつものようにドアに寄り掛かりながら外の景色を眺めていた。

地下鉄に乗り換える駅(日比谷線の八丁堀駅)が近付いて来て、網棚に上げておいた荷物を取ろうと、体を後ろに捻った瞬間だった。

「ぱしっ!」と顔に何か乾いたものが当たった。何だか判らない。敢えて言うなら布みたいなもの。強風に煽られたジャケットの襟が顔に当たるような、そんな感触だった。

驚いて振り返ったが、他のお客さんはみんな座席に腰を下ろしていて、俺にちょっかいを出せそうな位置には誰も居ない。

顔を押さえる俺を、みんな怪訝そうに見ている。

何が何だか解らなかったけれど、とにかく付けていたハードコンタクトレンズがズレて目の奥に入り込み、痛くて仕方が無かった。

それでいつも乗る地下鉄を一本遅らせることにして、駅のトイレに寄り洗面台でレンズを直した。

鏡に向かってレンズを直していたら、外が急に騒がしくなった。

『何だろう?』と思い、改札を通って駅構内へ入ろうとしたら、ホームから営団の駅員が

「入らないで下さい!すぐに地上に避難して!」

と、こちらに向かって叫んでいる。

びっくりして訳が解らないまま、とにかく指示通りに階段を駆け上がって地上へ出た。

そしたらすぐ目の前の車道に消防車が急停車し、消防隊員が俺と入れ替わりに階段を駆け下りて行った。

地下鉄サリン事件だった。

もしあの時、『何か』が目に当たってコンタクトがズレなかったら、俺の乗った電車はサリンの充満する霞が関駅に滑り込んでいた。

誰が助けてくれたのかは判らない。でもあれ以来、目に見えないものの存在を信じるようになった。

ここから先は蛇足だけれど……。

『死んだ人間』に『生きた人間』が救えるのなら、『生きた人間』が『生きた人間』を救うのは当然だ、とも思ったので、機会を作って色々なボランティアに参加するようにしている。

異世界で過ごした日々

これまで3回ほど異世界に行ったことがあります。 1回目は多分、9歳か10歳の頃。2回目は23歳の頃、3回目は10年前の36歳の頃でした。 あの世界に行くのはいつも決まって、…

田舎の風景(フリー写真)

指切り地蔵様

俺の実家の近所に『指切り地蔵様』と呼ばれている地蔵がある。 指の部分がちょうど指切りできるように変に曲がっているから『指切り地蔵様』。 小さな頃、その地蔵様と指切りをした…

鬼が舞う神社

叔父の話を一つ語らせてもらいます。 幼少の頃の叔父は、手のつけられない程の悪餓鬼だったそうです。 疎開先の田舎でも、畑の作物は盗み食いする、馬に乗ろうとして逃がすなど、子供…

住宅街(フリー写真)

交差した時空

現在でも忘れられない、10年以上前の不思議な体験です。 免許を取得したばかりの頃、母のグリーンのミラパルコを借りて、近所を練習がてら走っていた時の事です。 その日は友達が数…

夜の峠(フリー写真)

標識

9年前の12月23日に、東京から沼津までバイクで出掛けた。 夜の帰り道、1号から熱海方面に適当に下りようとする。 夜中の2時頃に前のブルーバードが曲がった南方向に行く細い…

カナちゃんのメッセージ

ここでの俺は神楽と名乗ることにする。 断っておくが、本名ではない。 今はサラリーマンをしているが、少し前までは神楽斎という名で霊能者をしていたからだ。 雑誌にも2度ほ…

笑い声

僕がまだ子供だったころ、寝るときになるといつもある ”笑い声“ が聞こえていたんだ。 5、6歳のときには、廊下に響き渡る笑い声で、夜中に目を覚ますことも度々あったよ。 母に…

薔薇の花(フリー素材)

祖母の加護

小さい頃から、寂しかったり悲しかったり困ったりすると、何だか良い香りに包まれるような気がしていた。 場所や季節が違っても、大勢の中に居る時も一人きりで居る時もいつも同じ香りだから…

蝋燭(フリー写真)

お地蔵さん

私の地元では年に2回「お地蔵さん」という行事と言うか、お寺のお参りイベントみたいものがあるんです。 あるお寺に行き、あの世で幸せにしていて欲しい亡くなった方の名前を読み上げて、…

ラーメン屋

ある大学生が買い物の帰り、小腹が空いたのでたまたま目についたラーメン屋に入った。 特に期待はしていなかったのだが、これが意外と美味くて彼はご機嫌だった。 帰り際に「おばちゃ…