餓鬼魂

名称未設定-2

もう30年程前になるか、自分が小学生の頃の話。

当時の千葉県は鉄道や主要街道から少し奥に入ると、普通に林が広がっていた。

市内にはそう広くない林が点在し、しかも民家から距離もなかったので、安心して小学生たちは夜でも虫捕りに来ていた。

そんな数ある林の一つに、通称『首吊りの林』と称される所があった。地元の友人によると過去本当に首吊り自殺があったそうだ。

流石に夜に虫捕りくる子供はおらず、カブトムシやクワガタ採取は早朝に行われていた。

私は当時東京に住んでいたのだが、夏になると一般的な小学生の例に洩れず、カブトムシやクワガタを求めて、そういう場所によく出入りしていた。

これは捕まえたカブトムシを検分しながら地元の友人が語った体験談である。

『首吊りの林』はラジオ体操を行なっている広場の近くということもあり、ラジオ体操後は地元の友人(以下B)は虫捕りに行ったと言う。

ポイントを漁るがその日はハズレだった。カナブンくらいしかいなかったとか。

朝飯も食べていなかったのでもう帰ろうと引き返すと、急に脱力感に襲われたのだ。

腹が減ったせいだと思ったが、歩くのも億劫になり、とうとう切り株に座り込んでしまった。

Bが言うには、朦朧として眠いような、暑苦しいような、息苦しいような状態だったらしいのだ。

座り込んでから5~10分くらい経って症状が軽くなると、すぐさま家に帰り飯を食って昼まで寝たという。

自殺者の霊に憑かれたんじゃないかと笑い合っていたが、後日冗談じゃ済まされない知識を仕入れたのである。

これを読んでいる方で水木しげるを知らない人間はいないだろう。彼の著作でほぼ同じ事例が掲載されていた。

『ひだる神』という妖怪がおり、人間が取り憑かれると急に虚脱感に襲われ、場合によってはそのまま死ぬこともあるという。

それを避けるためには、何でもいいから食べれば良いのだと言う(水木しげる氏自身も体験した)。

今から思えば熱中症の初期症状だったんじゃないかとも考えられるが、『首吊りの林』は鬱蒼として太陽光が良い具合に遮られ、下草が少ないくらいだし、Bは体を壊したというような話は聞いたことがない。

本当にBは『ひだる神』に憑かれたのだろうか? 現在でも無事に生きているので、祟りの類ではないと思うのだが…。

追記

題名の餓鬼魂(がきだま)は『ひだる神』は餓鬼の類、という説から取りました。

現在、林は切り開かれ住宅地になっています。

「千葉県」「首吊り自殺のあった林」というキーワードから、特定できる方もいるかも知れません。

もし特定できても、住人の方に「自殺があった」とか「オバケが出る」などと教えないでやって下さい。

四国のホテル

怖くないかもしれないけど、俺が昔体験した話。子供の頃、四国に家族旅行へ行った時、泊まっていたホテルで黒い着物姿の女に手招きされる夢を見た。夢の中で、俺はふらふらと抵抗す…

裏世界

不思議な記憶というか、今でも鮮明に覚えている記憶。小学5年生の夏休み、家の裏手にある大きなグラウンドで、夏休みの自由研究である「身近にいる昆虫リスト」を作っていた。する…

雨の音

その日は雨が強く降っていた。現場に着き、トンネルの手前で車を脇に寄せて一時停車。その手の感覚は鈍いほうだが、不気味な雰囲気は感じた。恐い場所だという先行イメージ…

飢饉があった村(長編)

俺の実家、岩手県のとある地方なんだけどさ、毎年帰省するんだけどね。よく田舎って「本家」みたいなのがあるのは分かるかな?その一族の本家っていうかさ、要は親戚縁者を統括する家みたい…

謎の男のシルエット

成りすまし

大学4年生の11月、Aの就職がようやく決まった。本人は小さな会社だと言っていたが、内定を貰えたことに変わりはないし、晴れて仲間内全員の進路が決まったことで、1月に旅に行く運びと…

10の14乗分の1

人間って、壁をすり抜けたりする事ができるの知ってました?10の14乗分の1くらいの確率で。細胞を形成している素粒子に透過性があるかららしい。たまたまこないだテレビで見て…

田所君

小学生のころ同級生だった田所君(仮名)の話。田所君とは、小学5年から6年の夏休み明けまで同じクラスだった。田所君は、かなり勉強の出来るやつだった。学校の図書館を「根城」…

夜道

白い傘を差した人

ある日、友人と遊んだ後、雨が降っているし時間も遅いからということで友人を家に送った帰りの話。今週の漫画をまだ読んでいないなと思い、コンビニへ行った。店内に客は自分だけ。…

夜の住宅街(フリー素材)

屋根の上の女

今年の夏の体験。私の家は山の上の方にある。夜、喉が渇いたので飲み物を買おうと、500メートルほど坂を下った所にあるコンビニへ行くため自転車に乗った。私の家からコ…

妖狐哀歌(宮大工10)

オオカミ様が代わられてから数年が経った。俺も仕事を覚え数多くの現場をこなし、自分でも辛うじて一人前の仲間入りを果たす事が出来たと実感するようになった。また、兄弟子たちも…