嫌な感じがする場所

公開日: 心霊体験 | 笑える怪談

thinlizzy2LG

これは俺が大学の頃の話なんだが、お前らさ、行っちゃいけない場所って分かる?

誰かに行っちゃいけないって言われた訳でもないんだけど、本能的というか感覚的に行きたくないって思ってしまう場所。

俺はその頃、犬を飼っててさ、よく大学から帰ってきて散歩に連れてったんだ。

で、犬の散歩も面倒になる日があるわけ、犬飼ってる人なら少なからず分かるんじゃないかな、この気持ち。

その日は近道をして、早めに散歩を終わらせようとしたんだよ、普段使わない道使って。

でさ、その道に入ろうとした時なんだけどさ、『嫌』なんだよね。

普段なら俺を引っ張る犬も引っ張らないし、俺も前に進もうと思えない。

道はなんてことない一本道でさ、その一本道が終わるまで左右に取り残されたように木が生えてる道。

分かりやすく言うとアーチみたいになってる。そこだけ何故か開発されていないって言えばいいのかな?

ちなみに場所はT県のS市ね、分かる人は分かる場所、思い当たった人がいるなら多分正解。

周りは開発されてんのに其処だけ取り残された感じの場所。当時は意図的に残したと思ってたんだ。

でも、怖くても何故だかその時は早く帰ろうって気持ちが勝ったんだよね。とっとと帰ろうって。で、嫌がる犬を連れてその道を通った。

まあ、気持ち悪いと感じながらもさっさとその道を通り過ぎて家に帰ったんだ。

その後、異変というか俺の身体に変調が起きた。

左肩が痛いんだ。耐えられる痛みなんだけど、とにかく常時締め付けられているような痛みでさ。

幽霊に取り憑かれて肩が重いなんてありきたりな話かと思ったが、あれ、本当だったんだなってその時思ったね。でもまあ、それ以外は害が無いんだよ。

痛いだけで家族に不幸があるとか、犬が死んだとかそういうのは一切ない。

だったら耐えられる痛みだし、このぐらい別にいいかな。って思ってたんだ。ぶっちゃけホラーは好きだけど、幽霊信じてるかと訊かれても YESと答えられる人間でもないしさ。

単なる体の不調がたまたまそのタイミングで起きただけだろうって、そう思うことにした。

数日が経ったある日の事。相変わらず左肩に違和感がある。けど、それも慣れてきた時のことだ。

大学の講義の後、前から歩いてくる女に悲鳴を上げられたんだよ、「ひっ」って。

まあ、俺の顔は良い方じゃないよ、どっちかというと良くない方だ。

ただ悲鳴を上げられることなんて今までなかった。その女は明らかに俺を見て悲鳴を上げた。

そりゃ違和感あったし多少傷ついたけど、まあ、嫌な奴もいるもんだ、で済まそうとしたんだ。その時はな。

それからだ、大学でその女が俺を見る度に距離を取ったり、あからさまに進行方向を変えたりし始めたのは。自分でも自意識過剰かと思ったよ?

でもさ、毎回毎回、同じ女からそれをやられてみ? 嫌でも記憶に残る。

そんなのが2か月ぐらい続いた頃かな、その女の友達を名乗る奴から呼び出しを受けた。直接な。で、人気のない場所に呼び出された。

呼び出されたのは普段中々人の来ない所で、教授室なんかがある場所? 研究室か? まあ、教授が講義中だと滅多に人が来ないんだよ。

そこにその女と俺を呼び出した女の友達がいた。相変わらず俺を見てビクビクしててさ、だったらなんで呼び出すんだって、思った。

改めて思ったけど、その女、気持ち悪いというか、なんかキャラ作ってるって気がしたんだよ。はっきり言って気味が悪い。

その女の友達に促されて女は俺に言うの、貴方、取り憑かれてますよ、って。

想像してみてくれ。顔を合わす度に妙な態度をとり続けた女が急に呼び出してきて、憑りつかれてますよ。と来た。

普通、こいつどっか可笑しいんじゃね? とか思うだろ? 俺も思ったよ、大学生にもなってこんなのいるんだ、って。

霊感少女? はぁ? 馬鹿じゃないって?

でも、一応聞いたよ。何が憑いてるんだって。したらさ、その女、それは言えない、でもこのままじゃ危険だって、だからメアド教えてくれ、ってふざけたこと言うんだよ。

こちとら、肩痛くなる程度で2か月間それ以外の何の被害も受けてない訳さ、だから最初は断った。

だが、どこから知ったのかその女からメールが来るようになっちゃって。毎晩毎晩。

「大丈夫?」「痛くない?」「助けてあげるから」とそんなのが送られて来る。

メアド変えても、何処で知ったか分からないが、変わらずメールが送られてくる。

それがもう5年、大学卒業して社会人になった今もずっと変わらず送られ続けてくる。

相変わらず左肩は重いけど、そんなのは今は大した苦じゃない。この女をどうにかしてほしい。

関連記事

いざない

その頃、私は海岸近くの住宅工事を請け負ってました。 季節は7月初旬で、昼休みには海岸で弁当を食うのが日課でした。 初めは一人で食べに行ってましたが、途中から仲良くなった同年…

銭湯の鏡

貧乏なアパート暮らしの女です。 風呂が無いので銭湯に行ってる。 いつもの銭湯が休みだったから、ちょっと遠くの銭湯に行った。 浴室には数人のオバちゃんがいて、楽しそうに…

変なタクシー

昨日、ひどく恐ろしい体験をしました。 便宜上昨日と言いましたが、実際は日付が変わって本日の午前1時過ぎのこと。 残業のため終電で帰ってきた私は、家の近くまで走っているバスが…

5ミリ

ある大学生が自宅の自室で勉強していたそうなんです。だけど、なにやら背後に視線を感じる。 どうしても気になりふと振り返ると、背後の側面にある本棚と本棚の隙間から、小学六年くらいの男…

押し入れ(フリー写真)

白く小さな手

中学校の時、先生に聞いた話です。 幼い二人の姉妹が家で留守番をしていました。両親は夜にならないと帰って来ません。 暇を持て余していた姉は、家でかくれんぼをする事を思い付きま…

くる!

ウチの叔母さんはちょっと頭おかしい人でね。 まあ、一言で言うと「時々昔死んだ彼氏が私を呼ぶのよ」って台詞を親族で飯食ってる時とかに平気で言う人でね。 2年くらい前から「離婚…

磨りガラス(フリー素材)

ガラス戸の向こう

この事件が起きるまで、俺は心霊現象肯定派だった。でも今は肯定も否定もしない。 今から十二年前、俺は仕事の都合で部屋を引っ越すことになった。 その部屋は会社が用意したもので、…

半分よこせ

俺がまだ小学生の頃の話。 俺んちは両親が共働きで、鍵っ子というか、夕方までは俺一人だった。 その日もいつもと同じように、居間でコタツに入って寝てたんだよ。母の帰りを待ちなが…

親子のシルエット(フリー素材)

お母さんが居る

俺には年の離れた弟が居て、弟がまだ3歳の時に母親が亡くなった。 それからは父親と自分と弟と祖母の四人で一軒屋に暮らしていたのだけれど、二回忌を迎えた頃に弟が 「家の中にお母…

深夜のコンビニ

この話は、ある男がコンビニで深夜のアルバイトをしていた頃に起きた体験談である。 そのコンビニは、深夜になるとほとんど客が来なくなる。 俺は共にバイトをしていた大学の先輩と、…