金木犀の苗木

公開日: 心霊ちょっと良い話

金木犀(フリー写真)

両親を事故で亡くした俺には、9歳離れた姉貴が居た。

子供の頃、肥満気味で両親が居なくて虐められていた俺を、いつも助けてくれた。

優しくて、強くて、俺の自慢の姉貴だった。

秋になると金木犀の花を部屋に飾った。

「お姉ちゃんが一番好きな花なんだよ」と笑って。

高校にも行かず、朝から夜まで働いて俺を養ってくれた。

そんな姉貴が、死んだ。

事故だった。

結婚が決まって、やっと幸せになれる日を目の前にして、姉貴は逝った。

享年27歳。

俺は兄貴になるはずだった人に後見人を務めてもらい、小さなアパートに部屋を借りて就職をした。

5年経って、俺は職場で出会った彼女と結婚を決めた。

結婚式の前日、姉貴が夢に出て来た。

姉貴は俺に「ごめんなさい」と謝った。「大学まで行かせてあげたかった」と。

俺は「高校を出たら働いて姉貴に楽させてやりたかったよ」と言った。

そしたら姉貴は「私の分まで幸せになりなさいね」と泣きながら笑って言った。

姉貴の結婚式の日、今まで有り難うと言って渡すはずだった金木犀の苗木は、俺の家の庭に植えた。

今年も金木犀の季節がやって来る。

俺はきっとまた、姉貴が居た頃を思い出して泣く。

関連記事

優しさを大切に

俺が小学校1年生ぐらいの時の話。その頃、俺はおとなしくて気の弱い方で、遊ぶのも大体おとなしい気の合う子達とばっかり遊んでいた。でも何がきっかけだか忘れたけど、ある時に番…

犬(フリー写真)

お爺さんとの絆

向かいの家の犬が息を引き取った。ちょうど飼い主だったお爺さんの一周忌の日だった。お爺さんは犬の散歩の途中、曲がり角で倒れ込み、そのまま帰らぬ人となった。脳出血だったら…

赤ちゃんの手(フリー写真)

亡くなったはずの両親

私が12歳の時、両親が他界した。私には三つ年下の弟が居たのだが、それぞれ別々の親戚に引き取られた。一ヶ月も経たないうちに親戚の私に対する態度は冷たくなり、私は高校進学を…

猫の親子(フリー写真)

魔法の絆創膏

俺がまだ幼稚園生だった頃の話。転んで引っ掻き傷を作って泣いていたら、同じクラスのミヤちゃんという女の子に絆創膏を貰ったんだ。金属の箱に入ったもので、5枚くらいあった。 …

神社の思い出

小学生の時、家の近くの神社でよく遊んでた。ある日、いつも通り友達みんなで走り回ったりして遊んでいると、知らない子が混ざってた。混ざってたというか、子供の頃は誰彼かまわず…

飲み屋街(フリー素材)

常連客

学生時代、叔父が経営する小さな小料理屋(居酒屋)で手伝いをしていた。常連客の中に、70代のMさんという真っ白な頭の爺様が居た。ほぼ毎日、開店時間の16時から24時くらい…

おじいさん(フリー写真)

おんぶしてあげるよ

去年、祖父が亡くなりました。僕は祖父にはよく可愛がってもらっていましたが、何の恩返しもできないまま逝ってしまいました。不思議な体験というのは、その祖父の葬儀の時に起こり…

京浜東北線(フリー写真)

杖を持ったおじいさん

2年前の出来事。その日、京浜東北線に乗っていた私は、大声を上げながら周りを威嚇するおっさんに出会した。多分、かなり酒を飲んでいたのであろう。パチンコで負けただ…

空(フリー写真)

石屋のバイト

私は二十歳の頃、石屋でバイトをしていました。ある日、お墓へ工事に行くと、隣の墓地に自分の母親くらいのおばさんが居ました。なぜかその人は、私の働く姿を見守るような目で見て…

白い影

当時、私は精神的に荒んでいて、よく大型バイクをかっ飛ばしたりしていました。その日もバイクで走っていたのですが、広めの幹線道路は渋滞していました。そこで、道の左端をすり抜…