角の頭に歩を打て

公開日: 心霊ちょっと良い話

将棋盤(フリー写真)

先週、親父と将棋を指した。

欲しい本代を賭けての勝負だけに、負けられない一戦だった。

俺は親父から将棋を教わった。

当然親父の方が強い。実力にはかなりの差がある。

この時は、珍しく中盤まであまり差がつかず進んだ。

俺の次の一手が勝敗を分ける。

長考している俺、余裕でお茶を飲む親父。

この時、初めて気が付いた。親父の肩の辺りに見知らぬお爺さんが居る。

俺はお爺さんと目が合う。親父はお爺さんに気が付いていない。

と言うかお爺さん、身体透けてるよ。人間じゃねぇ。霊だ、間違いねぇ。

思わず声を上げそうになったその時、お爺さんが駒台と盤上を交互に指差す。

俺は怖いのも忘れて必死に理解に努める。

角の頭に歩を打て!そういうことか!解ったぜ!

誰だか判らんが、サンキュ。恐怖も忘れてお爺さんに感謝。

その一手が決め手になり、綺麗に寄せて俺の勝ち。久しぶりに勝ったぜ。

対局が終わった後、気になっていることを聞いてみた。

「親父、見知らぬお爺さんに取り憑かれてないかい?」

親父は笑いながら言った。

「俺も親父から将棋を習ったが、一回も勝てなかったな」

俺の祖父は父が若い頃(俺が生まれる数年前)に亡くなった。

兄達とは年の離れた父は、祖父と過ごした時間が少なかったらしい。

そのせいか祖父も親父が心配なようで、時々このようなことがあったそうだ。

まあ、今回は会うことのできなかった孫に力を貸してくれたようだが(笑)。

祖父の写真も見たことがないから、あれが霊かそれとも幻覚か分からない。確認しようとも思わない。

ただ一言、言いたい。霊は必ずしも怖いものではないということを。

関連記事

少年と祖母

今年33歳になるが、もう30年近く前の俺が幼稚園に通っていた頃の話です。昔はお寺さんが幼稚園を経営しているケースが多くて、俺が通ってた所もそうだった。今にして思うと園の横は納骨…

昔の電話機(フリー画像)

申し申し

家は昔、質屋だった。と言ってもじいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。田舎なのもあるけど、じいちゃんが小学生の頃は幽霊はもちろん神様…

結婚式のブーケ(フリー写真)

夢枕

私が幼い頃、母と兄と私の三人で仲良く暮らしていました。しかし兄が14歳になる頃、母が事故死してからは親戚をたらい回しにされ、私はまだ4歳でその時の記憶は殆ど無いのですが、兄はか…

桜の木の神様

今は暑いからご無沙汰しているけど、土日になるとよく近所の公園に行く。住宅地のど真ん中にある、鉄棒とブランコと砂場しかない小さな公園。子供が遊んでいることは滅多にない。と…

夫婦の手(フリー写真)

あの世とこの世

若くして亡くなった夫は、美術的な才能のある人でした。でも息子は小学生の頃から図画の授業は全然ダメ。その点は父親に似なかったんですね。顔も似ていません。性格はよ…

空(フリー写真)

夢枕に立つ祖母

俺にとってばあちゃんは『優しさ』の権化のような人だった。いつもにこにこしていて、言葉を荒げることもなく、本当に穏やかな人で、家族みんなばあちゃんのことが大好きだった。ば…

坂道(フリー写真)

坂道と父

5年ほど前に父を亡くしました。体を壊して働けなくなり、自棄になってアルコールやギャンブルに走って借金を作り、最後は「飲んだら死ぬよ」と医者に言われながらも、飲み…

枝に積もる雪(フリー写真)

おじいさんの足音

母から聞いた話です。結婚前に勤めていた会計事務所で、母は窓に面した机で仕事をしていました。目の前を毎朝、ご近所のおじいさんが通り、お互い挨拶を交わしていました。…

牛(フリー写真)

ミチ

私の母の実家は一度、家が全焼してしまう大火事に遭いました。当時住んでいたのは、寝たきりのおばあちゃんと、母の姉妹6人だけ。皆が寝付いて暫く経った頃、お風呂を沸かすために…

横断歩道(フリー写真)

守護

週末、飲み会で泥酔して帰った時の事。家の前には深夜でも交通量が多く、事故の多い国道があるのだけど…。普段は危ないから絶対に斜め横断なんてしないのに、酔った勢いでつい魔…