深夜の足音

公開日: 心霊体験

団地(フリー写真)

昔、俺が社会人一年目の頃に体験した話。

当時は五階建ての団地に一人暮らしをしていた。

周りはとても静かで、俺はその場所をとても気に入っていた。

しかし一つ問題があった。

深夜3時頃になると、尋常じゃない足音で階段を降りて来る者が居た…。

姿を見た訳ではないが、足音の感覚から恐らくまだ小さな子供のような感じがした。

しかもその足音は俺の居る四階のフロアでピタッと止まるのだ。

その時は恐怖感のようなものは全く無く、ただうるさいなあぐらいの感じだった。

足音もそれ一回で聞こえなくなるし、眠いのもありさほど気にしなかった。

しかし一週間経っても一向にその足音は消えない。決まって深夜3時頃に、

「ダダダダダダッ」

と物凄い足音で階段を降り、四階でピタッと止まる…。

いい加減ストレスも溜まってきた俺は、向かい側の部屋と五階の住民に確認しようとその日の夕方訪ねてみた。

しかし向かい側のサラリーマン風の男性に聞いても面倒臭そうに、そんな足音は聞いたことないと言われた。

おかしいなと思い五階へ上がると、二部屋は空部屋になっていた。

その当時、幽霊など全く信じない俺は性質の悪い悪戯か、または向かいの人が怪しいなと考えていた。

そしてその晩も足音は止まず、それから三日目ほど経つと俺のストレスは爆発し、足音が五階から降りて来た時に

「うるさいっ!!」

と大声で叫んでしまったのだ。

するといつものように足音は俺の部屋の前でピタッと止まった。

流石に不信に思い、玄関ドアの覗き穴から確認してみたが誰も居なかった…。

ただその時、全身に寒気が走り、背筋が凍り付いた感覚は今でもはっきり憶えている。

部屋中の明かりを点け、テレビも点け、その日は眠れなかった。

そして朝になり、仕事に行こうと階段を降りると二階に住む80歳過ぎくらいのお婆ちゃんに会った。

俺は誰かにこの話を聞いてもらいたいと思い、そのお婆ちゃんに全部話をした。

そして、そのお婆ちゃんの話を聞いて俺は絶句した…。

俺がこの団地に来る20年程前、五階に夫婦二人、子供二人の四人家族が父親の手により、無理心中したと言うのだ…。

その時、母親と姉を殺されたところを見たまだ幼い男の子が、逃げ出す途中に階段で足を踏み外し、四階フロアで頭を強く打ち亡くなったらしい。

しかもその時間が深夜3時頃…。

その話を聞いた時は、恐怖感で本当に気を失いそうになった…。

次の日から会社の同僚の部屋に泊めてもらい、すぐそこから引っ越すことにした。

あの四階の向かい側に住んでいる人、大丈夫かなあ…。

関連記事

呪われた土地

俺の親友の話をしたいと思う。 小4の頃にそいつ(以下H)の親が二階建ての大きな家を建てた。 建設業を営むHの父親が建てた立派な外観のその家は、当時団地住まいだった俺にとって…

落ちていた位牌

寺の住職から聞いた話。 近隣の村ですが、その村には立派な空家が一つあり、改装の必要なく住めるほど状態が良いものでした。 近頃は都会の人が田舎暮らしを希望するIターンがはやり…

運転注意

先日、父親が知り合いを近所の病院へ車で送った時の話。 その病院は市の中心部から少し離れたところにあり、ちょっとばかり丘の上にある戦時中からある大きな病院。 入り口まで着き、…

暗い部屋(フリー写真)

姉の霊

それは私がまだ中学生の時でした。 当時美術部だった私は、写生会に行った時に、顧問の若い女の先生と話をしていました。 その頃は霊が見えなかった私は、他人の心霊体験に興味津々で…

駅(フリー写真)

ホームの下の窪み

京王線は現在、全駅禁煙になっていますが、まだ禁煙になっていなかった頃の話です。 当時、府中駅の近くで働いていて、残業やら何やらで終電に乗る事になったんですよ。 喫煙場所でタ…

肝試し

高2の夏休み。霊の存在を否定していた友達が、出ると評判の廃屋に1晩1人で泊まることに。 昼間、下見をしてあまりにも汚いので寝袋を用意。晩飯の後、廃屋の前で別れたのがそいつを見た最…

夜のオフィス

『零』シリーズ裏側の恐怖

ホラーゲーム『零』シリーズの柴田ディレクターは、お祓いを行わないことを信条としていました。 真の恐怖体験を提供するゲームを作るには、お祓いが逆に恐怖感を損なうものと認識していた…

ビーチ(フリー写真)

楽しそうな笑み

奄美のとある海岸でビデオ撮影をした時の話。 俺の家族は、全員が思い出に残るようにと、ビデオカメラをスタンドに固定して撮るんだよ。 その日もそうしたまま、兄弟で海に入り遊んで…

ゼンゾウ

伯父が都内の西側にちょっと広い土地と工場の跡地を持っていたんだ。 不況で損害を被った伯父は、これを売りたがっていたんだよ。 と言っても伯父も金が無くてね。更地には出来なかっ…

子供の寝顔(フリー写真)

した

親父から昔、何度か聞かされた話。 俺が2、3歳の頃、一緒に住んでいた曾祖母が亡くなった。 その頃はまだ、人が死ぬということもよく解っていなかったと思う。 ※ その3日後…