歳を取らない巫女様

夕日(フリー写真)

昔住んでいた村に、十代の巫女さんが居た。

若者の何人かはその人のお世話をしなければならず、俺もその一人だった。

その巫女さんは死者の魂が見えたり、来世が見えたりするらしかった。

俺は一年間だけその巫女さんのお世話に携わってから、親の都合で引っ越した。

大人になってからリストラされ、そのショックで傷心旅行みたいなことをした。

二十年振りに村へ戻り、昔の友達に会いに行った。

そして一週間ほど旅館に滞在し、村の中を色々見て回っていた。

すると村の恒例の行事か何かで、その巫女さんを偶然見かけた。

何か引っ掛かるなと思っていたら、巫女さんは当時の姿のままだった。

友達に「巫女様、二代目になったんだ?」と言ったら、「あれは歳を取らないから」と言っていた。

あと「恐れ多いからそういうことを言うな」と言われた。

何だそれはと思ったが、詳しくは詮索しなかった。

当時はこの先どうやって飯を食って行くかとか、家族の問題などが色々あって大変だった。

だからそのことは忘れて現在に至るのだが、今思い返せばオカルトだな…と気付く。

関連記事

考古学の本質

自分は某都内の大学で古代史を専攻している者です。 専攻は古代史ですが、考古学も学んでいるので発掘調査にも参加しています。 発掘調査なんてものは場合によっては墓荒らしと大差な…

夜の自動販売機(フリー写真)

売り切れの自動販売機

ある夏の深夜、友人と二人でドライブをした。 いつもの海沿いの国道を流していると、新しく出来たバイパスを発見。 それは山道で、新しく建設される造成地へと続くらしかった。 …

鳥居(フリー素材)

カキタ様

俺が田舎に転校していた頃の話。 俺の家庭は当時ごたごたしていてさ。それが理由で学校とか行きづらくなっちゃって。 友達は「気にすんなよ、一緒に遊ぼうぜ」と言ってくれるんだけど…

夜の繁華街

赤い服の男

かつて私が所属していたサークルの公演が終わったある夜、私たちは近くの居酒屋で打ち上げをしていました。 公演の開始時間が遅かったため、打ち上げが終わる頃には時計の針は既に午前一時…

山道(フリー写真)

かなめさま

長くなるがどうか聞いて欲しい。 俺が昔住んでいた場所はド田舎で、町という名前は付いていたものの、山間の村落みたいな所だった。 家の裏手の方に山道があり、そこに「かなめさま」…

もっさん

うちの病院のカテーテル室(重症の心臓病患者の処置をする場所)には、もっさんと呼ばれるものが出る。 もっさんは青い水玉模様のパジャマを着ており、姿はぼさぼさ頭の中年だったり、若い好…

女性のシルエット(フリー素材)

イトウ

高校から現在にかけて、俺の周りをウロチョロする謎の同級生がいる。 高一の時に言われたのが一番最初。夏休み明け直後の日だったのだが、いきなりクラスの奴に 「イトウって知ってる…

渓流(フリー写真)

一人で泳ぐ男の子

去年の梅雨の終わり頃、白石川に渓流釣りに行った時の事。 午前4時くらいに現地に到着し準備を終え、さあ川に入ろうとした時に、川の方から子供の声が聞こえるんです。 薄明るくなり…

神秘的な山道

おまつり

俺の生まれ育った村は、田舎の中でも超田舎。もう随分前に市町村統合でただの一地区に成り下がってしまった。 これは、まだその故郷が○○村だった時の話。俺が小学6年生の夏のことだった。…

山(フリー写真)

山に魅入られる

小学校5年生の頃、私が祖母の家に遊びに行った時の話。 当時は夏休みになると祖母の家に何週間も泊まりに行くのが定例となっていて、地元の子供達とも夏休み限定の友人として結構打ち解けて…