パンダのぬいぐるみ

公開日: ほんのり怖い話 | 怖い話

パンダ

5歳の頃、一番大事にしていたぬいぐるみを捨てられたことがありました。

それはパンダのぬいぐるみで、お腹に電池を入れると足が交互に動いて歩くものです。キャラクターではなくリアルに近い感じのパンダのぬいぐるみでした。

私はそれが大好きで、いつも一緒だったんですけど、薄汚れたからと言って母に捨てられたんです。

透明のビニールに他のゴミと一緒に入れられて捨てられ、収集車に回収されて行くまでを、私はただ泣いて見ていることしかできませんでした。

パンダのぬいぐるみを取り出すこともできたのに、持って帰ると母が怒ると思ったからです。

でもいざパンダが戻って来ないと思うと悲しくて、ずっと後悔していました…。

小学校に上がるまでずっとそのことを忘れなかったのですが、中学、高校まで上がると部活やらで忙しく、もう殆どそのパンダのぬいぐるみのことを忘れていました。

いえ、本当は完全に忘れていたんです。

しかし、2週間前に友達の付き合いで雑貨屋に行ったんです。

姪にあげるプレゼント選びで、私も楽しんで選ぶことにしました。

10分ほど見ていたら友達が「ちょっとこれみて」と言うので行くと、友達はぬいぐるみの棚の前で変な顔をして立っていました。

「なんかあった?」と聞いたら、友達があるぬいぐるみを指差すんです。

それは新品のぬいぐるみの中に置かれているのに、一つだけみすぼらしくて汚いぬいぐるみでした。

お気付きの通り、そのぬいぐるみは5歳の時に捨てられたパンダのぬいぐるみでした。

友達は「なんか場違いなぬいぐるみだよね」と笑っていましたが、私にはちょっと信じられませんでした。

似ているだけかもしれないと思いましたが、電池の蓋が壊れかけているところまで一緒でした。

私は怖くなって友達に全てを話し、それを聞いた友達が急いで店員さんを呼んでくれましたが、

「ちょっと、これは当店のものじゃないですね」

と言われ、あまりに怖くて私だけ先にお店を出ました。

後から出てきた友達が言うには、取り敢えずパンダのぬいぐるみは忘れ物ということでお店が管理しておくと言われたそうです。

ただ、そのパンダのぬいぐるみが先週の木曜日の燃えるゴミの日、あの時捨てられた場所に、またビニールに入れられて捨てられていたんです…。

誰が捨てたのかは判らないですが、見間違いにしてはあまりに一緒で偶然過ぎます。

結局私はまたそのパンダのぬいぐるみを見捨てて、パンダは収集車に運ばれて行きましたが、また今みたいにいつか現れるのではと気がかりです。

捨てられた怨みなのか、私に会いたかったのか、友達はそれをネタに面白おかしく話しますが、私はいつまた現れるかとビクビクしています。

友達には絶対に言えないし、誰に言っても信じてもらえないかもしれませんが、ゴミの日の前日、父が家の玄関に点々とした跡が付いていると言っていました。

四足歩行の跡のようだったので猫かとも思いましたが、それにしては判を押したような円形だったので、もしかしたら…と考えてしまいます。

関連記事

登山(フリー素材)

赤い着物の少女

システムエンジニアをやっていた知人。 デスマーチ状態が続き、残業4、5時間はザラ。睡眠時間は平均2〜4時間。 30歳を過ぎて国立受験生のような生活に、ついに神経性胃炎と過労…

桜の木(フリー素材)

タイムカプセルの手紙

俺の知り合いの超霊感体質の女性(42歳)から聞いた不思議な話。 事の起こりは彼女が中学三年の卒業前まで遡る。 卒業を間近に控えていた彼女のクラスでは、卒業記念にとクラス全員…

白いソアラ

群馬県の国道沿いにある中古車販売店に、白いソアラが数万円という破格の安値で展示されていた。 有名な高級車の一つであるソアラがこの価格で手に入るとなれば、当然誰かが買っていきその車…

石段(フリー写真)

朽ち果てた神社の夢

二十年前から現在まで続く話。 俺は当時大学生で、夏休みに車で田舎の実家に帰省していた。 その時は、普段帰省時に通っている道とは別の道を通って行った。 見渡す限りの山や…

浮世絵のフリー素材

灯籠と火の玉

じいちゃんから聞いた話。 真夏の夕方、お使いの帰り道。お寺の片隅に人だかりが出来ているのを見つけた。 気になったじいちゃんは、人だかりが出来ている場所に行った。 人だ…

夜道

散々な彼女

高校時代の彼女H美の話。 H美の家は、少し長めの道路の中間ぐらいに位置していた。夜になると人影も車もまばらになる薄暗い道路だ。 ある時期から、大して人通りもないその道路で事…

社長室(フリー写真)

社長の話

以前勤めていた会社での事。 その会社は創業社長が一代で大きくした会社で、バブルの頃はかなり羽振りも良かった。 しかし所詮は個人企業。 社長も元々商売の才覚があった人…

カブト虫

夜、友人4人と車で山道走ってたら、1人が急に「虫がいた。停めて。カブト虫探す」 って言って時速30kmで走ってる車から飛び降りて、ゲラゲラ笑いながら山の中に消えていった。 実家に…

おはじき(フリー写真)

狐が迎えに来る

『一夜物語』という携帯ゲームを知っていますか? そのゲームのオープニングで狐の話が出るのです。 あの話を制作者が知っているかどうかは別にして、実は非常によく似た話がありま…

妖怪カラコロ

専門学生の頃に深夜専門でコンビニのアルバイトをしていた時の話。 ある日の午前1時頃に駐車場の掃除をしていると、道路を挟んだ向こう側の方から何か乾いた物を引き摺るような、 「…