道を教えて下さい

夕方の路地

「道を教えて下さい」

夕方の路地でそう話し掛けてきたのは背の高い女だった。

足が異様に細く、バランスが取れないのかぷるぷると震えている。

同じように手も木の枝のように細く、真っ赤なハンドバッグをぶら下げている。

はあはあと何度も溜め息なのか呼吸なのか分からない息を吐き、僕に道を訊いているはずなのに視線は全く違う方向を向いている。

「あ…あの。どちらへ…?」

やばい人っぽい。

僕は早く答えて立ち去ろうと思った。

「春日谷町1-19-X-201」

「………」

そこは僕のアパートの住所だった。

部屋番号までぴったりと合っていた。

「し、知りません」

僕は本気で関わり合いたくないと思い、そう答えた。

すると女はゴキッと腰が折れ曲がるほどにお辞儀をして、またふらふらと路地の奥へと消えて行った。

家(フリー素材)

予兆

会社からの帰宅途中に新しい家があり、その家のベランダを見たら女性が体育座りをしている。 それだけだったら変じゃないけどさ。 よく見たら家族で体育座りをしているんだよね。 …

事件事故

父親が道警勤務で、事件事故は親父の出動の方がニュース速報よりも早い。だから事件事故は「親父の仕事」のイメージが強かったりする。 でも、豊浜トンネルの崩落のときはちょっと違った。 …

山道のベンツ

友達と山にドライブに行った時、深夜でしかも霧がかっていたので、後続車もないしチンタラ走ってたんだ。 俺たちは頂上付近の展望台を目指していた。 すると、かなりのスピードで俺た…

猛スピードで

俺にはちょっと変な趣味があった。 その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出て、そこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。 いつもとは違う静まり返った街を観察す…

文字化けメール

去年の3月の事。俺は高校を卒業し、大学へ通うようになるまでの数週間、暇を持て余してひたすら遊び歩いていた。 そんなある日の夕方、友人(A)から「暇だからドライブ行こうぜ!」という…

叩いている

高校の時、仲の良い友人が「週末、家に泊まらない?」って誘ってきた。 「親もいなしさ、酒でも飲もーぜ」って。 特に用事もなかったけど、俺は断った。 でも、しつこく誘って…

村

閉ざされた集落

もう20年以上前、少年時代の話である。 俺は名は寅、友達は雄二に弘樹と仮名を付けておく。 ※ あれは小学校六年生の夏休み、俺達は近所の公園で毎日のように集まり遊んでいた。 …

ハサミ

ハサミ女

近所に「ハサミ女」と呼ばれる頭のおかしい女がいた。 30歳前後で、髪は長くボサボサ、いつも何かを呟きながら笑っている、この手の人間の雛形的な存在。 呼び名の通り常に裁ちバサ…

江ノ島

海水浴で見た親子

俺は毎年7月下旬の平日に有給休暇を取り、湘南まで一人で海水浴に行っている。 土日は人が多いし彼女や友達と一緒も良いけど、一人の方が心置きなく一日砂浜に寝そべってビールを飲み、日頃…

焼いてくれ

俺が昔、火葬場でバイトしていた時の話。 ある日の朝に斎場(火葬場)の玄関を掃除してたら、黒い SUV車が入ってきて、成金な感じで時計もフランクミューラーなんかしてるおっさんが車か…