マリエ

公開日: 怖い話 | 都市伝説

4588cba0_1260200476217

うちの近所にまことしやかに囁かれている「マリエ」というお話です。

オッチャンは焦っていた。今日も仕事の接待で深夜になってしまった。いつものT字路を曲がるとそこには古びた神社があった。

ほろ酔い加減のオッチャンには見慣れた風景だったが、その日は何かが違っていた。

「ぽーん、ぽーん…」

一定の間隔で音が刻まれている。

不思議に思いながらもオッチャンは歩調を早めたのだが、ふと神社に目をやると浴衣を着た小学生くらいの女の子がボールをついて遊んでいる。

深夜の神社の境内で、少女がたった一人でだ…。

違和感を感じて目をこらすと、まだ昼間の熱気が残っている深夜だというのに、浴衣ではなく古い着物を着ていたのだ。

余り深く関わらない方が良い。オッチャンは薄ら寒いものが背筋を通り抜けるのを感じたのか、そのまま神社の前を通り過ぎた。

「ぽーん、ぽーん…」

音がオッチャンの後ろをついてくる。

酒のせいで上がっていた体温は急速に冷めて行き、今まで掻いていた汗が冷や汗になるのが分かる。

…後ろを振り返ると少女がついてきていた。

うつむいてボール、いや、古風なマリをつきながら。

その少女の足は、前に進んでいるにも関わらず全く動いていなかった。そのまま足を動かさず、マリをついている手だけを動かしながら、オッチャンに近づいて来たのだった。

死に物狂いで走る。走る。走る。

息が続かない身体にムチを打って走る。しかし「その音」は確実に近づいてきている。

「その音」がおっちゃんの近くまで来た時、オッチャンは振り向いてしまったのだ。

「ぽーん、ぽーん…」

すぐ背後に少女がいた。ソレはずっと俯いていたのだが、ゆっくりと顔を上げ、吸い込まれそうな漆黒のまなざしをオッチャンのつま先から膝、腰、胴…。

そのまま視線を上げながら首まできた時。

オッチャンはまだ暗い明け方に道端にぶっ倒れて気絶していたところを発見された。あのまま目が合っていたらどうなっていたのかは誰にも分からない。

後日談

ひとりのバイク乗りが「マリエ」の話を聞いていた。地元の峠でも名の知れた走り屋でした。

CBR600という、とてつもなく速いバイクを操る彼は若過ぎたのだ。

下りの峠をバイクで攻め込むときの恐怖は並大抵のものではない。しかし、それでも速い彼は怖いもの知らずと呼ばれた。

その彼が神社の前に居た。

「ぽーん、ぽーん…」

軽快なエンジン音と共にこの世のものと思えない不思議な音もそこにあった。

3秒もあれば時速120km/hを出すことのできるバイクに乗る彼は「ソレ」がバイクにはついてこれないとタカをくくっていた。

アクセルを開ける。近所の家の窓ガラスが震えるような咆哮が上がる。クラッチを繋げる。古びたアスファルトでタイヤの表面をちぎりながら黒々とマークをつける。

次の瞬間、意識ごと身体を置いて行きそうな強烈な加速で神社の前から疾走する。

ヘルメット越しなのに「その音」は聞こえてきた。「その音」は確実に近づいてきたのだった。

エンジンの調子が悪いわけではない。快調そのものだ。しかし、やがて「その音」がすぐ背後まで迫ってきたのだった。

バックミラーには何も写っていない。バイクに伏せながら彼は後方を振り返ってしまった。

そこには足を全く動かさず髪を振り乱しながら前傾姿勢になって必死にドリブルをしている少女の姿があった。

ところが、とある道祖神の横を通り過ぎたところで少女の速度が落ちた。

少女は俯いたままマリをついていたが、その姿のままゆっくりと夜の闇に溶けて行ったそうな…。

さよなら

中学生の頃、一人の女子が数人の女子から虐められていた。いつも一人で本を読んでいるような子で、髪も前髪を伸ばしっ放しで幽霊女なんて言われていた。でもさ、その子滅茶苦茶可愛…

教室(フリー素材)

消えた同級生

小学2年生の時の話。俺はその日、学校帰りに同じクラスのS君と遊んでいた。そのS君とは特別仲が良い訳ではなかったけど、何回かは彼の家にも遊びに行ったし、俺の家に招いたこと…

死刑執行

A受刑者は、大量殺人を犯し、死刑が確定していた。それから数年。今日は、A受刑者の死刑執行日である。目隠しをしたA受刑者は、絞殺台に立たされる。「ガゴン!…

廃村(長編)

俺が小学5年の頃の話だ。東京で生まれ育った一人っ子の俺は、ほぼ毎年夏休みを利用して1ヶ月程母方の祖父母家へ行っていた。両親共働きの鍵っ子だったので、祖父母家に行くのはた…

逆拍手

1999年当時のニュース柳原尋美さん、緊張性気胸による急性心不全ため死去。車の下敷きに。23日にデビューを控えていた女性3人組新ユニット『カントリー娘。』のメンバー、柳…

人が溺れてる

友達から聞いた話。夏の暑い日の真夜中、仲の良い友達数人で海辺で花火をして遊んでいました。薄暗い砂浜を、花火を向け合ってわーわー言いながら走り回っていると、友達の一人がい…

抽象画

神谷のおばさん

俺が中学生の時、『神谷のおばさん』という有名人がいた。同級生神谷君の母親なので『神谷のおばさん』な訳だが、近所はもちろん同じ中学の奴まで、殆ど神谷のおばさんを知っているほど有名…

新小岩駅(フリー写真)

腕を探す男

少し前の事だが、JR新小岩駅のホームで変な男を見た。サラリーマン風の男が、「僕の腕知りませんかー」「僕の腕知りませんかー」と甲高い大声を上げながら、ホームを行っ…

山の神様と冥界への道

私の父親は山好きです。当然、山関連の友人も多く、私も山へ行く度にそうした方々と話をしました。そして、その友人の中にAさんという方が居ます。私が彼と最後に話をしたのは高校…

イエンガミ

先日亡くなった友人(暗子)が実は生きていて、暗子を助けようとしていた友人(陽子)が行方不明になった…という出来事がありました。心霊系の話ではないし、かなり長くなります。そして最…