終わらない鬼ごっこ

公開日: 怖い話

9cc3c89e

これは俺が小学校6年の時に、同じクラスのSって言う奴との間に起こった出来事です。

コイツはいつも挙動不審で訳の分からない奴だった。事業中はいつも寝ていて給食だけ食べていつも帰っているだけという感じだった。

もちろんクラスでは馬鹿にされていたし俺も馬鹿にしていた。今にして思えば軽い知的障害があったのかもしれない。

小学校の3年か4年の頃も一緒のクラスで、このSも含めて数人で鬼ごっこをやった事がいちどあったチャイムが鳴った後にイスに座ったら終了と言うルールだった。

つまりチャイムが鳴った後に、鬼を残して全員が席についたら鬼が負けという事だ。最初は俺がじゃんけんに負けて鬼になった。Sは一人だけトボトボ歩いていたのですぐにSにタッチした。

Sは鬼になっても走らないでトボトボ歩いていた。チャイムが鳴ってもそれは変わらなかった。

チャイムが鳴るとみんな一斉に教室に向かい自分の席に着いた。S以外は全員自分の席についた。

「あいつ追いかけてこないからつまんねーな」

「あいつなんなんだよ」

などとみんなでSの文句を言っていた。そして間もなくしてSは教室に入って来た。

そしてなぜか泣いている風に見えた。Sはイスに座っている俺にまっすぐ向かってきた。そしてあろうことか俺に殴りかかってきた。どうやらイスから無理やり立たせようとしてきたのだった。

それとほぼ同時に担任が教室に入って来たのでそのまま喧嘩にもならないまま終わってしまった。

Sのやった行動はクラスの奴が全員みていたのでSと遊ぶ奴はもちろん、話す奴もいなくなってしまった。

そしてSの半径5メートル以内に近づかないゲームというのがクラスで流行りだした。これはSと同じクラスの間中ずっと続いた。

…そういえばSが授業中に寝るようになったのもこの頃からだったような気がする。

小学校6年の7月くらいに席替えでSと同じ班になった。これは狭い会議室を一緒に掃除する事を意味していた。

さすがに近づかないゲームは終わっていたが関わりたくなかった。この会議室は先生が見ていない場所なので、誰も真面目に掃除をするものがいないところだった。

俺は手のひらの上にホウキを乗せてバランスをとって遊んでいた。他のやつらも適当にホウキを振り回して時間を潰していた。Sだけが糞真面目に掃除していた。

掃除の終わりを告げるチャイムが鳴った。みんなそれと同時にホウキを掃除箱に放り込んで逃げるように会議室をでていった。

俺はほうきでバランスを取る遊びの途中だったので、バランスを崩して終わったらホウキをしまおうと思っていた。俺はバランスを崩しゲームが終わった時、会議室にSと二人きりということに気づいたので、すぐにほうきをしまって教室から出ようと思った。

そして同時にしまったと思った。Sが掃除箱の前で仁王立ちしているのだった。今思えばホウキをその辺にほっぽり出して教室から出ればよかったのだが。

ホウキが出ていると怒られると思ったので、Sに言った。

「そこ邪魔だからどけよ…」

Sは言った。

「あの時タッチされてない」

そう言うと猛ダッシュでSは俺から逃げていった。

教室に帰ってからもSは追いかけてもいないのに俺から勝手に逃げ回っていた。自分のイスに座るとSはニヤニヤして勝ち誇った顔で俺を見てきた。

あの時の続きをやっているのだろうか? そしてこれは、この日から毎日続いた。最初は呆れていたし相手にしていなかったが、まえに突然殴られたときやり返していなかった事なども
あってか、凄くムカつくようになった。

しかし、タッチでもしようものならこの馬鹿と鬼ごっこをすることになると思ったのでこらえた。

相手にしなければ勝手に止めると思っていたが、Sの行動はエスカレートしていった。トイレに行くのにもイスに座ったまま引きずりながら行くようになったのだ。

そして勝ち誇った顔で俺を見てきた。俺はSがムカついてしょうがなくなっていたそして俺はある事を思いついた。

終業式の日に俺がタッチして逃げれば学校が始まるまであいつはずっと鬼になるのだから、もの凄く悔しがるに違いないと思ったのだ。

もちろんSは俺の住んでいるところを知らないし。教えてくれる友達もいない。あいかわらずSは俺から逃げ回っていたが、タッチされた時の悔しがるさまが想像できて逆に笑えるようになって来た。

そして、とうとう終業式の日がやってきた。俺はSが運動靴に履き替える為に上履きを脱いだ時にタッチして逃げると言う作戦を立てていた。

終業式が終わり帰りの会も終わった。俺はSを相手にしていないふりをしてそそくさと教室を出た。

Sは馬鹿なので学校で使う道具をこまめに持って帰っていなかったので、Sの机だけ荷物が凄いことになっていた。俺は逃げやすいように手ぶらで済むようにしていた。

俺は運動靴を履いて、隠れてSが来るのをワクワクしながら待った。30分くらいして、パンパンのランドセルを背負ったSが、荷物をひきずりながら歩いてきた。

Sが上履きを脱いだ。俺はその瞬間うしろからSの頭を思い切りはたいて、

「タッチー(笑)」

と憎々しい声で言ってその場から全速力で逃げた。

Sは想像以上のもの凄い反応をした。

「ををぉーおー!」

ともの凄い大声で叫んだのだ。

俺は笑いながら走った。必死で悔しがりながら走ってくるSを見てやろうと振り返った。この時はあの大荷物じゃ走って追いかけてきてないかもしれねーつまんねーのなどと思っていた。

しかしSは靴下のまま、荷物もほっぽり出して俺を追いかけてきていた。Sの必死さに俺は大笑いしながら走った。Sは「殺す!」「呪う!」「待て!」をもの凄い声で叫んでいた。

最後の方は喉が変になっているのに無理やり出しているような声だった。俺は家に帰ってからも笑いが止まらなかった。あーせいせいしたと心から思った。

夕方頃、家でテレビを見ていると「をおうー」という人間とはおもえないような声が聞こえた。

Sが殺すといっている声だと直感的に感じ冷や汗がでてきた。あいつ、まだ探してるのかよ…俺…みつかったらどうなるんだよ…と。

その日の夜、家に緊急電話連絡網が、回って来た。

Sが死んだからだ。

トラックに跳ねられたらしい。

後で知った事だが信号を無視して道路に飛び出してきたらしい。そして靴を履いておらず足の裏と喉がズタズタだったそうだ。

そして、Sが事故にあった時間は丁度俺があの声を聞いた時間だった。Sが大荷物で教室から出てくるのが遅いせいか、俺が関っている事は誰にもばれなかったもしかしたら死ぬ直前まで、Sは叫びながら走り続けていたのかもしれない…。

あの不気味な声だけで終わればどんなに幸せだった事か…。

その夜、Sが死んだ日に聞いたあの声が聞こえてきた。今度は追いかけられる番なのかもしれないと思った。

それからというもの、俺は毎日イスに座って過ごしている。イスに座っていれば安全かもしれないと思っているからだ。

今はまるであの時のSのマネをしているような生活をしている。イスに座って寝ている様など、授業中に寝ていたSそのものだ。

今ではSのように他人が突然追いかけてくるように思えて近づくことができない。

また半径5メートル以内に近づけないゲームをやることになるとは、何と言う皮肉だろう。

関連記事

山の神様と冥界への道

私の父親は山好きです。当然、山関連の友人も多く、私も山へ行く度にそうした方々と話をしました。 そして、その友人の中にAさんという方が居ます。 私が彼と最後に話をしたのは高校…

赤い顔

赤い爺さん

友人Yから聞いた話。 今から二年程前、Yの爺さんが亡くなった。 Yは昔から超が付く程の爺さんっ子だったものだから、葬式の時は年甲斐もなく鼻水を垂らしながらわんわん泣いたらし…

田所君

小学生のころ同級生だった田所君(仮名)の話。 田所君とは、小学5年から6年の夏休み明けまで同じクラスだった。田所君は、かなり勉強の出来るやつだった。 学校の図書館を「根城」…

カンカン(長編)

幼い頃に体験した、とても恐ろしい出来事について話します。 その当時私は小学生で、妹、姉、母親と一緒に、どこにでもあるような小さいアパートに住んでいました。 夜になったら、い…

昭和さん

私の地元は田舎で、山の中にある新興住宅街だった。新興と言っても、結局発展し切れなかったような土地だった。 私は山に秘密基地を作り、友達とよく遊びに行ったものだった。 ある日…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

土地にまつわる因縁話

知り合いの霊能力がある人の話。 普通、霊能者と言えば厳かな感じの人が多いというイメージがあるんだが、知り合いの人はそこら辺にいそうな、筋トレ好きな体育会系のおっさんなのよね。 …

階段(フリー写真)

ソマコ

学生の時に体験した話。 授業後にサークル仲間4人とクラブハウスでダベっていたのだが、夏だったせいかいつの間にか怪談話になっていた。 ただどれもこれも有り触れた持ちネタばかり…

子供の手(フリー写真)

帰って来た子供

町の外れに、ある夫婦が住んでいました。 その夫婦にはまだ幼い子供が居ました。 ※ ある日の事です。 外で遊んでいた子供が、泣きながら家に帰って来ました。 母親が心…

祖母のしたこと

私の一番古い記憶は3歳。木枯らしの吹く夕方、一人でブランコを漕いでいるところ。 手も足もかじかんで、とても冷たい。でも今帰れば母に叱られる。祖母に迎えに来て欲しい、ここはいつも来…