かごめかごめ

56c5e61bb5

この話は、実際に友人が遭遇した話で、彼もその場所はついに教えてくれませんでした。

実際に人が2人死に、彼も警察にしつこく尋問されたそうです。

これは私が大学時代にその友人から聞いた話なのですが…。

彼がある日バイト先の友人6人と、中国地方某県某所の吊り橋にドライブに行った時の事です。

その日、彼らは車2台に分乗し出かけたそうです。彼は、後ろの車のドライバーでした。

前の車にはバイト先の店長と、彼らのグループ内で公認の、そして親さえ公認のカップルが。後ろの車には、残りの彼を含む4人が乗り込み、彼はドライバーだったそうです。

朝から出発したにも関わらず、途中で色々寄り道をしたおかげで、目的地の吊り橋に到着したのはもうすっかり日も陰った夕闇時だったそうです。

山の中の深い谷に架かる吊り橋。

吊り橋が近づくと小雨が振り出し、うっすらと霧も出てきたそうです。

吊り橋の手前は広場になっており、晴れていればそこに車を停め、歩いて吊り橋を渡り帰ってくるはずでした(吊り橋の向こうは当時から行き止まりになっており、この吊り橋は観光用に残されたものらしいです)。

ところが、広場まで来ると前の車が急停止したそうです。

「???」

10メートルほど後ろで、2台目の車に乗っていた4人は、なぜ店長が車を停めたのか分からずに暫く固まっていたそうです。

しかし、一向に動かす気配も無いので、彼が様子を見に行こうとドアを開けかけた瞬間、前の車の後席に座っていた友人のカップルが車から飛び出してきたそうです。

彼も驚いて車から降り、

「なんかあったんか?」

と叫んで近づこうとしたその時、2人は手を繋いで、凄い勢いで走り出し、そのまま広場の端のガードレールを飛び越えて谷に身を投げてしまったのです…。

彼らは驚いてガードレールまで駆け寄り、谷底を見ましたが霧で何も見えなかったそうです。

呆然自失していた彼ら4人も我に返り、前の車の店長の様子を見に車まで戻りました。

店長は、運転席でハンドルを手が白くなるまでしっかり握り小声でぶつぶつと

「行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ」

と呟いていたそうです。

とりあえず、彼らは警察に通報しました。

警察がすぐに到着し、すっかり正気をなくした店長は救急車で運ばれたそうです。

その後2人は、当然ですが死体となって発見されました。

彼らは警察にしつこく尋問されましたが、結局、自殺という形になったそうです。

その後、店長の見舞いに行った彼は、店長にあの時何があったのか聞いたそうです。

店長が言うには、あの時、突然車の前に古風な着物を着た女の子が霧の中から現れたそうです。

『危ない!』

と思って急ブレーキを踏んで車を停止させると、まるで時代劇か明治のドラマに出てくるような格好をしたおかっぱ頭の女の子で、なぜか笑っていたそうです。

『こんな所に…?』と思うより先に不気味に思い、逃げるかと思った時、車の周りを同じ様な格好をした子供達に囲まれていることに気づいたそうです。

『うわっヤバイ』

と思った店長はとっさにお経を口の中で唱え始めたそうです。

車を囲んだ子供達はそのまま手を繋ぎ歌いだしました。

「か~ごぉめぇか~ごぉめぇかぁごのなかのとぉりぃはぁ…」

その時、店長の頭の中に子供の声が

「おいでよぉ。おいでよぉ。おいでよぉ」

と響いてきたそうです。

店長は

「行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ行っちゃだめだ」

とハンドルを握り、ひたすらお経を唱えたそうです。

その時、後ろの2人が突然車から降りると子供達と手を繋ぎ、子供達と一緒に走り出したそうです。

ガードレールの向こうへ…。崖に向かって。

「こんな話、警察は信じてくれねーしよお。俺だって、もうあれが本当かどうかなんて自信ねーよ」

と店長は、最後に彼に言ったそうです。

その話を一緒に聞いていた別の友人が、

「またー、よくできた作り話だなあ」

と茶化すと、彼は一言

「本当だよ、あの2人はそれで死んだんだ」

と言いました。

アリス(フリーイラスト)

アリス症候群の恐怖

自分は小さい頃から「不思議の国のアリス症候群」の症状があった。 時々遠近感が曖昧になったり、周りの物が大きくなったり小さくなったりする感覚に陥る。 大抵の場合、じっとしてい…

天保の飢饉

天保の飢饉(1832~1839年)は、連年の凶作の結果、全国にその影響が及ぶほど凄まじいものであった。 しかも、飢饉は7年間の長きに渡って延々と続いたのであった。鶏犬猫鼠の類まで…

砂場(フリー写真)

サヨちゃん

俺は小学校に入るまで広島の田舎の方に住んでいた。 その時に知り合った『サヨちゃん』の話をしよう。 ※ 俺の母方の実家は見渡す限り畑ばかりのド田舎で、幼稚園も保育園も無い。 …

工場(フリー写真)

お婆さんと地蔵堂

茨城県の常磐自動車道の、とあるインターチェンジを降りてすぐの工業団地にあった工場での話。 その工場は夜勤者の交代が夜中の2時で行われていて、2時で交代して帰る途中の派遣社員が、…

禁忌の人喰い儀式

俺の親父の田舎は、60年代初頭まで人喰いの風習があったという土地だ。 とは言っても、生贄だとか飢饉で仕方なくとかそういうものではなく、ある種の供養だったらしい。 鳥葬ならぬ…

ペンタブレット(フリー写真)

アシスタントの現場で

4年程前、某マイナー系の雑誌でそこそこに人気のあった漫画家さんの所へ、3日間という契約でアシスタントをしに行った時の話です。 引っ越したばかりの、狭いながらも新築で清潔そうなマン…

10円おじさん

10年程前に会った10円おじさんの話をします。 当時、高校を卒業したばかりで、仲間とカラオケに行きました。 一両や二両しかない電車の通る無人駅の傍にある小さなカラオケ店です…

トンじい

私の出身地は、古くから部落差別の残る地域でした。 当時、私は小学生でした。部落差別があると言っても、それは大人の世界での話で、幼い私には差別など解りませんでした。 子供同士…

忌箱(長編)

これは高校3年の時の話。 俺の住んでた地方は田舎で、遊び場がなかったんで近所の廃神社が遊び場というか、溜まり場になってたんだよね。 そこへはいつも多い時は7人、少ない時は3…

夜空の月(フリー写真)

砂利を踏む足音

学生の頃、実家を離れて大学の寮に住んでいた。 田舎の学校で、その敷地から歩いて20分程度の場所にある寮だった。 周りは住宅地で、古くからあるお宅と、ベッドタウン化による新興…