冬季分校の柱時計
七十を過ぎて郷土史を学びはじめた私が、市民講座の見学で訪ねた山あいの冬季分校。止まったはずの柱時計が時を刻み、撮った写真の中でだけ机がひとつ増えていた。校舎の中…
気づいたら、そこは知っているようで知らない場所だった。きさらぎ駅、ループする道、消えた駅——異世界体験・パラレルワールドに迷い込んだ実話風の不思議な話を集めました。「異世界に行った話 実話」を探している方はこちら。「時空のおっさん」「きさらぎ駅」といった有名どころから独自の体験談まで、280話あまりを収録しています。
七十を過ぎて郷土史を学びはじめた私が、市民講座の見学で訪ねた山あいの冬季分校。止まったはずの柱時計が時を刻み、撮った写真の中でだけ机がひとつ増えていた。校舎の中…
霧の濃い早朝、一人で防波堤に釣りに出た私が会った時空のおっさんの不思議な体験談です。数分おきの汽笛も海鳥の声も消えた港に、いつもの赤い灯台はなく、見たことのない…
神保町の裏通りで古書店を営む七十代の女性店主のもとに、亡き旧友の遺品が届いた。革表紙のアルバムを開くと、立っているはずの自分の位置に、見知らぬ少女が立っていた。…
夜勤明けに毎朝寄っていたコンビニで、私と全く同じ服装の人が、いつも十分前に同じ缶を二本買って消えていた。異世界に住むもう一人の私と、同じ街で生きていた当時の不思…
県立図書館の閉架書庫で本の差し替えをしていた午後、空気の匂いが急に消えました。天窓の光は灰色から夜の青に変わり、館内から人の気配が消えました。異世界に迷い込んだ…
千葉県湾岸の工業地帯を夜に歩いていた女性が遭遇した、時空のおっさんと十二分の不思議な話。音が消え、信号が固定され、知らない道を歩いていた体験談。…
高知の峠の退避所で、使われていないはずの公衆電話が鳴った。受話器から聞こえた「あと三十分で着くよ」という声のあと、時計はすべて三十分戻り、巻き戻った時間だけが手…
五年前の八月末、山梨の廃集落跡を一人で歩いていた私は、逆向きに立つ鳥居と低い石扉を見つけた。扉の奥から人声のような音が流れ、気づけば三時間四十五分が過ぎていた。…
夜勤明けの雪の朝、自転車で走っていた夜明け前の国道が、目を閉じた数秒のうちに消え、人気のない古い集落に立っていた。荷車を引く男に告げられた「目を閉じて十歩戻れ」…
出張先の無人駅で、膝の高さの保線通用口に這って入った私は、石油ランプの灯る昭和十九年の事務室に出た。老人に告げられた「次は、迷わぬほうがええ」という言葉と、ポケ…
出張帰りに最終新幹線を逃した夜、群馬のローカル駅に「終点」とだけ書かれた深夜バスがやって来た。乗り込んだ私が降りた先は、亡くなったはずの祖母の家だった。縁側でぬ…
杉並区の古いアパートに越した私は、押入れの奥で隠れた引き戸を見つけた。押入れの向こうにあったのは、昭和四十二年九月十四日の夕刊が積まれた商店街。駄菓子屋のおばさ…
仕事帰りに立ち寄った山陰の温泉街。地図アプリが固まったまま迷い込んだ柳の路地の奥に、橘屋という古い旅館の提灯が揺れていた。翌朝目覚めると、私は車の中にいた。…
出張帰りに無人駅で押した駅スタンプには、なぜか四年半先、十二年先、二十年先の日付が刻まれていた。古びた台帳と紺色の作業着の老人が示した、数十年前から続く決まりと…
中古車に残されていたドライブレコーダーを再生してみた。録音されているのは、運転手のいない映像と、助手席だけから聞こえる女の声だった。…
残業帰り、いつものコンビニで買い物をして外に出たら、見知らぬ街になっていた。ドアは開かず、車も人もなく、細部がどこかちがう街を歩いた夜の話。…
閉店後の大型ショッピングモールで清掃パートをしていた私は、ある夜、三階の廊下で見知らぬ店舗と、あるはずのない窓と、白昼の景色を見た。同僚には十五分行方不明だった…
卒業旅行中に山中の霧で道に迷い、夏祭りの集落に迷い込んだ。誰も汗をかかず、全員が同じ笑顔。気がつくと十二日間の記憶が丸ごと消えていた。…
残業帰りの終電でうとうとした私が降りたのは、地図に存在しない駅だった。ホームには私以外に三人。全員が同じ方向を向いて立っていた。…
深夜の配送中、見覚えのない分岐に入った長距離トラック運転手。辿り着いた谷間の集落では時計が止まり、星のない空が広がっていた。県道に戻ると六時間が消えていた。…
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