灯籠と火の玉

浮世絵のフリー素材

じいちゃんから聞いた話。

真夏の夕方、お使いの帰り道。お寺の片隅に人だかりが出来ているのを見つけた。

気になったじいちゃんは、人だかりが出来ている場所に行った。

人だかりが邪魔で何が起こっているのか判らないが、パァーンと乾いた音が何度も聞こえる。

じいちゃんはますます気になり、人だかりを掻き分けて一番前に行った。

そこには横倒しになった灯篭があった。

その灯篭の上に、大きな火の玉がユラユラ揺れている。

火の玉はユラユラ揺れながら、灯篭の先まで来ると一気に急降下した。

火の玉が灯篭の先にぶつかると、パァーンと乾いた音がした。

そして、またユラユラと舞い上がって行く。

大きな火の玉は、何度も同じ調子で灯篭の先にぶつかっていた。

灯篭の先には、既に大きなヒビが出来ている。

和尚さんは困った顔をしたまま立っていた。野次馬も檀家さんもオロオロするばかり。

じいちゃんは隣に居た野次馬のおじさんに尋ねた。

「あの火の玉、どうしたの?」

「うーん、火の玉の考えることなんて解らんよ」

野次馬のおじさんはため息混じりに答えた。

じいちゃんはお使いがあったので、早々にその場を退散した。だからその後、どうなったのかは判らない。

ただ今でも、そのお寺には大きなヒビの入った灯篭が一基、建っている。

関連記事

駅(フリー写真)

不思議な老人と駅

今年の夏に体験した話。 雨がよく降る火曜日のこと。その日は代休で、久々に平日をゆっくり過ごしていた。 妻はパート、子供達は学校。 久しぶりの一人の時間に何をして良いや…

手形

友達の先輩Aとその彼女B、それから先輩の友達Cとその彼女Dは、流れ星を見に行こうということで、とある山へ車を走らせていました。 山へ向こうの最後のガソリンスタンドで給油を済まし、…

見えない恋人

大学生時代、同じゼミにAと言う男がいました。 Aはあまり口数の多い方ではなく、ゼミに出席しても周りとは必要なこと以外はあまり話さず、学内にも特に親しい友人はいない様子でした。 …

抽象画

お還りなさい(宮大工14)

俺が初めてオオカミ様のお社を修繕してから永い時が経過した。 時代も、世情も変わり、年号も変わった。 日本も、日本人も変わったと言われる。 しかし俺を取り巻く世界はそれ…

ホテル

生け贄

この間、親父が物置の整理をしていて、夕方居間にガラクタの山を積み上げて昔を懐かしんでいた。 ガラクタの中には古着やレコードや陶人形などがあった。 ふと一枚の写真が目についた…

晴明神社(フリー素材)

晴明神社

京都にある晴明神社に行った時の事。 安部の晴明は今でこそ有名で、観光客も沢山居るらしいが、十年近く前のその頃は一般的にはあまり知られておらず、神社も全然人気が無かった。 私…

田畑(フリー写真)

尻切れ馬

これは大学生の頃、年末に帰省した時の体験談です。 私の地元はそこそこの田舎で、駅付近こそビルが多く立ち並んでおりますが、少し離れると田畑が多く広がっています。 私の実家も田…

鬼が舞う神社

叔父の話を一つ語らせてもらいます。 幼少の頃の叔父は、手のつけられない程の悪餓鬼だったそうです。 疎開先の田舎でも、畑の作物は盗み食いする、馬に乗ろうとして逃がすなど、子供…

小学校

途切れた記憶

私は小学3年の冬から小学4年の5月までの間、記憶がありません。 何故かそこの期間だけ記憶が飛んでしまっているのです。 校庭でサッカーをして走っていたのが小学3年最後の記憶で…

見覚えのある手

10年前の話だが、俺が尊敬している先輩の話をしようと思う。 当時、クライミングを始めて夢中になっていた俺に、先輩が最初に教えてくれた言葉だ。 「ペアで登頂中にひとりが転落し…