山の神様

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

RIMG0101

俺が体験した不思議な話。

母方の実家は山奥の大きな家なんだが、今その家には祖父母と叔父叔母と従兄弟(40近いおっさん)が住んでいる。

うちからは少し遠いこともあって、なかなか行きづらかった。

しかし数十年ぶりに母と姉と姉の息子(5歳)と一緒に遊びに行くことにした。

祖父母の家に着いて翌日、真っ昼間から甥っこが行方不明になった。

近所の人まで駆り出して捜索したのだが、とうとう日も暮れてきて、いよいよ警察に届けようというところで、玄関に気配を感じて見てみると甥っ子がいる。

隣にはどこかで見たことのあるような、甥っ子より少し大きいくらいの男の子。

みんなに甥っ子が帰って来たことを伝えると、母は大泣き、姉は泣きながら怒っていた(笑)。

そして気付くと男の子はいなくなっていた。

俺はどうしてもあの子を見たことあるような気がして、気になって仕方なかった。

甥っ子に詳しく聞くと、遊んでいるうちに裏の山に入ってしまい、迷子になっていたそうだ。

どうやって帰ってきたのか尋ねると、「おにいちゃんがつれてきてくれた」と。

おにいちゃんの話になると急にテンションの上がった甥っ子曰く、「へびがでたけど、おにいちゃんがやっつけてくれた」らしい。

さらに「おなかがすいたけど、おにいちゃんがちっちゃいいちごをくれた」らしい。

話を聞いていると、うちのじいちゃんと近所のじいさんばあさんが、「そりゃあ山の神様だ」と言い出した。

最初は、「ああ、助けてくれたんなら神様でいいや」みたいな感じで聞いていたんだが、じいさんたち曰く「山には昔から神様がいて、子供を守ってくれたり、山の生き物を守ってくれる」らしい。

子供の頃は一緒に遊んだり出来るが、いつの間にか見えなくなって忘れてしまうんだそうだ。

それで俺は思い出した。

さっき玄関で見た男の子、俺はあの子と子供の頃に遊んだことがある。

小学生の頃、遊びに来たじいちゃんちの裏の山で、一緒に虫を採った子がいた。

そいつは地元の子供らしく、俺よりずっと虫がいる場所も虫の取り方も上手かった。

あの玄関にいた男の子は、あの時一緒に遊んだあの子にそっくりだ。

まさかと思っていると、従兄弟がぼそっと言う。

「○○ちゃん(甥)、そのおにいちゃんはこれくらいの背の高さで、これくらいの髪の長さで、女の子みたいな顔をしているおにいちゃんか?」

その特徴は玄関にいたあの子と完璧に一致した。

甥っ子もぶんぶんと頷いてる。

従兄弟は「あー、山の神さんだったんかー。昔よう一緒に遊んだなあ」と感慨深そうに言った。

俺は当時20代前半で、従兄弟とは一回り以上年が離れていた。

なのに、従兄弟と俺は同じ男の子と遊んでいたことになる。

そして驚くことに、近所の人たちも「あー、その子なら知ってる!」と、かなりの人数が言い出した。

うちのじいさんも見たことがあるらしく、うちの母も遊んだことがあるが、叔父(母の兄)は見たこともないらしい。

甥っ子の話では、「近頃はこの辺に子供がいなくなったから遊び相手がいなくて寂しい」というようなことを、山の神様は言っていたそうだ。

すると従兄弟はいきなり窓を全開にして、

「山の神さん!!子供がいないんなら大人と遊んだらいいが!!俺がいつでも遊んだるが!!」

と叫んだ(笑)。

後で従兄弟に聞いた話では、従兄弟が小学生の時、川で溺れて死ぬところを山の神様に助けてもらったらしい。

今でも俺は、甥っ子と一緒に年に一度は母の実家に行くことにしているが、山の神様は元気に民家にも現れているらしい。

特に従兄弟とは仲が良く、前回遊びに行った時、俺と一緒に飲もうと大事に閉まってあった高い日本酒が封も開けていないのに三分の一減っていたことに対して、従兄弟が本気でキレていた。

「神さんが寂しくないように、子供がたくさんほしいな」

と言う従兄弟は、めでたく40を超えて今も独身です(笑)。

関連記事

襖(フリー写真)

触れてはいけないもの

田舎に泊まった時の話。 私の田舎は米農家で、まあ、田舎独特のと言えば宜しいでしょうか。 とても大きな家で、従兄弟が集まる時は一家族に一部屋割り当てていました。 私が…

運が良いね

今から話すお話は3年前、僕がまだ高校2年生だった時の話です。 その頃、僕はとあるコンビニでバイトをしていました。そのバイト先には同い年の女の子と、50過ぎくらいの店長、あと4人程…

コンビニ

消えたフリーター

学生時代、特に夏の間は時間がたっぷりあることから、色々なアルバイトに挑戦していました。 夏休みのある日、友人から「内装の軽作業」のバイトを勧められました。新しいスーパーが田舎町…

百物語の終わりに

昨日、あるお寺で怪談好きの友人や同僚と、お坊さんを囲んで百物語をやってきました。 百物語というと蝋燭が思いつきますが、少し変わった手法のものもあるようで、その日行ったのは肝試しの…

行軍

爺ちゃんの従軍時代の話

子供の頃に爺ちゃんに聞いた話を一つ。 私の爺ちゃんは若い時、軍属として中国大陸を北へ南へと鉄砲とばらした速射砲を持って動き回ってました。 当時の行軍の話を聞くと、本当に辛か…

笑い袋

もう20年以上前の話です。 当時小学低学年だった私には、よく遊びに行く所がありました。 そこは大学生のお兄さんが住む近所のボロアパートの一室です。 お兄さんは沢山の漫…

尾崎豊さん

私の部屋にはよく夜中に霊が来ます。その時は必ず透けて見えます。 たまに映画のスクリーンのようにその霊にまつわるだろう景色も一緒に見えるのですが、何年か前にある男の人が現れました。…

山

山の神社と巫女の幽霊

これは5年前の話です。当時の私は浮浪者で、東京の中央公園での縄張り争いに敗れ、各地を転々とした後、近畿地方の山中の神社の廃墟に住むようになりました。 麓へ下り、何でも屋として里…

お寺

綺麗な飾りの下

父が友人の家に遊びに行くと言うので、私は一緒に付いて行きました。 私は小学二年生でした。父の友人というのはお寺の住職さんでした。 父達が話している間、退屈になった私は、人…

河童淵(フリー写真)

河童

幼稚園の頃、祖父母の住む田舎に行った時、不思議な生物に会いました。 のんびりとした田舎町で、周りに住んでいる人全員が家族のように仲が良い場所なので、両親も心配せずに私を一人で遊び…