あの世からの最後のメール

古いキーボード

この話は7年前の出来事です。

当時、インターネットはまだ普及しておらず、私はパソコン通信を利用していました。

クローズドの掲示板のような場所で仲良くなった人たちと、オフラインでも会って親しく付き合っていました。

その中の一人が突然亡くなったのです。

最初は悪い冗談だと思いましたが、家族との連絡でその死が本当だと知りました。

彼の死は突然の事故で、葬儀は内輪で行われました。

家族はパニック状態で、私たちには焼香も遠慮してほしいと言われました。

私たちは、いずれ悼む会を開くことにして、それぞれが悲しみを抱えていました。

数日後、亡くなったはずの彼からメールが届きました。

彼は「元気?俺は今、あの世にいるよ。ここも案外いいところだよ」と書いていました。

他の仲間にも同じメールが届いていることがわかり、すぐに理解しました。

これは彼が予め設定した、自動送信サービスによるメールでした。

そして、これは彼が自らの意志で死を選んだことを意味していました。

私はこの事実に悲しみとともに、彼を許せない気持ちになり、次第に仲間から離れていきました。

インターネットを始めてからはパソコン通信をほとんどしなくなりましたが、ID(メールアドレス)は残しておきました。

彼からまたメールが来るのではないかという期待があったからです。

しかし、そんなことはありませんでした。

この出来事の後、私は彼との思い出を整理するため、彼がよく訪れていた場所を訪れました。

そこで、彼が生前書いたと思われる日記のようなメモを見つけました。

そのメモには、彼の心の葛藤や、私たちに向けた未送信のメッセージが記されていました。

彼は最後に私たちに伝えたかった言葉を、メールではなく、このメモに託していたのです。

そのメモを読んで、私は彼に対する怒りや悲しみを乗り越えることができました。

そして、彼が亡くなった後も、彼との繋がりを感じ続けています。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

犬と結婚した男

現在、インドには日本の人口の約10倍となる約12億人が暮らしている。ゆえに、それだけ人がいれば変わり者も多い。 2012年に『犬と結婚した男がインドいる』とネット上で話題になった…

カオル

バイト先の会社の寮で、幽霊騒ぎがあった。 俺は入社して1年も経たないのでよく知らなかったが、以前から気味の悪い事が起こっていたらしい。 寮に入っている社員のTさんの部屋が、…

戦闘機(フリー写真)

白いマフラー

俺のじいちゃんは昔、パイロットだった。 若い頃のじいちゃんの写真は、白のマフラーを巻いて格好つけていて、でも本当に格好良かった。 俺もじいちゃんみたいな戦闘機乗りになりた…

見えない恋人

大学生時代、同じゼミにAと言う男がいました。 Aはあまり口数の多い方ではなく、ゼミに出席しても周りとは必要なこと以外はあまり話さず、学内にも特に親しい友人はいない様子でした。 …

オオカミ様の涙(宮大工6)

ある年の秋。 季節外れの台風により大きな被害が出た。 古くなった寺社は損害も多く、俺たちはてんてこ舞いで仕事に追われた。 その日も、疲れ果てた俺は家に入ると風呂にも入…

ラグビー(フリー写真)

先輩の分まで

大学に入学してすぐにラグビー部に入った。 入部するなり、ある4年生の先輩に 「お前は入学時の俺にそっくりだ」 と言われた。 その先輩は僕と同じポジションだった。…

夜の海(フリー写真)

夜の闇と黒い海面

かなり昔のことになります。 当時、小学低学年だった弟は、父に連れられて夜釣りに行きました。 切り立つような崖の先端近くに父と並んで座り、暗い海面に釣り糸を垂れていた弟は、…

夜のキャンプ

バックミラーの男

私の妹が体験した話を書かせていただきます。 以前、海へキャンプへ行った時のことです。 そこは自然のビーチで、近くには御手洗い等がなく、御手洗いに行きたい時は、少し離れた港…

ITエリート

某県では次世代を背負って立つITエリートを育てようと、IT教育にたいそう力を入れている。それゆえ、この県の公立学校では、IT教育関連の設備投資に限っては、湯水のように予算を使うことがで…

愛猫の最後の挨拶

うちの両親が体験した話。 もう20年も前の夏のことです。 私達兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていた夜、当時とても可愛がっていた猫がいつまで経っても帰ってこな…