車に乗った白い霊

IMG_4780

私が学生の時に、実際に体験した話です。

その当時付き合っていたある女友達は、ちょっと不思議な人でした。

弟さんが亡くなっているんですが、彼女の家に遊びに行くと、どこからかマンドリンの音が聞こてくるのです。

すると、「あー、またあの子が弾いてる」と彼女もお母さんも当たり前のことのように言うのです。

その頃、私は頻繁に奇妙な夢を見ていました。

彼女に似た丸い顔をした男の子が十字架に掛かっているという夢でした。

その話をすると、彼女は「弟は白血病で死んだので、薬の副作用で顔が丸くなっていた。それは私の弟だ」と言って泣くのです。

その内、夜になると私の家でも何かが侵入してくるような気配が感じられるようになり、彼女に御札をもらって部屋の四隅に貼ったりしていました。

でもまだ若かったせいか、そういうことも別段異常なことだとは思わずに日々を過ごしていました。

大学2回生の夏に鳥取まで遊びに行った時、そんなことを言ってはいられない目に遭いました。

みんなで車に乗り、山を越える時には夜になっていました。

山中の夜のドライブというだけで十分恐い気もしていたのですが、山の途中で車がガタガタ音を立て、止まってしまいました。

「え、こんなところで…どうしよう?」

と思ったのも束の間、彼女が運転席で、

「誰かを乗せてしまったみたい…」

と言いました。

「え、うそ?」

と私はパニック状態に陥りました。

私は助手席に乗っていたのですが、恐くて後ろを見ることができません。

「どこか行きたいところがあるみたいだから、送ってあげる」

彼女がそう言った途端、車がまた動きだし、しばらく走った後でまたガタガタと音を立て止まりました。

「ここみたいね…」

「そんな落ち着いた声で恐いこと言わないでちょうだい」

と言う私の言葉も聞かず、彼女は冷静に、

「降りてください…」

とドアを開けて言いました。

私はもう『神様仏様、お願いですから降りてもらってください…』と念じるだけ。

必死の願いが通じたのか、車の後部座席から何か白いものが、飛ぶような速さで前方の一角に消えました。

彼女がライトで照らすと、そこにはお地蔵さんがあったのです。

「ここに来たかったのね…」

と彼女。

私はもう何も言えず、とにかく山を越えて無事目的地に着くことばかりを祈っていました。

鳥取では砂丘を見て海で泳ぎ、平穏に過ごしました。帰りは格別恐いこともなく無事に家に到着。

彼女とはその後、段々疎遠になりました。それ以後、私の夢に彼女の弟が現れることもありませんでした。

関連記事

逆光を浴びた女性(フリー素材)

真っ白な女性

幼稚園ぐらいの頃、両親が出掛けて家に一人になった日があった。 昼寝をしていた俺は親が出掛けていたのを知らず、起きた時に誰も居ないものだから、怖くて泣きながら母を呼んでいた。 …

白い女の話

自分は小中高と、全寮制の学校に通っていた。 凄いど田舎で、そこそこ古い学校。文字通り山の中にある。 狸もよく見かけたし、雉もいた。 裏庭に生徒が何人か集まり、許可を取…

黒田君

僕が彼に出会ったのは、高校1年生の時の事です。 一応政令指定都市ですが、都心ではありません。家から歩いて3分以内に何軒かコンビニはありますが、全部ローソンです。 小洒落た雑…

顔半分の笑顔

僕がまだ子供だったとき、ある晩早くに眠りに就いたことがあった。 リビングルームにいる家族の声を聞きながら、僕はベッドの中から廊下の灯りをボンヤリ見つめていたんだ。 すると突…

廊下

閉ざされた校門の向こう

この話は実際に新聞に掲載されたものです。 ある高校生の男女8人が、一人の家に集まり、怖い話をしていました。夜が更けてくると、肝試しをすることになりました。彼らが通う高校が肝試し…

大事な妹

小4の時の話。 Tちゃんのお姉さんは中学生で、首に腫瘍ができるよく解らない難しい病気で、入退院を繰り返していた。 家に遊びに行くとたまにお姉さんもいて、挨拶くらいはしたこと…

親子の会話

僕の家から会社までは、小さな私鉄の電車で約30分です。 都会では考えられないでしょうが、行きも帰りもほとんど座って通勤しています。 その電車で帰宅途中、無気味な出来事を体験…

地下のまる穴(長編)

これは17年前、高校3年の時の冬の出来事です。 あまりに多くの記憶が失われている中で、この17年間、僅かに残った記憶を頼りに残し続けてきたメモを読みながら書いたので、細かい部分や…

ブランコ

異なる世界から

これは私が小学四年生の頃の話です。当時、私は地名が○○団地という、一戸建てが集まるような地域に住んでいました。その地域は既に高齢化が進んでおり、同級生はほとんどおらず、私は自然と兄と…

田舎の風景(フリー素材)

垣根さん

中学生の頃の話。 当時は夏休みになると父方の祖父母の家に泊まりに行くのが恒例になっていた。 と言っても自分の家から祖父母の家までは自転車で20分もかからないような距離。 …