生贄様

mono005-1920x1080

数十年前、曾爺さんから聞いた大正末期の頃の話。

私の故郷の村には生贄様という風習があった。

生贄様というのは神様に捧げられる神様の事で、家畜の中から選ばれる。

月曜日の夜に産まれた家畜の中で、小さな青色の瞳をした家畜が生贄様。生贄様は人の言葉を喋る。

その殆どはデタラメな言葉だけど、たまに「見先言葉(みさきのことのは)」と呼ばれる予言めいた言葉を喋ったりもするが、生贄様の先見言葉を聞いてしまったら、それは必ず忘れなければ災いが訪れるという言い伝えがある。

生贄様は50年に一度産まれて来る。

そして産まれてから7ヶ月後に生贄として捧げられるのだ。

捧げる方法は、神社の御神体である鏡を床に置き、その上から生贄様を落とす。

鏡に落とすと「ポチャン」という音と共に、生贄様はこの世から跡形も無く消える。

この儀式は、神主と生贄様の産まれた家の者だけで行われる掟で、そこに居る全員が神社の地下にある密室で目隠しをして儀式を行う。

生贄様を落とした鏡は8日間は絶体に見てはならないと言われ、儀式の直後に神主が袋に入れると鍵付きの木箱の中に封印され、更にその木箱は江戸時代の古い大きな金庫の中に厳重に保管される。

尚、過去に好奇心から鏡を覗いたヤンチャな神主が一人居たそうで、彼は禁忌とされた生贄様の言葉を手帳に記録し始めたかと思うと、7ヶ月間ずっと生贄様を質問攻めにし続けたそうで、ヤバイと思って止めようとした氏子さん達の忠告も無視して、かなり険悪な状態になってたらしい。

その儀式の日が来ても案の定鏡を覗いてしまったらしく、鏡を見たその日に奇声を発しながら神社を飛び出して行き、行方不明になってしまったそうだ。

それから家族が葬式の準備を始めた数ヶ月後、どこで調達したのか、何と鎧武者の格好をして村に戻って来た。

そして意味不明な言葉を村人に対して喋り出した。

神社に戻って家中を漁り出したかと思うと、食料庫の中の物全部をその場で食べ始めて、「何かこれは旨いぞ!」という様な顔をして、例の外国語みたいな意味不明な言葉を口走った。

食べ終わるとそのままその場で朝まで眠ってしまったらしい。

目が覚めると神主は元に戻っており、村人や家族が聞いても今まで何をしていたのか覚えていないと言った。

それから数日後に村の近所の古墳が盗掘されていると騒ぎになった。

神主はもしやと思い警察に出頭し事情を話したらしい。

調べてみると、何と鎧兜に刀剣類一式は古墳から持ち出された遺物らしかった。

これを聞いた村の老人達は口々に○○様(この地方の風土記とか伝説に出て来る英雄)が乗り憑ったのだろうと噂したそうだ。

その後、神主さんは神社を追い出されてから、なんと当時の帝大を大検で受験して合格し、結構有名な郷士になったとか…。

集合住宅(フリー素材)

知らない部屋

私が小学校に上がる前の話。 当時、私は同じ外観の小さな棟が幾つも立ち並ぶ集合団地に住んでいました。 ※ ある日、遊び疲れて家に帰ろうと「ただいまー」と言いながら自分の部屋の戸…

学校の校庭(フリー素材)

逆上がりさん

小学生の頃、学校の七不思議が幾つもありました。 それはとっくに七不思議を超えていて、私が知る限り50個はあったのです。 その中に『逆上がりさん』という七不思議があって、当時…

ドア(フリー写真)

隠れたドア

中学生の時、腕を骨折して通院している時期があった。 ある日、病院内でジュースを買おうと、通路の行き止まりにある自販機まで行くと、二つあった自販機の横の壁にドアがあることに気付いた…

タイムスリップ(フリー素材)

時を隔てた憑依

最近ちょっと思い出した話がある。 霊媒体質の人には意識が入れ替わることがあるらしいけど、これは意識がタイムスリップして入れ替わったとしか思えない話。 ※ 数年前、ある人に連れ…

有名な家

もうかれこれ10年前の話。当時、まだ自分は9歳だった。 諸事情で祖母と二人暮らしをしていたが、小学生半ばの頃に母親とも一緒に暮らすことになった。 それまで祖母とは小さな漁師…

年賀状をくれる人

高校生の時から今に至るまで、十年以上年賀状をくれる人がいる。 ありきたりな感じの干支の印刷に、差出人の名前(住所は書いてない)と、手書きで一言「彼氏と仲良くね!」とか「合格おめで…

人形釣った

俺は東京で働いていて家庭を持ってたんだが、2年前からちょっとキツイ病気になって、入退院を繰り返した挙句会社をクビにされた。 これが主な原因なんだが、その他にもあれこれあって女房と…

ねぇ、どこ?

ある夜、ふと気配を感じて目が覚めた。天井近くに、白くぼんやり光るものが浮かんでいた。目を凝らして見てみると、白い顔をした女の頭だけが浮いていた。 驚いて体を起こそうとするが動かな…

高架下(フリー写真)

夢で見た光景

数ヶ月前の出来事で、あまりにも怖かったので親しい友達にしか話していない話。 ある明け方に、同じ夢を二度見たんです。 街で『知り合いかな?』と思う人を見かけて、暇だからと後を…

山(フリー写真)

山の掟

親父から聞いた話。 今から30年程前、親父はまだ自分で炭を焼いていた。 山の中に作った炭窯でクヌギやスギの炭を焼く。 焼きに掛かると足かけ4日にもなる作業の間、釜の側…