不思議なおっさん

癒しの手

自分が小学生の頃、近所で割と有名なおっさんがいた。

いつもぶつぶつ何か呟きながら町を徘徊していた人だった。

両親も含めて、奇妙な人だから近寄らない方が良いと誰もが言っていたので、話し掛けたことはなかった。

当時サッカークラブに通っていたのだが、ある日、思い切り首を打ってしまった。

鎖骨が折れてしまい急遽病院へ。その時、校門からあのおっさんが俺のことを見ていた。

翌日、ギブスで首をガチガチに固定された状態で学校へ。

休み時間に廊下の窓から外を見ると、あのおっさんがいるではないか。

放課後、友人と一緒に家に帰る途中でおっさんは待機していた。

おもむろに俺に近寄ると、首のところにスッと手を当ててくれた。

その間、およそ数分間。おっさんの額は汗でぐっしょり。

さすがに怖くて、おっさんが手を離すと、俺はすぐに家に向かって走った。

家に着いて両親にそのことを話そうとした時、変化に気付いた。

首の違和感が全く無いではないか。

1週間後、経過確認で病院に行ったら医者が驚嘆していた。骨折の跡がまるで無かったらしい。

俺はその話を両親にしたけど、まるで信じない(治ったこと自体は不思議がっていたが)。

俺自身も半信半疑だったが、一応おっさんにお礼を言おうと思ったら行方をくらましていた。

今から思えば、子供には評判が良かったおっさんであった。

元気であって欲しいと思う今日この頃。

愛猫の最後の挨拶

うちの両親が体験した話。 もう20年も前の夏のことです。 私達兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていた夜、当時とても可愛がっていた猫がいつまで経っても帰ってこな…

付喪神

私の家は昔、質屋だった。 と言っても爺ちゃんが17歳の頃までだから、私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞くことができた。 ※ その日の喜一(爺ちゃん)は店番をしてい…

ローカル駅(フリー写真)

無音の電車

学生時代の当時、付き合っていた恋人と駅のホームで喋っていました。 明日から夏休みという時期だったので、19時を過ぎても空が明るかったのを覚えています。 田舎なので一時間に一…

金魚(フリー写真)

二匹の金魚

小学2年生の頃、学校から帰って来たら、飼っていた黒い金魚と赤い金魚が死んでいた。 家の中には誰も居らず、心おきなく号泣していたら、遠方に住んでいる叔父二人が突然うちにやって来た…

黒田君

僕が彼に出会ったのは、高校1年生の時の事です。 一応政令指定都市ですが、都心ではありません。家から歩いて3分以内に何軒かコンビニはありますが、全部ローソンです。 小洒落た雑…

キャンプ(フリー写真)

もし、旅かな?

学生だった頃、週末に一人キャンプに興じていた時期があった。 金曜日から日曜日にかけてどこかの野山に寝泊りする、というだけの面白味も何もないキャンプ。 友達のいない俺は、寂…

桜(フリー写真)

初めまして

うちの母方の婆ちゃんの話。 母方の爺ちゃんと婆ちゃんはアメリカ人で、うちの父は日本人、母はアメリカ人。 出張でアメリカに来ていた父と母は恋に落ちた。 交際は当時、無茶…

戦闘機(フリー写真)

護衛機

爺ちゃんから聞いた話。 俺の爺ちゃんは戦争中、爆撃機で司令官を運ぶパイロットだった。 もちろん護衛に戦闘機を引き連れてだけど。 戦争で戦友が次々死んで行く中で、爺ち…

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…

目(フリー素材)

犯罪者識別能力

高校の時の友達に柔道部の奴がいて、よく繁華街で喧嘩して警察のお世話になっていた。 そいつは身長185センチで体重が100キロという典型的な大男。名前はA。 性格は温厚で意外…