新聞受けから…

67256dd706aa80cce49c65917f91c370

これは俺が2年前の6月14日に体験した本当の話です。俺が前住んでたアパートでの出来事。

その日、俺はバイトで疲れて熟睡していた。

「ガタガタッ」という異様な音で俺が目を覚ましたのは、午前3時半を少し過ぎた頃だった。

『新聞には早すぎるな…?』と俺は思ったが、眠かったので無視してそのまま寝ようとした。

しかし、いつまで経ってもその音は鳴り止まない。

不審に思った俺は、上半身を起こして玄関の方を見た。まだ夜も明け始めていなかったので、部屋の中は真っ暗だった。

まだ暗闇に慣れない目を細めながら、玄関の方をじっと見ると、新聞受けのあたりで何かが動いているのが見えた。

背筋が寒くなるのを感じながら、俺は意を決してベッドから起き上がり、まだ「ガタガタッ」と音をたてている玄関の方に近づいた。

玄関でその光景を見た俺は言葉を失った。

新聞受けからドアノブに青白い手が伸びていて、それがドアノブを執拗に上下させていたのだ。

『えっ!なんでこんなとこから手が出てるの!?』と俺が絶句して立ちすくんでいると、その青白い手はグニャ~っとあり得ない方向に曲がり始め、ドアノブの上の閉めてある鍵まで伸びてきて、その鍵を開けようと手首をグルグルさせ始めた。

恐くなった俺は、立てかけてあったビニール傘の先で、その手を思い切り何度も突き刺した。

リアルな肉の感触が傘を伝わってくるのを感じながら、それでも思いっきりかさを突き刺していると、その手はふっと引っ込んで、それっきり静かになった。

玄関の外には人の気配はなく、覗き穴を見ても人らしき影はない。

『うわー、出たー!』と思いながら、その日は布団を被って震えながら眠りに就いた。

夕方頃に目を覚ました俺が、バイトに行くため恐る恐る玄関に近付くと、玄関に無数に小さな丸い跡が付いていた。

それは昨日、俺が何度も青白い手に突き刺したはずの傘の先の跡だった。

俺は確かに手だけに刺していたはずだった。一度も金属音はしなかったし、そんな感触もなかった(大家さんにはメチャクチャ怒られたけど…。おまけに弁償した)。

だが、おかしなことはそれだけではなかった。外にはくっきりと、玄関の方を向いて立っていたであろう足跡が付いていた。それも泥まみれの!

その日も前の日も雨なんか降っていなかったし、階段には足跡どころか泥さえも付いていなかった。

その出来事から2週間経って、俺は今のアパートに引っ越した。

今でも、あの日のことを夢に見て跳ね起きることがある。

あれは幽霊だったのだろうか? それともストーカー? あの時は本当に洒落にならんぐらい恐かった。

関連記事

満タンのお菓子

私の家は親がギャンブル好きのため、根っからの貧乏でした。 学校の給食費なども毎回遅れてしまい、恥ずかしい思いをしていました。 そんな家庭だったので、親がギャンブルに打ち込ん…

湖(フリー写真)

弘法大師の涙雨

昔テレビで見た話。 今から20年程前、香川県民の水瓶とも言える満濃池が干ばつで干上がった。 満濃池は、かの弘法大師が築いた溜め池で、近隣に幾つもある灌漑用池が干上がる事が…

文房具(フリー写真)

クラス替えアンケート

子供の頃に奇妙な体験をした方は多いと思う。俺にもずっと気になっていることがある。 毎年3月が近くなると『クラス替えアンケート』のことを思い出すのだけど、俺以外にもこれと似たような…

時計

時間を超えた警告

二ヶ月前、私が経験した奇妙な出来事をお話しします。夢だったのか現実だったのかは定かではありませんが、記憶に新しいその日の出来事をご紹介します。 ある日、私は朝10時に目を覚まし…

ストーカー

俺が友達の女の子の家に泊まりに行った時の事。 彼女は前からストーカー被害に遭っていると言っていたんだけど、まあ正直特別可愛い子という訳じゃないし、男からすればストーカーどころか痴…

魂(フリー素材)

守護霊の助け

若い頃、友人のBさんと久々に会い、飲みの席で「本格的な占いをお互いしたことが無い」という話で盛り上がったことがありました。 酔った勢いで帰り道、幾つか閉まっていた占い場の中から適…

不思議な手紙と異常な部屋

去年の暮れ、会社に一通の手紙が届いた。 編集プロダクションに勤めている俺への、名指しの手紙だった。 中を読むと自分のエッセイを読んで添削して欲しい事、そして執筆指導をして欲…

ざわつき声の正体

高校を卒業し、進学して一人暮らしを始めたばかりの頃の話。 ある夜、部屋でゲームをしていると、下の方から大勢の人がざわざわと騒ぐような声が聞こえてきた。 俺は『下の階の人のと…

山を穢した代償

以前に住んでいたマンションの大家さんは、御主人が亡くなったのを機に田舎の土地を処分し、都会にマンションを建て息子夫婦と同居した。 老女は何かと話し掛けてくれ、俺も機会があれば田舎…

生き霊

母の会社の同僚の話。仮に村上さんとします。 村上さんはいつからか、肩こりのようなものに悩まされていた。それまでは、そういった事に悩むような事は全く無かったそうです。 若い時…